習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『弓』

2007-04-07 23:35:17 | 映画
 キム・ギドクの『弓』をようやく見た。去年公開された時に劇場に行きたかったが、大阪ではテアトル梅田で1週間しかしなかった。2週目はモーニング・ショーのみ。それだけで消えていった。大阪でキム・ギドクはかなり冷遇されている。

 ますます異様な世界に落ち込んでいくキム・ギドク。今回は日本デビュー作の『魚と寝る女』の時を思わせる設定の中で、『うつせみ』以上にファンタスティックで、象徴的な物語を見せてくれる。主人公はまた言葉を発しない。まだ若い少女なのに男を誘うように微笑んでいる。釣り船にやって来た男たちが、彼女にちょっかいを出すのは仕方ないのではないか、とすら思わされる。老人は7歳の時から10年間、この船の上で少女を育てている。棄てられていたこの子を拾って来て養ってきたようだが、本当は攫って来たのかもしれない。

 映画は、老人と少女だけの世界が描かれる。時々老人が船に釣り客を連れてくるが、それだけである。釣り客に請われて、弓占いもする。少女にブランコをさせて、彼女の後ろの、船に描かれた仏画に向けて弓を引く。失敗したら少女に当たる。だが、少女はそんなことまるで気にしないでブランコを漕ぐ。

 今回も驚きは終盤の展開にある。若者が彼女を救いに来る。老人は少女と結婚するつもりで今まで準備をしてきた。少女は若者と出て行くのか、と思わせて意外な行動に出る。

 老人が海に飛び込むところからの急展開には唖然とさせられる。どこまでやるのか!と思いながらスクリーン(今回はTVだけど)から目が離せない。『サマリア』の時も後半父親との話にスライドしていくところから、信じられない展開をみせたし、『うつせみ』の警察に捕まってからも凄かった。どんな頭の構造をしてるんだろう、と思うくらいに話が読めない。

 ファンタジーだが、あまりに突飛で、予想外の展開に毎度毎度驚くしかない。『悪い男』を最後にここ最近は口当たりがよくなってきたが、それでも毒が満載である。

 この少女が純粋だなんていえない。老人はエロエロだが、とてもピュアで少年のようだ。少女を助けようとする若者は、ただの木偶の坊に見える。主人公3人が3人とも規格外だったりする。どこまで異常に走ってくれるのか、キム・ギドク。次回作はすぐ大阪でも公開される。今度は初日に劇場に行く。待ってろ『絶対の愛』。

 

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