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映画・演劇のレビュー

寺地はるな『みちづれはいても、ひとり』

2018-01-18 20:27:48 | その他

 

40を目前にして、離婚する。40を過ぎて、1人で生きる。人生が80年なら40はターニングポイントだ。女がそこで何を思い、何を考えるのか。ちょっと気になるお話ではないか。もちろんそれは興味本位なんかではなく、女に限らず、誰もが感じることがそこに提示されるから気になるのだ。自分も60を目前にして、なんか落ち着かない日々を過ごしているから、こう小説がとても気になる。『マダムメドラー』の70歳が興味深いのも同じ理由からだろう。

 

旅と孤独がテーマだ。2人の女が南の島に旅に出る。でも、大袈裟な話ではない。夫が、昔暮らしていた場所に行く。そこで失踪している彼の目撃情報が入ったからだ。夫を探すのはちゃんと離婚してもらうためだ。彼がケジメをつけないからだ。彼女の気持ちはもう定まっている。なんだか、強いなぁ、と思う。誰かに頼るのではなく、ちゃんと自分を見つめること。主人公のふたりの女は、友情から旅をするのではない。たまたま、旅をするのだ。そんなアバウトさがいい。なんか、大袈裟な目的とかはいらない。偶然で十分。でも、そこで出会えたことは偶然なんかじゃない。ちゃんと、自分と向き合い、これからの人生を生きよう、と思う。だが、それはケジメではない。ひとつの区切りでしなない。

 

旅は楽しい。この小説の旅はつまらないけど、そのつまらなさの先に、彼女たちの今がある。小説を読みながら、前半の日常描写が圧倒的に面白くて、「オレ、なんだか凄い小説を読んでるよ」と喜んでいたのに、後半、旅のシーンになって小説はまるで減速する。だが、それが結果的にはよかった気がする。おもしろいのはなんでもない日常生活にある。もちろん、そんなことをこの小説がいいたいわけではないのだけど。別々の意味でありのままに生きているふたりの女の描写を交互に描きながら、彼女たちが、これから先の人生に向かっていく助走がここには描かれる。だから、まだ何も始まっていない。そのことが愛おしい。

 

それにしても、60前男子の映画や小説はないのか? 仕方ないから僕が自分で作ろうか? まぁ、嘘だけど。(だって、僕にはそんな気力はないし、なんだか、そんな映画や小説は気持ち悪い)

 

 


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