習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『三度目の殺人』

2017-09-15 22:42:29 | 映画

 

是枝裕和監督による法廷劇。犯人(役所広司)と弁護士(福山雅治)の対決を中心に置き、ある殺人事件を追う。とても静かな映画なのに、緊張感のある映画で見ていてドキドキする。真実はどこにあるのかを描くわけではなく、ほんとうのところがわからないまま、終わっていく。見終えた後には、もやもやしたものが残り、すっきりしないのだが、そこが作品のねらいでもある。

 

ただ、殺された男のことが一切描かれなかったことが気になる。彼の存在はこの映画にとっては大事ではない、ということか、と思わせておいて、彼による娘へのレイプという一番怖いところが曖昧になる。結局は彼がなんだったのか、が重要な要因じゃないか、と思わせる。でも、そこはまるで追求されない。

 

誰が殺したのか。なぜ、殺したのか。真実はどこにあるのか。そこを曖昧にしたまま、犯人として捕まった男は死刑になる。それがタイトルの三度目の殺人。

 

是枝監督は家族の問題を扱うときと同じで、犯罪を扱っても答えを出さない。すべてが闇に包まれたまま、映画は幕を閉じる。人の心なんて、わからないし、真実なんてものは、ない。事実はどこかにあるのかもしれないが、それが明るみに出ることもない。自分が信じたいことが、自分にとっても真実なのだ、と思うしかない。それでいい。

 

同日に見た『ダンケルク』にしても、これにしても、そうなのだが、近頃見る映画は、決めつけることをしない映画が多い。それが時代の気分なのか。もちろんそれは、観客に答えをゆだねることではない。わからないことがある。わからないことだらけだ、という事実。そこから描かれる出来事を見せていくこと。見たモノ、それをそのまま、受け止めるしかないし、それでいい。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ダンケルク』 | トップ | コンブリ団Re:sources『夏休... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。