今年もまた『ワイルドスピード』がやってきた。「これってもう夏の恒例行事になってきたのではないか」と書こうと思って、はたと気付く。「このシリーズって夏に公開してたっけ?」(してない!)しかも、最初はスピードレースの話だったはずなのに、今ではまるで様相を異にしてヒーロー物で、スパイアクション映画にもなっている。もう何が何だか、の世界なのだ。だからトム・クルーズの『ミッション・インポッシ . . . 本文を読む
この夏、久しぶりに台北に行くことになった。4日間の短期だが、楽しみだ。この映画は台北から花蓮を舞台にしたノワールなので、参考にする、とかいうわけではないけど、ついつい見てしまった。だが、なんだかつまらない。
お話がまるで動かないし、何がしたいのかもよくわからない映画だ。では、台湾の風景が魅力的か、というとそういうわけでもない。いかにも台湾、というような風景は描かれない。観光映画ではないのだから当 . . . 本文を読む
渾身の一打。やられたな、と思う。これは実に阪本先生らしい作品だ。作品自身は追手門時代の阪本作品の延長線上にある。今までも何度か上演したこの作品を取り上げ、3年目を迎える仰星高校演劇部で、それに挑戦した。ラストの終わらせ方といい、(あのひっぱりまくった阪本節全開!)好きしている。新しい学校でも以前と同じことができるという事を試したかったのか。どこに行こうと変わらないという事を示したのか。自分らしいも . . . 本文を読む
「終わり」から始まる80分ほどのお芝居は、もちろんラストで「始まり」を迎える。ということは、この芝居のなかにはなにもない、ということだ。なにもないものをずっと80分間みつめていくと、そこから「何か」が生まれてくる。そんな気にさせられる。ここには一貫したストーリーはなく、コラージュされるいくつもの断片は、ラストで集約されひとつに、はならない。ただ、そのまま、そこにとっ散らかったままで、放置されていく . . . 本文を読む
こういう小説を読むとなんだか元気になる。それが児童文学であろうと、YA小説と言われるものであろうと、そんなことはどうでもよろしい。面白ければなんでもいい。これは昨年の課題図書に選ばれた作品なのだけど、中高生向けのはずなのに、専門知識を網羅して容赦ない。なのに、とてもわかりやすい。しかもマニアックな作品にはならない。読みやすく、ストーリーの面白さでどんどん引っ張っていく。コンクールに . . . 本文を読む
前作がとても切なくて大好きだった。ウッディ(おもちゃ)とアンディ(子ども)との別れ、というテーマがこのシリーズの幕引きとして見事だった。子どもはやがて大人になり、おもちゃの世界から現実の荒波に乗りだしていく。それをおもちゃたちは見送るしかない。そんななんとも切ないお話だった。あれでこの世界は完結した。
それだけに今回の『4』の登場は意外だ。もう終わってしまった作品 . . . 本文を読む
今年で9年目に突入した夏の恒例行事あみゅーずによるリーディング公演。気が早いけど来年は十周年。彼女たちなら必ず来年もする。そんな安定感のある集団ってなかなかない。マイペースを崩さず、無理せず、毎回愉しみながら冒険を敢行している。これも恒例になっている11月【頃】の本公演は、いつもとは違い今年は大竹野作品に挑む。ぼつじゅう企画に参加しているからだ。でも、来年の秋はまたいつもの形に戻る . . . 本文を読む
ようやく見てきた。期待度マックスだったので、実は少し心配だったけど、予想外の大胆な映画で感心した。暗い映画だ、とは聞いていたけど、こんなにも救いのない映画だなんて、想像を絶する。先日の『アルキメデスの大戦』といいこれといい、この夏の日本映画のメジャー大作は実に攻撃的で挑戦的だ。安全圏で勝負するアメリカ映画のメジャー大作映画とは一線を画する。
新海誠は『君の名は。』の大ヒットのあと、この映画を手掛 . . . 本文を読む
先日『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」で直木賞を受賞した大島真寿美が2018年に発表した作品。いつも彼女の小説は面白いけど、今回はその不思議な感触も含めて、僕には『渦』以上に面白かった。今、自分も仕事を失う恐怖と向き合っていることも影響しているのかもしれない。
個人的な話で恐縮なのだが、実は、後8か月で定年退職を迎える予定だ。そうなのだが、この期に及んで、自分が何をしたいのか、よくわからないで悶々と . . . 本文を読む
こんな映画を作っていいのか、と思わせるくらいにこれはマニアックな作品になった。しかも、地味だし。なのに、もの凄いお金がかかる大作映画である。メジャーな商業映画で、一見すると「戦争もの」のSFX超大作を思わせる。しかし、見てみるとそんな予想は覆される。こんなはずじゃなかった、と思いつつ、騙された気分で見ることになる。だが、そのなんともいえない心地よさ。最高の裏切りの心ときめく。
こ . . . 本文を読む
ミカエル・アース監督によるこの映画は、大切な人の死から始まる。茫然自失の主人公、そんな彼のその後の時間を、ドラマチックに描くのではなく、日常の中に埋もれていくように静かに描く。映画は、恋人とのセックスの後から始まり、新しい恋人とのセックスまでを描く。だが、それは彼女を忘れるまでのお話ではない。忘れないという、主人公の固い想いが胸に沁みる。でも、人はどんなことがあろうとも、その後の時 . . . 本文を読む
笑いをテーマにして手慣れたタッチで1時間ほどの芝居を作り上げた。安心して見ていられるのだが、可もなく不可もなく、というなんだか安全圏で勝負したような芝居で、物足りない。ホッとさせる、のではなく、ハッとさせる、そんな芝居が見たい。
タイトルの「失せ物」にもっと意味を持たせてもよかったのではないか。彼らが夢を追いかける姿を通して僕たち観客もそこから元気を貰える、彼らを . . . 本文を読む
とても美しい舞台だった。作品自体に力があるし、それを30名に及ぶキャストが一丸となり圧倒的な迫力で見せる。きちんと作り込まれた舞台美術だけではなく、大人数のキャストを適所に配置しての群舞とでもいうべき空間造形の見事さ、特にラストシーンの美しさは圧巻だった。人魚(金魚)の口の中から出てくる赤い糸をどんどん引き延ばしていくシーンの美しさは感動的だった。
まだ幼い高校生 . . . 本文を読む