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映画・演劇のレビュー

『ハンソロ スターウォーズ・ストーリー』

2018-07-01 13:15:39 | 映画

ロン・ハワードが監督を引き受けたという時点でこの映画への期待はマックスまで高まる。『アメリカングラフィティ』のジョージ・ルーカスとロン・ハワードのコンビは素敵だった。73年という時代が僕にとって映画との本格的な出会いの日々であったことも大きい。そして、彼らは夢をかなえる。俳優としてキャリアをスタートさせたロンは『バニシング・イン・ターボ』で監督として活躍し、もちろんルーカスは夢をかなえて『スターウォーズ』を世に問う。1977年のお話だ。(あの時、僕たちはまだ見ぬ映画に熱狂し、翌年の夏の日本公開を1年間も待つ。)

あれから40年が経つ。スターウォーズはルーカスの手を離れて、ディズニー映画になってしまったけど、それでもロンが初心に戻ってシリーズに参加し、全く新しいスターウォーズをここに実現した意義は大きい。ローレンス・カスダンが脚本に参加したのもうれしい。ここでいう「全く新しい」は実はとてもクラシックな映画への回帰を意味する。

エピソード4につながるハンソロの若き日を描くこの映画は、まず何よりも古めかしい冒険映画なのだ。ルーカスが目指した『レイダース』につながるストーリーなのである。アナクロで、手に汗握る冒険活劇の世界。アクションも特撮(と敢えて言おう!)も最近の映画のようなスピードばかりに気を取られて観客を置いてきぼりにするような野暮な映画ではない。ちゃんとお話を追いかけて、そこにきちんとしたスペクタクルシーンを盛り込む。観客を煙に巻くのではなく、観客を夢の世界に連れて行ってくれる映画だ。こういう映画を待っていた。40年前の夢をもう一度よみがえらせる。手作りのスペクタクル大作。

まだ僕たちの知っているハンソロになる以前の少年の面影を残す彼が、3年間の辛酸を通してこの時に臨み、ついにミレニアム・ファルコン号と出会う。そこであの「スターウォーズ」のテーマ曲が高らかに鳴り響く。もちろん、その直前にはチューバッカとの出会いが用意されてあるのもそうだ。観客を驚かせるではなく、観客を安心させ、ハラハラドキドキさせる。それこそ娯楽映画の鉄則ではないか。

この映画の素晴らしさはその予定調和にある。クラシックのよさをふんだんに盛り込みながら、最新技術を駆使して描くところにこの映画のよさがある。最近の娯楽活劇映画がどんどんつまらなくなるのは、技術ばかりが突出し、お話の魅力が削がれるというアンバランスにある。何が大切なのか、もう一度ちゃんと考えてほしいものだ。


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