「シャサーニュ・モンラッシュ ドメーヌ・ラモネ」


 飲み会の時、たまにバブル時代の話しになります。私もバブル入社組なのでタクシーが掴まらなかったこと、いつも2次会、3次会で高級バーに行ってお姐さんとスキーの話しをしていたこと、株、蓄財などの金儲けをしない人はバカだという雰囲気の記事が雑誌、新聞に溢れていたことを思い出します。

 当時は何も努力しなくても皆がお金を使ってくれたので飲食業界、サービス業界はレベルが低くてどうしようもなかったと思います。そういう意味では現在は本当にいい時代になったと思います。長らく不況と言われていますが周りで聞いても世の中はよくなっている実感があるのは不思議です(若年層の仕事の選択肢が少ないという構造的な問題は相変わらずですが)。

 そんなバブル期にあれはよかったなあと思い出すことは、金持ち向けのサービスのお零れに与ったことです。特に印象深いのが、渋谷の東急百貨店本店で3~4ヵ月に一度、フランスワインフェアが開催されていて、その際、5千円~8千円のワインが3~4本試飲コーナーに置いてありました。しかも、その脇に店員さんがいるわけでもなく、自由に飲み放題状態でした。
 当時、ワインを飲み始めでいろいろと試していたのですが、ワインの世界はあまりにも奥深くてどうも値段と味の関係が理解できませんでした。1千円~3千円のワインは(当たり外れもありますが)1千円~3千円の味がして、1万円を超えるワインは相応の満足感があります。ところが、少し贅沢してそれなりの味を期待する4千円以上1万円未満のワインが難解でした。もう好みの世界でこの層を買うのは難しいなあと思っていました。
 今でもよく分からないのは同じですが、東急本店の地下1階のワインコーナーで何度も試飲させていただいたお陰で値段と味の関係をある程度イメージできるようになったのではないかと思います。今ワインを買うのはエノテカか恵比寿のパーティですが出世した際には、バブル時のタダ飲みのお返しを東急さんにしたいと考えております。

 その結果、今好きなワインは何かと訊かれると…やはり難しいです。特にピション・ラランド、レフォールドラトゥールのような好みと思っていたボルドーワインでもビンテージ(生産年)によって味が異なるので、こんなものだったかなあと失望することもあります。ワインは美味しいけどよく分からないというのが15年以上の経験の結論です。

 それでも、これは値段相応においしいと思えるものの一つが、「シャサーニュ・モンラッシュ ドメーヌ・ラモネ」です。フランスのブルゴーニュ地方のシャサーニュモンラッシュ村のブドウ、作り手はラモネさんです。
 いろいろと飲んできましたが、ボルドーは結局、熟成なので、古くてよいヴィンテージのものを我々は飲むことは出来ません。若くても美味しいブルゴーニュに目が向くことになります。その一つが、このワインです。ブドウのフルーティな香りとコクとのバランスが絶妙です。白が有名ですが軽い風味の赤もいけます。

 新婚旅行の際にロマネコンティのブドウ畑などフランスブルゴーニュ地方のコート・ドールのワイン畑を巡るツアーに参加しました。太陽が燦々と降り注ぐあの丘で美味しいワインが今でも作り出されているんだなあと思うと懐かしいです。


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朝日新聞日曜版「世界 名画の旅」


 最近は新聞を読まなくなりました。以前は新聞を読むことはサラリーマンの義務のようなところもあり必ず目を通していましたが、インターネットで情報がオンタイムで読めて関連情報も自在に手に入れられる時代に新聞の果たす役割がなにか分かりません。1年前まではそうはいっても新聞は必要と思っていましたが、最近は書き手、発信源という重要性は分かるのですが媒体としては要らないことを実感しています。

 まだ新聞(と雑誌だけ)が世の中に多くの情報を提供していた頃、楽しみにしていた長期連載がいくつかありました。毎日新聞の色川武大の「うらおもて人生録」というエッセイ、朝日新聞の「世界 名画の旅」という名画を巡るエッセイ、産経新聞の歴史モノなどなど。

 特に朝日新聞日曜版に連載されていた「世界 名画の旅」は絵画の楽しみ方、見方を初めて教えてもらった読み物で日曜日の朝の楽しみでした。
 連載時もほとんどの紙面をコレクションしていましたが、それがまとまり出版された後も繰り返し眺めて、海外旅行で美術館に行く際には関連ページをコピーして持参していました。

 この連載は、天声人語を担当していた疋田桂一郎など朝日新聞の当時の名文家(本当に上手いです)による絵画、それが所蔵されている美術館、その都市を巡る絵画紹介文、旅行記、エッセイで、とてもおもしろく読めます。
 関連する絵も多く載っていて、何故この絵が名画なのかよく分かるとともに、この短いエッセイを読み終わると、その絵画が所蔵されている都市、美術館を訪れて実際に見てみたくなります。

 発売当初は、A4サイズの本だったので、連載時同様にかなり大きいサイズで絵を見られたのですが、現在この本は文庫本(7冊)となっているので、掲載されている絵画のサイズはとても小さいです。絵画の本は実物の写真なので実際に見るのと印象は異なりますが、せめて細部のタッチが感じられるサイズで見ないとその絵画のよさは分からないような気がします。大量出版の時代では仕方ないのでしょうが、この手の本は文庫本にする意味はないような気がします。

 冒頭に載せているのは、第2巻(当初版)で紹介されたベラスケスの「宮廷の待女たち(ラス・メニーナス)」です。付き合っていた時、妻が友人とスペイン旅行に行き、マドリードのプラド美術館にも行くというので、この本も含めてラス・メニーナスの関連資料をコピーして渡したところとても感謝されました。自画像を描いてもらっている途中で気分を害しふくれている王女様、とりなす待女、周りに画家(ベラスケス本人)、鏡に映る両親という構図については諸説あるようですが、美術館で聞いた最新の説(この連載時の記事とはかなり異なるもの)を帰国後いろいろと聞かせてもらいました。

 私も含め、素人が予備知識なしに芸術に感動することは残念ながら難しいと思います。絵画も綺麗な絵だと感じる程度であれば誰でも可能ですが、その先となるとなかなか分かりにくい分野です。この本の写真と文章は、奥深い絵画の世界への案内役としては最適なものの一つだと思います。
 この連載の続編でもよいので、新聞には日曜日が来るのが楽しみと思えるこういう連載を企画してほしいものです。

 それから、この本に掲載されている絵画を生きているうちに実際に見てみたいです。全ては不可能なので、せめて「プラド美術館」、フィレンツェの「ウフィツィ美術館」に行きたいなあと思います(妻はどちらも行っているので、もういいと言っていますが…)。
 ただ、見たい絵画と巡りあうのはなかなか難しいものです。これまでパリに2度行き、ルーブル美術館で膨大な絵画を鑑賞しましたが、2度ともフランス絵画を収蔵しているゾーンが修復中で一番楽しみにしていたダビッドの「ナポレオンの戴冠式」、「レカミエ夫人の肖像」を見ていません。同じくパリのマルモッタン美術館に行ったところ、モネの「印象・日の出」がどこにも展示されていません。おかしいなあと思っていたら上野の美術館に来日中でした。ニューヨークのホイットニー美術館にオキーフの「夏の日々」を見ることを目的に行ったところ、どこにもありません。スタッフに聞いたところ、「今は地下の収蔵室にあるよ。その代わり○○○を展示しているじゃないか、オキーフの絵を見たい特別な理由でもあるのか」と言われました。

 海外旅行には大きく分けて都市系とリゾート系とがあり、若い頃は絶対にショーや絵が観られる都市系でしたが、最近はリゾート系が多くなりました。まだ見ていない絵が多いなあと思うと、次回行く機会があるのであれば久しぶりに都市系もいいなあと思います。
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