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映画・演劇のレビュー

『ラ・ラ・ランド』

2017-03-08 00:10:34 | 映画
先日発表されたアカデミー賞では大本命で、なんと14部門にノミネートされた期待の1作。(残念ながら、作品賞は受賞しなかったけど)『セッション』の新鋭監督デイミアン・チャゼルの第2作。公開初日に見に行く。(もぉ、見てから既に1週間以上の日が経っているよ!)



ラララと足取りも軽く胸弾ませて見た期待の映画だったけど、実は思ったほどにはすごくなかった。えっ、って感じ。



期待が大きすぎて勝手にとんでもない作品だと思ったからかもしれない。もちろん冒頭の高速道路のダンスシーンなんて圧巻だったし、ストーリー重視のスタイルもよかった。ミュージカルの王道を行きながらも21世紀スタイルをしっかりと提示して、ただのノスタルジアなんかではない映画になっている。音楽映画であるのは前作『セッション』と同じで、でも、やりかたはまるで別人。今の若い作家は実に柔軟な姿勢で映画と取り組む。しかもとてもうまい。



甘いばかりではなく、ちゃんとビタースィートな映画なのだ。でも、悲惨ではない。夢のある映画だ。これまでのすべてを一気に見せるラストの空想シーン(ありえたかもしれない2人の人生)は思いっきり華やかで幸福に満ちている。ワンシーンでみせる圧倒的なミュージカルならではのときめきがある。しかし、それが現実ではないと知った上でのミュージカルナンバーであるのがほろ苦い。現実は夢のような出来事ではないけど、決して最悪ではなく、これはこれですばらしい人生なのだ。そんなことを思わせてくれる。



主人公2人の出会いから別れまでを(再会も含めて)1年間のドラマとして描く。春から始まる翌年の春まで、と思わせて5年後の春へと飛ぶ。あのエピローグは素晴らしい。夢のような恋愛ミュージカルである。人生は思ったようにはいかないけど、だから素敵だ、といえる。この映画はある得ない夢を描くのではなく、そうであったらどれだけ素敵だったか、というほろ苦い夢を口あたりよく描いてくれる。音楽もすてきだし、しっかりとしたドラマ部分がいいから、ミュージカルシーンも違和感なく受け入れられる。今年のアカデミー賞を総なめしてしまうのは当然だろうと思わせる傑作。(でも、作品賞はもらえなかったのは、今年の政治的な問題かも。)



あれっ? 最初が少しがっかり、と書いていたはずなのに!
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