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映画・演劇のレビュー

『罪の余白』

2015-10-15 19:47:40 | 映画

「映画史上最も危険な対決」というコピー通りに映画を作って欲しかった。期待させた分がっかりは大きい。心理学者が悪魔のような女子高生に弄ばれる、という図式は面白い。だが、あまりに内野聖陽がバカすぎて、途中からついていけなくなる。女子高生である吉本実憂も、あまり賢そうには描かれてない。それなら、それでいいのだ。そういう映画として作ればいい。だが、そうはならないからまずい。だいたいそれならこの映画に「心理を研究する者VS心理を操る者」なんていうコピーを使うのはダメです。

最愛の娘を亡くしたからといってアル中になるほど、飲むのはどうだか、と思う。現実でならありかもしれないけど、映画の中でそれをすると、途端に嘘くさくなる。しかも、彼の演技が大仰すぎた。警察が協力しないのは、構わないが、大学の先生ならもっと頭を使って冷静に現状を理解し、判断して欲しい。とてもじゃないが、これでは心理学者として失格。

内野VS吉本の対決だと思っていたのに、2人はあまりバトルしない。もっと激しい頭脳戦が展開するのかと期待した(あのコピーのせいだ!)のだが、2人とも何も(天才悪魔女子高生の魔性の魅力は?)しないまま、映画は終わってしまい、ちょっとないわぁ、と思う。

細部に全く説得力もなく、緊張感がないから、だんだん飽きてくる。あんなに簡単に不審者を学校は自由に入れない。それに一人暮らしの男に家にあんなに警戒なく、女子高生は入りません。もうそういうところを疎かにされたら、その他がどれだけよく出来ていても、映画に入り込めなくなる。

だが、最初はかなり、ドキドキしたのだ。教室で何が起こっているのか。あの高校のロケーションもすばらしい。目の前に海がある地方の女子高。(しかも、ミッションスクール)その開かれた空間で展開する陰湿な閉鎖されたスクールカースト。テンポよく、教室のベランダから転落して死ぬシーンまでが描かれるのもいい。わかっているのに、あっと、驚く。そして、吉本が内野の家にやってくるシーンまで。実にうまい序盤戦。期待は高まる。だが、そこから急激に失速する。内野の愚かな行為が映画を台無しにする。

最後の対決シーンも、あれはない。きゃしゃな少女が簡単に大男をベランダから突き落とすなんて、しかも、死なないし。(まぁ、あれで、死んだらあまりに情けないけど)

谷村美月の内野の心を寄せる同僚も、ちょっとバカすぎ。バランスが悪すぎて、失敗したのだ。ちゃんと細部を詰めたなら、かなり面白い映画になったはずなのに、がっかりした。


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