習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『エンジェル・ウォーズ』

2011-12-01 21:35:10 | 映画
なんともノーテンキなアクション映画ではないか、と思いながら劇場で何度となく、予告編を見せられた。おバカな女の子ムービーだと思ったので、さすがに映画館で見る気はしなかったが、『300』のザック・スナイダー監督作品である。それだけではないかも、と思い、レンタルしてきた。

CG使いまくりの『300』や『ウイッチメン』でのやり方を踏襲して、今回もやりたい放題。ただし、ただのノーテンキ映画ではなかった。というか、これ、かなりダークな映画だ。というか、彼の映画はいつもダークで今回も例外ではなかった、というだけの話なのだろう。ただセクシーなコスチュームで女の子たちが巨大な敵と戦うだけのSFファンタジーだと思い見ると手痛い目に合う。ザック・スナイダーは相変わらず何をやっても暗い。

 母親を亡くした主人公は、彼女の遺産を独り占めしようとする継父のため、精神病院に送られる。この冒頭のシーンが凄い。なんかここまで嘘くさい設定でガンガンやられると往年の大映テレビみたいで、ちょっと笑える。でも、この暗さは筋金入りで、笑うのはすぐにお終い。だって、笑えない。しつこいし。

 彼女は過酷な現実をみつめないため、現実は見ない。妄想の世界に引き籠もる。そのなかで、仲間とともに(精神病院に収容されている女たちなのだが、別に彼女たちと親しいわけではない。ただキャラクターを頂いただけだ。)巨大な敵と戦うのだが、派手なアクションでお話が楽しめそうになる度に、何度となく、嫌な現実にひき戻されるという展開をさせる。娯楽映画として素直に楽しませてくれないのだ。やがて主人公は、ロボトミー手術を受けさせられることになる。うぇっ。暗すぎる。しかも、カタルシス・ゼロです。

 映画全体はけっこう複雑な構成になっている。妄想がご丁寧にも2重構造になっていて、精神病院自体をベースにした少しリアルな妄想と、突き抜けたSF世界の妄想のダブルスタンダード。どちらの話も状況は現実と同じように困難を極める。主人公は逃げ場のない現実の中で、心を閉ざして、この妄想にふける。だが、どこにも出口はない。救いようのないラストも含め、あまりにパッケージングとの間に落差がありすぎて、見に来たお客さんは戸惑ったのではないか。とことん変な映画だった。


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