小説家の見た妄想が綴られていく、とでも言ったほうがわかりやすいだろう。頭の中で現実と空想がごっちゃになってしまい、どこまでが本当のことで、どこからが自分の創作だったのか、すらわからなくなっていき、繰り返される出来事は、いつも微妙にずれていき、煮詰まってしまい、ぐちゃぐちゃになり、またそれを反故にして、一から書き直していくうちに、何が何だかわからなくなっていく。
夢の中の出来事すら、それに混ざ . . . 本文を読む
あうん堂の作品は最近とても優しい。それまでの社会的な視点とか、メッセージ性なんかが、薄まり、それよりもまず、目の前に居る人たち、彼らの姿を等身大に見せていくことを第一に考える。そこに暮らす人たちの哀歓を描くことで、社会とか時代とかいうものも背景から浮かび上がる。アプローチが少し変わっただけでしていることは一貫している。
昔ながらの商店街。そこで暮らす面々が主人公だ。彼らは夜ごと集まっては、百 . . . 本文を読む
抜群のアイデアで引っ張って見せた自主映画『美女缶』(タイトルそのままで、缶詰に入った美女の話だ。水につけると人間になる。)で、デビューした筧昌也監督の待望の劇場用デビュー作である。1本目からこんなにも完成度の高い作品を簡単に作ってしまうなんて、凄い。しかも何の気負いもなくである。(少なくとも僕にはそう見えた。)
深い霧に包まれたモノレールの線路の上を歩く黒い犬と黒い服の男。このイメージシーン . . . 本文を読む