日本料理とイタリア料理の違いのひとつは、旨みの作り方だろう。
日本料理では昆布だしと鰹だしを合わせた旨みを基本にする。
イタリア料理ではトマトソースで肉や魚介を調理して旨みを引き出す。
どちらもグルタミン酸とイノシン酸という旨み成分の相乗効果がポイントである。
クアトロ11周年企画のペスカトーレなどは、イタリア料理の旨みの作り方の基本である。
トマトソースの豊富なグルタミン酸とたっぷりの魚介から引き出されたイノシン酸が作るその旨みはこれぞイタリア料理と感嘆することでしょう。
また、ここにオリーブオイルが介在することも忘れてはいけない。
オリーブオイルがそれぞれの旨みを乳化させている。
クアトロのペスカトーレおすすめ週間も終わるが、記録的にたくさんのペスカトーレを堪能してもらいました。
11周年のクアトロのペスカトーレが運ばれてくる。
その見栄えの豪華さに感嘆の声を上げることだろう。
しかし、いつまでも見とれている訳にもいかない。
どうやって食べたらこのペスカトーレを充分に堪能できるのかという作戦を組み立てなければならない。
それも、瞬時に判断しないと、こういった麺類に対しては致命的な打撃となる。
まずは具の種類を識別しなければならない。
クアトロのペスカトーレは異常ともいえるほど具沢山である。
この場合は、スパゲッティと具を混ぜ合わせて食べるといった愚行は避けなければならない。
また、その必要もなくスパゲッティ一本一本にそれぞれの素材から出た旨味がよく絡んでいる。
具を味わいながら、静かに具と具の合間からスパゲッティをたぐり寄せるといった作戦が妥当のようだ。
具を自分の好みの順番で食べながら、その合間にスパゲッティをフォークに巻き付けて食べる。
さらに、トマトソースも最後にきれいに無くなるように計算しながら食べ進んでいく。
たとえば、海老を食べて、スパゲッティを食べて、トマトソースを食べる。
アサリを食べて、スパゲッティを食べて、トマトソースを食べる。
・・・といったぐあいだ。
魚貝を食べる順番にはそれぞれの生い立ちが反映されることも多いようだ。
たとえば大好きな海老を最後までとっておく人。
大好きな海老は一番始めに食べてしまう人。
それぞれに人生経験が左右されていると思われるが、その点は自由に行動すべきだろう。
このようにして、息をつくのも忘れクアトロのペスカトーレに没頭する。
食べ終わり、ふぅーっと息を吐く。
そうして至福の時を感じることだろう。
かの皇帝ナポレオンが愛したチーズがチーズの皇帝と云われるエポワスである。
うたたねをしたナポレオンの目を覚まそうとした兵隊が、ナポレオンの好物のエポワスを鼻先に近づけると、「ジョセフィーヌ今晩は勘弁してくれ」と云った小咄のあるチーズである。
この小咄の解説は控えさせていただくが、このチーズはとてもニオイがきつく独特である。
神様の足の臭いとも例えられるチーズだ。
チーズの表面を塩水やお酒などで洗いながらチーズの熟成に適した菌だけを繁殖させる方法がウォッシュタイプと呼ばれるチーズの作り方である。
エポワスなどのウォッシュタイプのチーズは表皮がとても臭く納豆やクサヤのようなニオイがするのが特色である。
しかし、その表皮の内側にはトロリとしてなめらかな美味しいチーズがある。
内側の美味しいところだけをスプーンにでもすくって食べるのはとても贅沢な楽しみである。
「ジョセフィーヌ、今晩は日本酒に合わせてみるか」