『チルドレン』から12年振りの続編。あの家裁調査官陣内と部下の武藤が帰ってくる。陣内のいいかげんな対応は健在。自己中で、適当。みんなに迷惑ばかりかけている。実に困った男だ。だが、みんな彼を憎めないやつ、と思っている。彼のペースに巻込まれて嬉々としている。
ふつうなら、こういう人物は胡散臭いし、関わり合いたくない、と思うはず。確かにみんなもそうも思っている。表面では。だが、みんなは知っている。彼がどれだけ、子供たちのことを思って行動しているのか。本人は認めないだろうけど、それは厳然たる事実だ。
彼のこういうスタンスは好きだな。少し僕と似ている。ウソばっかりついているようで、実はそうじゃない。まぁ、ときどき誤解もされるけど、仕方ない。面倒くさいのは嫌だけど、ついつい、頼まれたら考えなしになんでも引き受けてしまうし、してしまう。バカだなぁ、と思うけど、すぐ、いいよ、と言う。そのくせ自分からは何もしない。面倒だからだ。
今回の事件は、無免許運転の少年がジョギング中の中年男性に突っ込み殺してしまう、という事件。犯人は、10年前の同じような事件(小学生が死んだ)の被害者の友人(彼が死んでいたかもしれない)だった19歳の少年。なぜ、そんなことをしたのか、とかいうミステリ仕立てだけど、もちろんそこに主眼はない。
いつものように複雑に絡み合うたくさんの人たちのドラマがひとつに収斂されていく。伊坂さんらしいお話で、安心して読める。障害者に向けられた悪意と言う意味でも、とてもタイムリーな作品になった。