習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『卑劣な街』

2008-03-08 09:42:16 | 映画
 『マルチュク青春通り』のユ・ハ監督最新作。極道残酷物語とでも呼ぶべき内容で、とても暗い。上映時間はこんなにも単純な内容なのに2時間20分を超える。その中で、忍耐、失敗、友情、裏切り等々、いくつもの要素をドラマの中に織り込んでいきながら見せていく大作である。  思い起こせば『マルチュク青春通り』も暗い映画だった。青春映画としてよく出来ていたが、クォン・サンウ主演の軽くてノスタルジックな甘い映画を . . . 本文を読む
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テラヤマ博『星の王子さま』再見

2008-03-07 12:38:19 | 演劇
 初日から12日を経て、6ステージ目での上演を再見した。この日はアイホールでの公演(『hunter』)を終了させた平林之英さんも舞台に参加しての上演になっていた。ラストシ-ンで、主人公(蔵元真見)が歌う場面に平林さんも登場する。  もう一度見てよかったなと思う。あの学芸会的上演だった初日とは比べものにならないくらいに作品はよくなっていた。この12日間で、役者たちは自分たちの芝居に自信を深めてきた . . . 本文を読む
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テラヤマ博『レミング』再見

2008-03-07 12:12:23 | 演劇
 初見の時よりも、当然のことだが、冷静に作品全体を見ることが出来た。ダンス・シーンがかなり多いと思ったのだが、そうでもなかった。要するにそのシーンに圧倒的な迫力があり、他のシーンの印象を凌駕していた、ということなのだ。  栃村さんの母親の場面と、遠坂さんの女優の場面のバランスに対する印象はあまり変わらない。ただ、人形を使ったパフォーマンスがすばらしく、結果的にあの母親の存在感がそれだけ高まること . . . 本文を読む
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『インディアン・サマー』『手紙』

2008-03-07 11:47:51 | 映画
 07韓流セレクションの再映でパク・シニャン特集として2本を見た。あまり期待してなかったが、実は思ったよりもよく出来ていてほっとした。わざわざ時間をかけて最低の映画を見るのは嫌だし。  「あまり期待してない」とは言ったが、本当は「もしかしたら隠れた傑作、掘り出し物はないか」なんて思ってる。この手の韓国映画は、強引なつくり方をしていて、腰が引けてしまうものも多いが、『8月のクリスマス』や『春の日は . . . 本文を読む
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神原組プロデュース『墓ない男の物語』

2008-03-07 11:00:20 | 演劇
 淀川さんぽさんの原作、台本を_レンチの中山治雄さん主演により16年振りにリメイクされた神原作品。初演は野外劇として、太陽族の南勝さんが演じた男を中山さんは持ち前のぶっきらぼうで、さらりと流し、あっさりした芝居にして見せる。  神原さんのいつもながらの熱い芝居を中山さんの冷めた演技が中和することにより、思った以上にバランスのとれた作品に仕上がっていたのがうれしい。  1947年、シベリアに抑留 . . . 本文を読む
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AI・HALL+小原延之共同制作『hunter』

2008-03-06 23:29:15 | 演劇
 前半がかなり厳しい。いつまでたっても芝居の全貌が見えてこない。今、ここで何が起こっているのかは、わかる。しかし、それが彼らにとってどういうことなのか、この芝居が描こうとするものは何か、それが見えないままどんどん芝居は進んでいく。というか、芝居は先に進むことなく、停滞していくように見える。  後藤七重演じる姉(アン)が、車の上に乗って傘を猟銃に見立てて構えるところ、上から四方八方に散っていった人 . . . 本文を読む
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オセロット企画『殺人事件のような私の気持ちをあなたに』

2008-03-06 22:26:48 | 演劇
 前半はとても面白い。日常の描写を描きながらも、2人の間に生じている齟齬が、ドキドキするよなタッチで描かれていく。学生結婚をして、そのままそのとき住んでいた下宿で、生活を始めた。そんな部屋で今も暮らしている。25歳になり、自分たちの生活を見つめなおそうとする。そんな平凡な2人の物語だ。  仕事を終えて帰ってきた夫と妻の静かな時間。夫は2人の思い出が詰まったアルバムを見る。妻は彼のために夜食用のお . . . 本文を読む
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『三年身籠る』

2008-03-06 21:19:16 | 映画
 とても抑えたタッチで、のほほんとこの異常な事態を描いていく。全体は、8ヶ月、16ヶ月、27ヶ月という3つの時間から構成されている。コメディーではなく、一応シリアスで、このとんでもない出来事の顛末を見せる。  いつまでたっても生まれてこない子供を待ち続ける母(中島知子)と父(西島秀俊)の心の成長を描くのが眼目のようだ。過剰なリアクションで笑わせるなんて事はしない。人間関係の微妙さでなら、少し笑わ . . . 本文を読む
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『ガチ★ボーイ』

2008-03-04 00:06:06 | 映画
 『タイヨウのうた』でデビューした小泉徳宏監督の第2作。一応タッチはコメディー調の装いをしているが、前作に続いて今回も難病ものに挑戦している。記憶障害の青年が、学生プロレスを通して、仲間とともに、生きていくことの意味を見出していく姿を描く。  かなり危険なスタンスを取りつつも、泣かせにも過剰なコミカルにもならない微妙なバランスを保ち続ける。ラストの試合の場面はわざとやり過ぎて、バランスを崩すのだ . . . 本文を読む
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『KIDS』

2008-03-03 23:53:55 | 映画
 これは架空の街のおとぎ話であって欲しい。「木更津」なんていう特定の地名を出したら駄目だ。その瞬間から、この映画に失望する。だいたい木更津に住んでいる人たちが怒るのではないか。「この街は世界の吹き溜まりのような場所」だとか、「負け犬が住む町」だとか、そんなことを平気で言ってる映画である。地域住民の感情を逆なでするのではないか、なんて心配してしまう。まぁ、そんなことよりも、まずこの映画自体の設定上、 . . . 本文を読む
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『ミスターロンリー』

2008-03-03 23:23:47 | 映画
 ハーモニー・コリンが7年間の沈黙を破って放つ第3作。19歳でのシナリオデビュー『キッズ』の後、『ガンモ』で監督デビューして、2作目の『ジュリアン』を撮った後、ずっと音沙汰がなかった。  そのうち忘れてしまっていたのだが、彼が新作を撮った以上見なくてはならない。続々新しい映画、新しい監督が生まれてくる映画界で、一風変わった作品を作ったとしても、それが続くわけではない。彼のスタイルは刺激的だったが . . . 本文を読む
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10X10X10『トリトメのない笑顔』

2008-03-03 20:21:18 | 演劇
 等身大の女の子の日常をスケッチしようとした十時直子さんの新作。2時間の長い作品になってしまったのは、作者の意気込みとして受け止めるしかないが、内容と尺が合わない。あと20分短くしたなら、スリムで気持ちのいい作品になったのに、残念だ。作者のねらいはよくわかるが、空回りしては元も子もない。安易な舞台美術や、人間関係の書き込みの浅さとか、結構欠陥はたくさんあるけど、十時さんが、自分にしか作れないドラマ . . . 本文を読む
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テラヤマ博(末満健一)『花札伝綺』

2008-03-02 12:12:57 | 演劇
 昨夜、やっとこの作品を見てきた。これでようやく3本とも見たことになる。今回も企画制作の佐藤さんの思い通りの作品が3本出来上がった。そんな中で、寺山ではなく「テラヤマ」作品を作るというそんな使命を一番見事に達成したのは、この末満作品ではないか。  ピースビットの末満さんは、最初から最後まで、一気に突っ走っていく。自分の方法論で、この戯曲を構築して見せる。天晴れである。この作品は寺山のエッセンスが . . . 本文を読む
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テラヤマ博(大塚雅史)『星の王子さま』

2008-03-02 11:05:17 | 演劇
 この芝居の完成度の低さは尋常ではない。もうほとんど学芸会の域である。しかも、それがあの大塚雅史さんの演出のによるものであるという事実に驚きを禁じえない。  ライティングや音響といったスタッフワークである程度形になる芝居を作ることは、彼の技術をもってすれば至極簡単なことに相違ない。にもかかわらず、そういうところに逃げたりしなかった。稚拙は覚悟の上で、見せていく。  以前の彼なら、こんな恐ろしい . . . 本文を読む
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テラヤマ博(佐藤香聲)『レミング』

2008-03-02 10:16:41 | 演劇
 昨日2度目の『レミング』鑑賞。この文は初日(2月23日)に10分遅刻して見た時のものなので、幾分今の感想とは違う。芝居は2回見るとかなり違った見え方がすることがある。特にストーリーを中心に構成しないものはその傾向が強い。今回の作品は繰り返しの鑑賞に充分耐える傑作である。以下、初日の興奮が書かれた文章を掲載する。  昨年の佐藤香聲による初演を見た時の印象とは、まるで違う作品になっていることにま . . . 本文を読む
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