久々に刺激的な芝居に出会えた。こういう芝居を見ると、芝居を見ていて好かったなぁと、しみじみ感じる。演劇的想像力を刺激される心地よい作品なのである。特別な仕掛けがあるわけではない。だいたいセットもほとんどない。衣装もふつう。ビデオを使っているくらいで、あとは何もない。まぁ、狸の置物はたくさんあるけど。
なのに、どんどん連れていかれる。主人公である元OL(岩井由紀)と「もっかい様」と彼女が呼ぶへ . . . 本文を読む
10の短編集。ちょっと中途半端なものも含むが、基本的にははずれはない。ほんのちょっと不思議。で、個人的にはタイトルにもなった最後の作品が一番好き。このなんとも言えない気分がいい。
たったひとりでオーストリアまで行き、ひげ人形の愛好会の集会に参加する。その団体から招待されたのだが、呼ばれてわざわざ来たのに、招待者の側では、ちゃんとした対応をしてくれない。老人たちばかりだから仕方ないのだ。という . . . 本文を読む
こういうおバカなアクション映画を平気で作れる香港映画って凄い。以前ならもう見る気にもならないタイプの映画なのだが、最近は香港映画がめっきり少なくなり、ついつい郷愁にかられて見てしまう。しょうもないことは百も承知で、でも、たまにはいいかぁ、って感じだ。これは純粋な意味ではもう香港映画ではない。中国映画に分類される。だが、このアホなノリは断じて中国映画ではない。まぁ、そこで線引きする事に何の意味もな . . . 本文を読む
いつもの家族小説である。安心して読める。両親の再婚で、姉が出来た女の子フミが主人公だ。小学4年生。義母の連れ子である姉は6年生。仲良くしたいのだが、姉は自分のペースで物事を進める。優しくない。だから、彼女はひたすら気を遣うことばかりだ。義母はとても優しくていい人なのだが、それでもなんだかぎくしゃくする。まだ新米家族だから、慣れていないだけ。そのうちなんとか上手くやれるようになるだろう。心配ない、 . . . 本文を読む
「一世一代福森慶之介」。このサブ・タイトルが素晴らしい。こういう心意気で1本の芝居を打つ金満里さんの福森さんへの想いがそれだけで胸を打つ。劇団の事情や、個人的な問題は芝居自身には関係ないと思う人もいるだろう。もちろん作品の完成度には影響しないし、させるべきではない。作品はただそれだけで完結する。だが、決まっていた3月公演をキャンセルして、福森さんのために、彼をセンターにおいた彼のためのだけの芝居 . . . 本文を読む
一昨年の芥川賞候補作品。かなり面白いのだが、どうして受賞を逃したのだろうか。芥川賞候補としては、エンタメ臭がし過ぎたか。でも、そういうのだったら、なんだか嫌だな。わかりやすくて、新鮮で、刺激的なんだから、なんら問題はないではないか。こういうものが受賞すれば辛気くさい小説ばかりが受賞する、という印象が強い芥川賞に清冽な風を吹き込む作品になりえたのではないか。安易に若い女の子に賞を与えるのよりもずっ . . . 本文を読む
セミフ・カプランオール監督によるユスフ三部作の第3部。完結編、ということだが、これはよくある大河ドラマなんかではない。ささやかな人生の、とある1ページの、簡潔なスケッチだ。順を追って3部作を見たのだが、この『蜂蜜』1本だけを見てもよかった。というか、最初の想いのまま、最初はこの1本から見るべきだった。系統立てて順に見る必要なんかないのだ。見たいものを見たい時に見ればいいのに、製作順なんかに拘った . . . 本文を読む
南陽子さんが作、演出を担当する初めての本公演である。なかなか中心となる作家、演出家が決まらない今の新撰組にとって、これは新しいチャレンジなのか、それともこれをスタンダードとする、という意思表示なのか、まぁ、本人たちにもまだわからないだろうが、今回、南さんで本公演を打つというのは彼らにとって大冒険であろう。だってこれでは、今までの新撰組とはまるでカラーが違うからだ。もちろんアトリエ公演で成功した『 . . . 本文を読む
謎の住人が2か月ほど前に引っ越してきた。彼はここに住む訳ではなく、ある女性とここで定期的に会うためにこの部屋を借りたようだ。この芝居は、そんな2人を巡るお話である。
彼らが逢い引きするための部屋が舞台となる。もちろんこれはただの逢引きではない。それはすぐにわかることだ。ここには2人を巡るたくさんの人たちが入れ替わり立ち替わりやってくる。そこに、このアパートの住人たちもが絡んできてのドタバタが . . . 本文を読む
『食堂かたつむり』と同じパターンだ。こういう食を扱うファンタジーって、嫌いではないけど、なんだかとてもあざとい感じがして、どうしても身構えてしまう。いくら大好きな原田知世の久々の主演作品だとしても、いや、それだからこそ、余計に厳しくなるかもしれない。冒頭のシーンで、ちょっと嫌な予感がした。観念的な独りよがりかも、と思った。あまり甘いのも考えものだが、思い込みばかりが激しくて客観性のないものは、付 . . . 本文を読む
『卵』を見て、その後仕事で5日間家を空けていた。実はその間、この3部作の残り2本がとても気になっていた。今日帰ってきて、取るものも手に付けず、まず2本を連続して見た。だが、夜行バスで帰ってきた身体にこの映画はきつい。前作とタッチはまるで同じだ。説明はまるでないまま、ただ母親と2人での日々のスケッチが、淡々と描かれるばかりだ。長回しも同じ。セミフ・カプランオール監督によるユスフ三部作の第2部。
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もう見てから1週間が経つ。正直言うと、残念な作品だった。前2作がよかっただけに、とても楽しみにしていた。だが、先の2作から5年後、64年、という時間の経過は如何ともし難い。これはとても微妙な題材だったのだ、と改めて思う。この作品にあった感動というのは、映画の描くドラマ自体にはない。この過去の「時間」自体にある。だから、風俗の再現が何よりも大事だった。1957年自体が映画のテーマで、あの時代をドキ . . . 本文を読む
阪神淡路大震災をテーマにして書かれたこの作品が10年振りに再演された。どういう事情で急遽再演の運びになったのかは、わからないけど、今、この作品を見る意義は大きい。(この記事を書いた後、事情はホームページを見て確認できた)
東日本大震災の記憶も生々しい今だからこそ、この作品を再演する意義がある。深津さんは震災直後『カラカラ』を様々な形で上演した。『カラカラ』が描いたドキュメントから距離を置き、 . . . 本文を読む