2月の小説は豊作だった。忙しいから映画や芝居をあまり見に行けなかったので、小説やDVDをたくさん見た。読んだ。DVDは12本。小説は13冊。あれ、あまりたくさんじゃない。要するに少ない持ち時間の中では、かなりの量をこなせたという意味での「たくさん」なのだろう。でも、さすがにそれぞれの感想を書く時間まではなかった。思いつくままに、軽くメモ程度の感想を書いておく。
古谷田奈月『シュンのための6つ . . . 本文を読む
パク・チャヌクの新作だ。昨年『シークレット・ガーデン』でハリウッドデビューを果たした彼が再び韓国に戻り、作った大作である。日本の統治下にあった朝鮮を舞台にして、朝鮮で育った日本人女性と彼女の世話をすることになるメイド、彼女の持つ遺産を奪うため彼女に近づく詐欺師の男、その3人のお話。3部構成で2時間半の大作である。視点を変える3つの同じ話が(微妙に重なるという程度だけど)そのズレを通して、彼ら3人の . . . 本文を読む
車引きの少年が主人公。時代劇ではなく現代のお話。浅草周辺には観光客相手にした人力車がたくさんいる。吉瀬走は高校を中退して、ここで働いている。両親が家出して、ひとり取り残された彼は、偶然からこの仕事に就いた。高校の先輩が世話してくれたのだが。陸上部にいた。走るのが好きだった。高校を中退したくはなかった。でも、ひとりぼっちになり、身寄りもない17歳が授業料は払えないし、生きていくためには働かなくてはな . . . 本文を読む
とてもいい作品だと思うけど、惜しい。生田斗真が女に見えないからだ。無理して女らしくしなくても、そこに彼女がいるだけで、女らしさが立ち上るといいのだが、無理がある。
男の体で生まれてきた女の孤独。自分の性癖を理解してくれ全力で守ってくれる母親(田中美佐子)がいたから、ちゃんと女性として生きてこれた。そして、素敵なパートナー(桐谷健太)にも恵まれて、介護士としての仕事を持ち、幸せな日々を送る。で . . . 本文を読む
打ち棄てられた2体のロボット。廃棄され、あと少しで寿命も尽きる。ここはロボットの墓場。彼らは最後に人間のフリをして、恋をする。製造されて、これまでの時間に見てきたさまざまな風景が彼らの中にはインプットされている。これは彼らの記憶のできごとなのか。それとも、夢なのか。2体は、というか、ふたりは、今まで何度となく生まれ出会い愛し合ってきた。その長い歴史を一瞬の夢のような記憶として再生する。いろんな場所 . . . 本文を読む
先日発表されたアカデミー賞では大本命で、なんと14部門にノミネートされた期待の1作。(残念ながら、作品賞は受賞しなかったけど)『セッション』の新鋭監督デイミアン・チャゼルの第2作。公開初日に見に行く。(もぉ、見てから既に1週間以上の日が経っているよ!)
ラララと足取りも軽く胸弾ませて見た期待の映画だったけど、実は思ったほどにはすごくなかった。えっ、って感じ。
期待が大きすぎて勝手にとん . . . 本文を読む
思いのほか、面白く、なんだか幸せな気分にさせられた。軽やかで、のんきな映画だ。ホラ話のような。でも、なんかとても楽しい。
理想の恋人とつきあい、10年。満たされた毎日を送る精神科医が主人公。なのに、そんな彼が自分を見つめ直すために(そんなことする必要はないはずなのに)旅に出る。夢で見た不安が引き金となったのか。でも、あまり何も考えてなさそう。サイモン・ベック演じる男はとてもノーテンキに見える . . . 本文を読む
静かな怒りをきちんと伝える。声高に叫んだからといって答えは出ないし、解決もしない。時間はごまかすことはあっても、それで何かが解決するわけではない。2001年に実際に起きたNHKによる番組改編事件を題材にして、芝居は、ここに描かれる慰安婦問題だけに特化することなく、真実に迫ることが、様々な圧力によりどんな困難を仰ぐことになるのかという、どこにでもある普遍的なことを描く。
石原燃さんは事実のドキ . . . 本文を読む
17年前の作品だ。桃園会による初演を見た当時には感じなかった深津さんの若々しさを今回の空の驛舎ヴァージョンから僕が受け取ったのは時代を経たからだろう。20世紀の終わりという時代、阪神淡路大震災から5年という時間、そんな中でリアルタイムに見た本作はとても切実な痛みを抱えた青春ドラマだったのだと、今改めて思う。作品自体は古くなってないけど、いや、それどころかいろんな意味で新鮮だったほどだ。でも、なんだ . . . 本文を読む
この小説を読んでようやく『教団X』を読む覚悟が出来た。あの大部の書を持ち運ぶのがきついからなかなか踏ん切りがつかないまま、2年は経つ。分冊にしてくれていたならすぐに読み始めたけど、600ページに及ぶ本を数日間とはいえ、カバンの中に入れて歩くのはつらいと、二の足を踏んだまま歳月が過ぎていたのだ。
今回たまたま読み本がなくて、文庫で新刊コーナーに置かれていたからこの本を手にした。(2013年初版 . . . 本文を読む