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映画・演劇のレビュー

『靴職人と魔法のミシン』

2015-08-06 07:47:46 | 映画
これはこの夏の初めに見た映画だ。で、ここに感想を書いていない。そんな映画は多々ある。時間がなかったことが原因なのだが、それだけではなく、書く気が起きない作品も多かった。そんな中で、このとてもチャーミングな映画をスルーしていた事に今頃、気付く。ささやかすぎて、書くことすら忘れていたのだ。きっともうすぐDVDになるはずだから、その前に少し感想を!

これは「そんなバカな!」という、とてもバカバカしい法螺話(まぁちょっとした寓話ですね)なのだ。だが、魔法の街ニューヨークのかたすみでなら、こういう靴屋が存在するかも、なんて。

その日、アダム・サンドラー演じる靴屋は、困ったことになる。たまたまいつものミシンが壊れてしまい、仕事が出来ない。仕方なく、地下室にあった父の残して行った古ぼけたそのミシンで修理した。すると、不思議なことが起こる。彼が修理した預かった他人(お客さん)の靴を履くと、なんとその靴の持ち主になってしまうのだ。

他人になって街を歩く。ただそれだけなのだが、なんだかドキドキするし、心弾む。仕事が終わった後の、夜の一時、ほんの一瞬だけど、見知らぬ人になる快感。見知らぬ他人となって、街を浮遊するささやかな時間。

映画はことさらここからドラマチックな展開を用意したりはしない。この基本設定だけでいいのだ。後は特別なんかいらない。そんな映画だ。だから、ちょっとさりげなさ過ぎて、ものたりないかも、しれないけど、この映画はこういう小さなお話でいい。だいたいこの映画自体が、6月中頃から7月の頭にかけてひっそりと公開されていたけど、きっと誰も知らない。そんな映画なのだから。

だが、これはあの『扉をたたく人』を監督したトム・マッカーシー監督がハリウッド・スターであるアダム・サンドラーを主演に迎えた作品でなのである。僕がこれを見た理由もそこに尽きる、彼がこういう一応メジャー映画に挑むことになった経緯は知らないけど、彼はスターの出るこのメジャー映画を楽しんでいる。当然の話だが、気負いはない。サンドラーの一人芝居に近い。そこに最初は、あの怪優スティーブ・ブシェーミが、さらには終盤でゲストとしてなんとダスティン・ホフマンが登場するのだ。(しかも、ネタばれのなるのを承知で書くが、彼らはふたりはふたりで一役!)

いろんな映画がある。その中には予定調和がいいという映画もある。思った通りに展開することの快感だ。そこに、ほんのちょっとした驚きをスパイスとして添加。これはそんなささやかなハートウォーミング。なんだか少し幸せな気分になる。疲れている時には、ちょうどいい。ほっとさせられる清涼剤のような作品だ。

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