こういうタイプの小説を豊島ミホが書く。それって彼女にとって挑戦だったろう。それは今まで自分の目線から子供の時間を等身大に描く姿勢を崩さなかった彼女が、今初めて性的な題材に挑戦したからということだけではない。人間の暗部にスポットを当ててセックスを核に据えてドラマを作るという枷を自分に課したことで生じた今までとは違う痛みの記憶、それが彼女の新しい局面を作る。
特別なことはセックスを描くということだけだ。だが、それだけでこんなにも作品世界が広がる。今まで見えなかったものがここには描かれる。それくらいのことなんて、普通の人にはささいな変化である。だが、彼女の場合は違う。興味本位ではなく、今まで触れないできた問題に手を染めることで、歪だったものが健全な方向性を見せる。ただ、あまりにそこだけをクローズアップしたのは、中途半端な接し方を彼女が望まなかったからだろう。
うまく言葉には出来ない感情を掬い取る。『十七歳スイッチ』の誰にでもやらせる女の子の心の空洞は最後まで見えないままだ。彼は彼女の部屋で初体験する。それは興奮する出来事ではない。大人になる、だなんて陳腐なことではまさかない。冷静に彼女に触れる。初めて彼女と接した。今まで見てきた彼女とは違う。だが、それってなんだ?よくわからない。そんなわからないものに触れる瞬間がここに描かれる。
その後続く6編も同じようなわからなさが描かれる。セックスをしたからといって何かが変わるわけではない。それは肉感的なものではなく、精神的なものだ。体を重ねたからといってわかることはない。そんなものは幻想でしかない。だが、弱い人間はそんな幻想に囚われる。抗いきれない何かを、そこに見る。子供から大人に変わるのは一体いつなのか。セックスがその境目にあるわけではないことは事実だ。だが、それよって何かが変わることもある。これはセックスの記憶を通して、その微妙な境目に迫る力作である。
特別なことはセックスを描くということだけだ。だが、それだけでこんなにも作品世界が広がる。今まで見えなかったものがここには描かれる。それくらいのことなんて、普通の人にはささいな変化である。だが、彼女の場合は違う。興味本位ではなく、今まで触れないできた問題に手を染めることで、歪だったものが健全な方向性を見せる。ただ、あまりにそこだけをクローズアップしたのは、中途半端な接し方を彼女が望まなかったからだろう。
うまく言葉には出来ない感情を掬い取る。『十七歳スイッチ』の誰にでもやらせる女の子の心の空洞は最後まで見えないままだ。彼は彼女の部屋で初体験する。それは興奮する出来事ではない。大人になる、だなんて陳腐なことではまさかない。冷静に彼女に触れる。初めて彼女と接した。今まで見てきた彼女とは違う。だが、それってなんだ?よくわからない。そんなわからないものに触れる瞬間がここに描かれる。
その後続く6編も同じようなわからなさが描かれる。セックスをしたからといって何かが変わるわけではない。それは肉感的なものではなく、精神的なものだ。体を重ねたからといってわかることはない。そんなものは幻想でしかない。だが、弱い人間はそんな幻想に囚われる。抗いきれない何かを、そこに見る。子供から大人に変わるのは一体いつなのか。セックスがその境目にあるわけではないことは事実だ。だが、それよって何かが変わることもある。これはセックスの記憶を通して、その微妙な境目に迫る力作である。