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映画・演劇のレビュー

劇団未来『斜交  昭和40年のクロスロード』

2018-07-01 13:57:34 | 演劇

2時間の大作である。未来は稽古場でもあるワークスタジオでの公演では上演時間を100分までにするという暗黙の了解があった。劇場の狭さから観客に窮屈な思いをさせないためという配慮のようだ。なのに、今回は敢えてその禁を冒す。オリジナルが2時間半に及ぶ作品だったということもあるのだろうが、それだけではなかろう。

そういう事情を知らないまま、見たので、2時間は台本通りの上演ゆえの長さなのかと思った。終演後、演出のしまさんから2時間半ということを聞いて、驚いた。30分も削ってもこの長さなのか。この芝居のランニングタイムは100分が理想ではないか、と思った。単調な話で繰り返しが多くて、ダレてしまう。容疑者と取り調べに当たる2人の刑事。その3人の10日間を描く。真実が明るみになるまでの戦いが描かれる。回想で容疑者の恋人との話、容疑者の母親と刑事のシーンや上司とのやり取りが挿入されるのだが、基本は密室劇。緊張感をどこまで持続することができるかがポイントとなる。

吉展ちゃん誘拐事件を描くのだが、事件の全貌ではなく、容疑者と刑事との駆け引きのみに焦点を絞る。3度目のこれが最後となる取り調べなのだが、犯人を落とせない。この芝居が描こうとしたものは何なのか。よくわからない。昭和40年という時代背景を通して、この凶悪な事件を通して、日本のまだ貧しかった時代を通して、この犯人を擁護するわけではないけど、彼の置かれた状況を描くのなら、わからないでもないけど、そういうことでもなさそうなのだ。犯人と刑事の駆け引きを描くサスペンスなのか、と言われるとそうとは言い切れない。この緊張感のなさはどうだ。

あえてこういう淡々としたタッチを選んだようなのだが、その意図が見えてこないから、イライラさせられる。丁寧に作られた作品で、まじめで素敵な芝居だ、ということはできる。だが、これだけでは「何か」もの足りない。50万円という身代金の額。そこに込められたもの。そのお金で借金を返すといういじましさ。あまりのささやかさ。作者が当時、戦後最大の誘拐犯罪といわれた事件に何を感じ、どう受け止めるか、そこが見えてこないから、なんだかもどかしい。


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