『るろうに剣心』の大友啓史監督作品。2時間半に及ぶ大作。しかも、始まったところからもう事件の核心に迫る。少しの余裕もない。息せき切るようにお話が展開する。怒濤のドラマ。圧倒的な情報量。待ったなし。あれよ、あれよと言う間にどんどん話が進展する。取り残されないようにしなくてはならないから、スクリーンに集中するしかない。だが、なかなかお話が読めない。どうなるかも予想がつかない。なんだ、なんだ、と思わせる。ドキドキの展開。
死刑囚が、処刑された後の彼の脳を覗いて見たなら、彼が見たものがわかる。彼が妻子を殺したのではなく、行方不明になっている彼の娘が、彼女の母と妹を殺している姿が映っていた。これは人間の脳内に残る記憶を映像化することで、犯罪捜査を行う「第九」と呼ばれる警察の新組織のお話。
犯人はその娘で、彼女はどんどん殺していく。だが、彼女を止められない。単純なお話のはずなのだが、それを敢えてわかりにくい作品に作る。だんだんイライラが募る。最初はとても面白い、と思いつつ、必死に見ていたのだが、徐々にバカバカしくなる。そうなると、この手の映画は終わり。観客をうまくだまして、作品世界に取り込まなくてはならないのに、はったりが効きすぎて、そのうち免疫が出来る。それを無謀な展開で煙に巻こうとして、反対に観客の関心を失わせることになる。バカバカしいお話にリアルティを与えるための装置がストーリーの妙と、特殊な設定に説得力を与えるビジュアルなのだが、その過激さが後半になると、バランスを崩す。
ハリウッド映画のような、ド派手なアクションはいらない。もっと知的な映画にならなくては、ダメ。なのに、終盤完全に力尽きる。お話が混乱してきて、ちゃんと終息していかない。因果関係も含めて思わせぶりばかりで、その尻拭いはなされないまま、終わる。
映画は実に頑張っているのだが、膨らみ過ぎたイメージを終息できないまま、終わるのが、まずい。だいたい何が秘密なのか、それすらわからない。思わせぶりもここまでいくと、付き合いきれなくなる。あんなに期待させといて、これではがっかり。