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映画・演劇のレビュー

『しあわせはどこにある』

2017-03-08 00:08:37 | 映画
思いのほか、面白く、なんだか幸せな気分にさせられた。軽やかで、のんきな映画だ。ホラ話のような。でも、なんかとても楽しい。



理想の恋人とつきあい、10年。満たされた毎日を送る精神科医が主人公。なのに、そんな彼が自分を見つめ直すために(そんなことする必要はないはずなのに)旅に出る。夢で見た不安が引き金となったのか。でも、あまり何も考えてなさそう。サイモン・ベック演じる男はとてもノーテンキに見える。



イギリスを離れ、中国、アフリカ、ロサンゼルスという3つのパートからなる。なんか見事な選択だ。中国でお金では買えない精神的なものを手にする。アフリカで悲惨な現実を見つめ、何が必要なのかを知り、その2つを経て、最後はロスで生きる指針を手に入れる。そうして生まれ変わってロンドンに戻る。



自分にとって大切なものは何かを改めて知る。これはまぁ、ある種の寓話なのだが、それをものすごくざっくりと描くから教条的にはならないし、なんだか気持ちがいい。幸せだと思っていたものが何だったのか。あんなにも満たされていると思ってきたのに、実は常に不安で心のなかにぽっかりと穴があいていて、それを埋めきれないまま生きていた。お金では買えないものを手にして、本当の自分を知る。それは大げさな何かではない。ちゃんとそこにあったのに気づかないでいただけ。頭でわかっていても、体でわかっていなかったなら、そんなのはわかっているとは言わない。



そんなことを改めて教えられる。大切なことは自分の手と足でそれと触れてくることだ。旅をすることを通してこの映画はそんなことをちゃんと教えてくれる。こういう映画を見た後は、また旅がしたくなる。
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