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初めて読む作家で、これまでも同じようなグルメ小説を書いているみたいだ。だから手馴れたタッチで安心して読める。タイトルが長いが、実はまだもう少しサブタイトルが続く。『お弁当は鮭のおにぎらず』と。だからこれはお弁当の話でもある。
本来ならサイドストーリーのはずである恋愛や人間関係に逃げる(そんな小説は多い)ことなく、仕事1本で話を展開していくのがいい。水産缶詰の会社に入って商品開発業務に携わることになった青年が、同じ部署の先輩たちと一緒に新商品開発に勤しむ姿を描く。「美味しい」をテーマにしながらも、食べる側の人生ドラマに重点を置くグルメ小説とは一線を画す。あくまでもお仕事小説に比重を持っていき、大学を卒業したばかりの彼が働くことを通して、大人になっていく姿を見せてくれる。
最後にはほんの少し恋愛要素も滲ませるけど、あくまでもそれは隠し味の域を出ないのがこの小説らしくていい。軽く読めて優しいのが身上だ。