時間が出来たから偶然この映画を見ることになった。隙間の時間に合う映画がこれしかなかったからだ。だけど、予想したほど酷い映画ではなかった。というより、期待(してないけど)以上の映画だった。
ちゃんとしたハリウッドの娯楽大作だけど、やりたい放題のビジュアルはもう何をされても驚かないし、反対にその過剰な派手さには醒めてしまうのだが、この映画はそんな過剰さを逆手に取った過激さを提示する。冒頭、なんとも不思議な世界が提示される。日常のスケッチなのだけど、そこはとんでもない世界なのだ。殺人や、強盗、爆破テロなんでもありの世界。でも、なんだかノーテンキで、そんなのが日常でみんなニコニコしている。
ここはゲーム内の世界という設定で、最初はそこを伏せて「なんなんだ、この世界は!」 と驚かすのだが、そんな仕掛けはすぐに飽きるとこを承知の上で、さっさと見切りをつけて、これがゲーム内のお話だとばらして、主人公はゲームのモブキャラだという設定からお話を進行させていく。見切りが早いし、展開はスムーズなので、わかりやすいし、お話の世界に入り込みやすい。ゲームには全く興味がないし、したこともない僕でもとりあえずこのお話にちゃんとついていけるように作られてある。この先どうなるのだろうか、と安心してドキドキさせられる。
この映画を見ながら思い出すのは『刑事ジョン・ブック 目撃者』のピーター・ウィアーが監督した『トゥルーマンショー』だ。「どっかでこんな映画を見たよな、」と思いつつしばらくして思い出した。(懐かしい映画だ。もう20年以上前の作品だろう。しかも、最近あれほど一世を風靡したピーター・ウィアーの映画を見たことがない。今彼はどうしているのだろうか?)
終盤の展開は手に汗握る追っかけっこになり、まぁハリウッド映画の定番になる。当然ハッピーエンドだ。『デッドプール』のライアン・レイノルズが主演だから、もちろんアクション満載だけど、ラブストーリーにちゃんとなっている。潤沢な予算を湯水のように使い、驚きのビシュアルを惜しげもなく提示しながら、心地よいありきたりなお話を安心して見せてくれる。幸せな気分にさせられて満足して劇場を後にすることができる。
こういう単純でハッピーな娯楽大作って最近なかったのではないか。コロナ禍で新作ハリウッド大作映画があまり公開されなくなり、なんだか寂しい気分だったがこの映画には癒された。本来なら大きなチェーンで潤沢な宣伝費を投入して公開されてもいいのではないか、と思うけど、小さなマーケットでの公開で、全く人が入っていなかった。心斎橋の劇場で1日2回上映で僕が見た回は客は4人。本来なら大きなスクリーンでたくさんの観客と一緒にポップコーン片手で見る映画なのだろう。頑張っているこの映画が可哀そうだ。