習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

Random Encount 『Second.』

2017-09-18 20:01:38 | 演劇

 

前回の『ウサギ小屋裁判』は欠席した(たしか、法事で行けなかった。)だから彼らの芝居を見るのは2年振りになる。毎年コンスタントに新作を発表している周防夏目の2017年作品。最近の彼はとても落ち着いたタッチの作品を作る。今回もそうだ。白い扉だけのある空間。そこに閉じ込められた人々。劇中でも触れられるが映画の『キューブ』のような感じ。でも、ここは閉ざされた場所ではなく、この扉にある部屋だけではなく、広い空間がその外に広がっているようだ。

 

ここは死んだ人たちが、その事実を認める前に待機している場所。でも、彼らはそこに止まり続ける。死を認められないからだ。白い扉を開くともう一度死の瞬間に戻れる。そして、またここに帰ってくる。そのくりかえし。うまく行けば死なないでもとの場所に戻れるかもしれない。そのことに賭けて、何度となく挑戦するものもいる。だが、何度やっても戻ってくるばかり。自分の死を認めたなら、ちゃんと死ねる。往生際が悪い8人の男女が主人公。彼らが、居直ってここに止まり、ここで共同体を作ろうとする。そこでルールが必要になり、リーダーもいる。派閥が生まれ、ヒエラルキーも出来る。ルールを守れないものは断罪する。8人だけならよかったのだが、どんどん人が増えてくる。

 

なかなか面白いお話なのだ。密室劇のような感じの作品なのに、そうではないのが面白い。でも、結局、彼らはここに閉じ込められたまま。ラストの謎解き部分も悪くはない。上手く話を持っていったと思う。ただ、せっかくこの世界を楽園にしようとした彼らの野望がどう崩壊していくのか、もっと作品世界を広げるようにして、見せられたならと、惜しまれる。そのためにはキャストをもう一人用意しただけで可能だった気がする。新しい住人たちが言葉でだけしか描かれないから説得力がないのだ。1人に全員を象徴させ、彼らが何を思い、ここに踏みとどまるのか、さらには、ここをどうしようと思うのか、最初のメンバーである8人と対比させながら話を展開できたなら作品世界はちゃんと広がったはずだ。だいたい8人の中でも内紛が生じて、2人は死の世界に足を進めるし、中心メンバーから離れた主人公である2人のドラマ(このオチは秀逸だけど)は、この世界観を形成するメインの話からは逸脱したままだし。

 

残念だが、全体のバランスが悪いのだ。せっかくの面白い設定をもっととことん生かし切れればよかったのに、と惜しまれる。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« くじらstaff presents!『屋... | トップ | 『散歩する侵略者』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。