rock_et_nothing

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スペイン・カディス、三千年前から続くフェニキアの要塞古都

2011-03-05 11:42:58 | 街たち
ヨーロッパ最古の港町ともいわれる、スペイン・カディス。
イベリア半島の西南端に位置する大西洋に向かって突き出た岬にある、フェニキア人の要塞(ガディル)が起源の街だ。
以来、どの時代にわたっても船を使った交易と軍事的要所として栄えてきた。
現在は、自動車と航空機に取って代わられ、街並みが往時の面影を偲ばせている。

街は、狭く入り組み、路地&迷宮ファンの心をぐいっと鷲掴みにする魅力を放っている。
建物の壁には、鉢植えの植物が飾られ、街を綺麗にしようという人々の気持ちが見て取れる。
陽気に気さくな街の人たちは、ヨーロッパの他の街とはちょっと違うようだ。
ガウンやスリッパで、玄関から外へ出るなんて、驚きの行動をする。
街全体が、一軒の長屋で、玄関は個人宅のドア、街中は中庭(パティオ)といった具合に、どうやらカディスは一つの家族という意識があるみたい。
かといって、べたべたの馴れ合いではなさそうだ。
個人が基本だけれども、カディスという街を中心にまとまっている、ゆるい家族、コミニュティーに感じられる。
スペインの中でも、経済的位置は低いというが、それでは計れない違う豊かさが高いように思われた。

こんなカディスでも希少なワインバルが映し出された。
ワインの樽が店の片面に並んで積み上げられ、若いものから熟成されたもの、白や赤と取り揃え、過ごしている時間に合わせて(お昼休みのワインをおやつと称していた)、食事に合わせて飲み分けをするのに、樽に付けられた栓をひねってグラスに注ぐ、そんなワインだけを飲みに来る純粋な店だ。
以前は、カディスのいたる所にあったのだろうが、生活・食生活様式の変化によって、店が減ってしまったのだろう。

それから、ある通りでは、どの家の2階のバルコニーにも、釣竿が立てかけられていた。
どうやら漁師が住む界隈で、その仕事を誇りにする意思表示らしい。
街中でも、道路わきで、今日の収穫の魚を売っている男たちがいた。港町ならではの光景か。
何にしても、自分の仕事を誇れるというのは、人生を肯定できる大事なこと。
本当の人生の豊かさだ。

あと、とても魅力的な場所があった。
市場だ。
ナレーションでは、古代遺跡を利用したとあった。
明るく広い敷地に、もちろん魚屋、肉屋、ハム・ソーセージ専門店(凄く惹かれた)、野菜・くだものの生鮮品店など、豊富な食材が見た目にもよく売られていた。
旅行にいた先々で、スーパーや青空市場、公設市場、庶民的な商店街を覗くのを大の楽しみにしている。
自分の印象に強く残っているのは、フィレンツェの公設市場。
滞在中、毎日のように足を運んだ。
ワインやチーズもさることながら、そこでしか見られない市井の生活を垣間見られるから(食を通して)。
そうだ、カディスの市場に、アーティーショークが山積みになって売られていた。
それを見た途端に、若い白ワインと一緒に、茹でたアーティショークを食べたくなって、身悶えしてしまった。

これでまた、是非とも訪れたい街のひとつにカディスが加わった。
強力な引力、迷宮路地とアーティショークがあるから。
いや、箱庭的街の雰囲気が好きだから。