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映画・演劇のレビュー

Project +『ALL WHAT YOU LOVE』

2008-08-11 07:35:18 | 演劇
 2幕2時間30分からなるミュージカル大作だ。こういうものは普段滅多に見ることはないが、見終えてとても満足している。これだけ本格的に作り上げられた舞台を見せてもらうと、納得がいくからだ。

 妥協せずに自分たちのやりたい事を全力でやり遂げて行くという姿勢にも感動した。そんな当たり前のことがなかなか出来ないのも現実なのだ。さまざまな諸条件の中で、気が付いたら最初思っていたものとはまるで別のものが生まれていて、でももうそれをどうしようも出来ない。そんなことはよくある。

 この集団は、この芝居に1年以上の時間をかけた。自分たちの持てる力のすべてを出し切って、作品に挑んだ。それが舞台から伝わってくる。凄いことだ。中途半端なミュージカルもどきの学芸会を見せられたなら、きっと途中で席を立っていたであろう。僕だってそんなに暇ではない。やるならとことんやってくれなくては人を感動させることなんて出来ない。

 この1本のステージ(1回こっきりの公演である)を作り上げるためにつぎ込まれた膨大な時間と情熱。それがしっかり伝わってくる。細部まできちんと作りこまれ計算がなされている。手抜きは一切ない。それはダンスシーンも当然そうだし、役者たちはミスすることなく完璧を目指している。甘えを許さない姿勢はプロと同じだ。そのうえでルーティンワークには陥らない。この1回限りの公演に賭ける強い思いがひしひしと伝わってくる。そこがこの舞台にとって一番大事なところだ。

 ここまで書いたことはなにもこの芝居に限らない。すべての芝居に対して言えることだろう。だが、そんな基本を忘れた芝居が多いのも事実なのだ。

 内容は、今時ハリウッドですら、もう何10年もやらないような超クラッシックなミュージカルである。オーソドックスを何よりも大事にして、古きよき日のミュージカルプレイの王道を行く。細部まできちんと定石を踏まえている。あきれるくらいにパターンで、それはそれで見事としか言いようがない。『マイフェアレディー』を下敷きにしたドラマ作りの上手さ。しかもそれをちゃっかりダブルでしてしまうしたたかさにも笑える。ラストシーンの切り上げ方もとても鮮やかだ。とてもゴージャスだけど、無駄がない。感心した。

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