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映画・演劇のレビュー

青木淳悟『このあいだ東京でね』

2009-05-01 18:15:15 | その他
 こういう小説を読んでいると、確かに面白いのだが、なんだか虚しくなる。単純に楽しめない。大体そんな単純なものでもないし。それにしてもこれだけの情報量を封じ込めるって大変な作業だろう。だが、それによって得られるものってなんだ?お話が好きな人にはこれは耐えられない作品だろう。ニンゲンなんか描く気はさらさらない。一切描いてないし。

 短編は楽しめる。発想のおもしろさを感じたら、終わるから。だが長編は退屈だ。いくらなんでも長すぎる。タイトルの『このあいだ東京でね』を読みながらなんとかしてよ、と思った。カメラの目となって東京を散歩していく。≪マンションの募集広告、江戸時代の旧町名、交通法規と道路標識、猫の生態、そして大手検索サイトの「ストリートビュー」機能まで。今最も注目される新鋭が、恐るべき手さばきで組み立てていく、誰でも知っている、でも誰も見たことのない、ぼくらの街の新しい見取り図≫こんなふうに本の帯には書かれてある。不動産を買うために東京の街を物色する主人公の見たもの、感じたことがなんだか顔の見えない一人称によって語られる。

 これは普通の小説ではない。ここには個人的な感情の動きとか物語は一切ない。目に見えるものをまるでカメラのように克明に写し取るだけなのだ。最初はおもしろかったが、だんだん退屈してきて、どうでもいいじゃないか、と思う。僕は辛抱が足りないのか。

 発想の面白さだけでしかない。他の7編については短編なんで楽しめる。こういう発想でも小説は書けるのだ、という発見だけでも意味がある。だが、長いものは僕には無理だ。

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