マスノスケがやって来た。
生まれはロシアだ。
北海道の漁港では、春から初夏にかけて“時知らず”の漁が行われる。
時知らずは、まだ回遊しているシロザケを若いうちに捕まえるというものだ。
卵に栄養を取られていない時知らずは脂がのっていて実に美味しい。
サケの王様とまで呼ばれる時知らずだ。
その時知らずはクアトロで西京漬けになっている。
ところが、昆布森にこの時知らず以上のものがある。
時知らずだけでも希少価値だが、さらに時知らず漁で希に獲れるサケがある。
“マスノスケ”である。
天然の国産キングサーモンのことなのだ。
ロシアから回遊してきたキングサーモンが希に時知らず漁で上がるのだ。
天然ならではのキングサーモンの美味しさは格別なものがある。
サケのキング・オブ・キングスなのである。
このマスノスケは魚市場でも滅多にお目にかかれない。
今日クアトロにやって来たマスノスケは特に顔が良い。
小顔で、きりりとした顔立ちは、まさにキング・マスノスケ。
マキがやってきた。
出身はコルシカである。
そうナポレオンが生まれた地中海に浮かぶ島である。
海岸まで山がせり出すような島で、牛などを飼うような広い土地はない。
羊や山羊が多く斜面にはブドウも植えられ美味しいワインも作られている。
マキは、羊の生乳で作られたチーズだ。
乾燥させたローズマリー、セイボリー(サリエット)、フェンネル、ジュニパーベリー、赤唐辛子で覆われたこのチーズ。
マキは高崎のチーズ屋さんに、里子に出され大事に大事に育てられたマキ。
そのチーズ屋さんの親父は泣く泣くマキをクアトロに手放した。
シェーブルに似た味わいもあるが、ハーブが心地よく香り、とてもエレガントだ。
コルシカの田舎で生まれたとはとても思えない。
「マイ・フェア・レディ」のオードリー・ヘップバーンのようだ。
さてさて、クアトロでの社交界へのデビューは鮮烈なものになるだろう。