ボン・ジュノによるプロデュース作品で(脚本も手掛ける)、彼の傑作である『殺人の記憶』において脚本を書いたシム・ソンボの監督デビュー作品だ。期待は高まる。「『殺人の記憶』のスタッフが手掛ける」という常套句である宣伝文句に乗せられ、いやがうえにもどんどん期待値は上がる。それだけのがっかり度も高い。これではダメだ。
いったいどんな話なのか、予備知識もなく見たのだが、お話のターニングポイントとなる船長(『チェイサー』のキム・ユンソク)の狂気がこれでは伝わらない。原作は舞台劇で、その映画化らしいが、ここには映画らしいダイナミズムが感じられない。狭い船の構造を生かした空間処理が出来てないから、お話に緊張感が生まれない。
中国からの密航者の搬送という仕事を請け負い、それが成功するかどうかのサスペンスが前半の要だが、彼らがガス漏れにより死んでしまってからとんでもないことへと進展していく過程に説得力がない。狂気の船長と何とかして唯一生き残った中国人女性を助けようとする青年(パク・ユチョン)との対決の図式が必要なのだが、全体のお話に足を取られて、ふたりのタイマン勝負にならない。そのくせお話自体があまりに安易すぎて、ドキドキもさせない。
不況にあえぐ漁村の実情を丁寧に描くことで、追い詰められていく船長の状況がリアルに見せれるはずだった。6人の船乗りたちを抱え、生き残るため廃船になる運命の船を買い取ろうとする。そこで下される決断と、それに乗せられる船員たち。だが、正気から狂気へ。こんなはずじゃなかった事態へ。運命共同体であるはずだった彼らが壊れていくドラマこそが、ここに見たかったことのはずだったのだ。
なのに、これでは海洋サスペンスとしても、事件ものとしても中途半端すぎる。これでは『殺人の追憶』には遠く及ばない。中途半端なエンタメ志向は作品の方向性を見失わせた。明らかに失敗している。
いったいどんな話なのか、予備知識もなく見たのだが、お話のターニングポイントとなる船長(『チェイサー』のキム・ユンソク)の狂気がこれでは伝わらない。原作は舞台劇で、その映画化らしいが、ここには映画らしいダイナミズムが感じられない。狭い船の構造を生かした空間処理が出来てないから、お話に緊張感が生まれない。
中国からの密航者の搬送という仕事を請け負い、それが成功するかどうかのサスペンスが前半の要だが、彼らがガス漏れにより死んでしまってからとんでもないことへと進展していく過程に説得力がない。狂気の船長と何とかして唯一生き残った中国人女性を助けようとする青年(パク・ユチョン)との対決の図式が必要なのだが、全体のお話に足を取られて、ふたりのタイマン勝負にならない。そのくせお話自体があまりに安易すぎて、ドキドキもさせない。
不況にあえぐ漁村の実情を丁寧に描くことで、追い詰められていく船長の状況がリアルに見せれるはずだった。6人の船乗りたちを抱え、生き残るため廃船になる運命の船を買い取ろうとする。そこで下される決断と、それに乗せられる船員たち。だが、正気から狂気へ。こんなはずじゃなかった事態へ。運命共同体であるはずだった彼らが壊れていくドラマこそが、ここに見たかったことのはずだったのだ。
なのに、これでは海洋サスペンスとしても、事件ものとしても中途半端すぎる。これでは『殺人の追憶』には遠く及ばない。中途半端なエンタメ志向は作品の方向性を見失わせた。明らかに失敗している。