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映画・演劇のレビュー

『孔子の教え』

2011-12-01 22:19:26 | 映画
 ようやく日本公開されたこの中国映画の超大作は、一昨年のお正月映画で本国では大ヒットした『十月囲城』と並んで、公開されたのだが、興行的にはどうだったのだろうか。僕が台湾で『十月囲城』見たときには宣伝はしていたけど、まだ封切られてはいなかった。(と、思う。確か。)

 孔子を主人公にした大作映画なんてものに中国人は食指をそそられたのか。よくわからない。今の中国人にとって孔子ってどんなポジションなのだろうか。そのへんもよくわからない。まぁ、これがヒーローもの、だなんて思いもしないけど、今の中国がこの題材を娯楽映画としてどう描こうとしたのか。すごく興味があった。しかも地味な芸術映画ではなく、大作映画だし。あのチョウ・ユンファを主役に迎えて、魯の国の国政に従事した孔子が、やがて追放され、諸国を放浪する姿を描くスペクタクル大作、なんてものなのである。なんだかイメージしづらい映画だ。


 実際に見た映画も、なんだか歯切れが悪い映画だった。伝記ものでもないし、(一応はそうなのだが)、戦争スペクタクルなんてはずはない。魯と斉の国の争いをいかにして孔子が収めるのか、という部分はスケールの大きいアクション映画になるのだが、それがメインではない。特に後半諸国を巡る部分なんか、映画的ではない。さらには思想家である孔子を描く部分は映画にならない。この映画のどこがセールスポイントなのか、判然としない。だから商売に成りにくい。

 今、中国で孔子が再評価されつつあり、その時勢に乗っかった企画だったのかも、しれないが、これはやはり映画にはしづらいものだ。今の時代になぜ孔子が必要なのか、その答えはこの映画にはない。偉人伝なんか誰も見たいとは思わないはずだ。孔子を題材にした時点でそのへんの戦略がなくてはこれを扱う意味がない。見終えてとてもがっかりした。

 『孔子』というタイトルが、日本公開タイトルでは『孔子の教え』なんていうスケールの小さなものにした理由は、この映画のそんな中途半端さ故であろう。ミニシアターで2週間程度ひっそりと公開される映画に《スペクタクル超大作『孔子』》なんていうタイトルはふさわしくないと踏んだのか。どちらにしても、作る方も売る方も、こういう弱気な映画ではダメだとしか言いようがない。ものすごく期待していただけにこれでは悔しい。


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