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アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

美食の街、フランスのリヨン

2012-07-07 11:28:14 | 街たち
「にじいろジーン 地球まるごと見聞録」フランス第二の都市、リヨン。
ソーヌ川とローヌ川の合流するところにローマ時代から流通の要所として栄えた。
また、フランス王国時代には、絹織物の交易の場ともなった。
そんな、時代時代の富が集中したからであろうか、美食の街の一面もある。

では、美食の街に相応しい話題に早速移るとしよう。

リヨンの郷土料理には、よくモツが使われる。
その代表格を2つ。
”ラ・トリップ”は、モツをトマトソースとワインで煮込んだもの。
むかし、パリのレ・アルにある肉料理専門のレストランで、その店のオススメ料理をよく分からずに注文した、それが”ラ・トリップ”。
白い器の中に、トマトソースで赤く煮込まれたものがはいっていて、アツアツととても美味しそう。
喜び勇んで食べ始めたら、普通の肉ではない。
もちろん臭みなどなくうまく料理されているのだが、いささかこってりと重いのだ。
半分も食べられずにギブアップ。
ちなみに、もともとの量は日本人にとって倍くらい多いから、別の意味では食べきったと思う。
観念して辺りを見回すと、70歳は超しているような女性が、大きなステーキをパクパクと順調に食べているではないか。
そのとき、もともとの体の違いを痛感したのであった。
話を元に戻し、次に”アンドゥイエット”。
これは、ソーセージの形状で、豚の腸に牛モツを詰め込んだもの。
それにマスタードソースをつけて食べるらしい。
パリッとした皮の中に、ジューシーで柔らかいモツのバランスが絶妙とか。
こうもモツ料理があるのは、昔の庶民に一般的な肉の部位は高嶺の花で、モツつまり捨てるような内臓を工夫して食べた、そういう歴史があるのだった。
何も、リヨンに限ったことではなく、何処でも庶民は知恵を絞って腹と舌を満たしていたのだが。

リヨンは、2つの川に多くの恵みをもたらされている。
”クネル”は、川の恵みを受け取った郷土料理。
近くで獲れた川魚を、小麦粉とバターで生地を作り、クリームスープと焼き上げる。
見た目は、ポッドパイのよう。
リヨンにあるクネルの名店は、生地にヤシ油を使わず牛脂を使うことで、よりさっぱりとした食感を出すという。
牛脂が?と、ちょっと不思議な気もするが、そう言うのだから仕方がない。

次にスイーツ。
「ブイエ」というショコラティエでは、”マカリヨン”というリヨン発のスイーツを作っている。
マカロンをチョコレートでコーティングしたもので、普通マカロンは5日程度しかもたないのだが、”マカリヨン”は2週間日持ちする優れものとか。
「ベルナション」もショコラティエ。
リヨン以外に店舗を持たず、かたくなに味を守っている。
ここの”ガトー・デュ・プレジダン”は、チョコレートケーキの上に花のように薄く襞のふわりとよったチョコレートでデコレーションしてある。
ケーキの中には、チェリージャムを挟み、味のアクセント。
なお、チョコレートの花を除けてから食べるのだそうだ。
チョコレートの花は、ほろりと口に中でとろける儚さを、ぜひ味わってみたい。

さて、リヨンは、芸術にも力を注ぐ街であることを挙げよう。
旧市街は、歴史地区として世界遺産に登録されるほど、古い街並みが残っている。
なかには、500年以上前の建物があり、歴史が堆積しているのだ。
古代ローマの円形劇場の状態もよく、生きている史跡として今なおコンサート会場などに利用されている。

また、この街の建物の壁には、”だまし絵(トロンプルイユ)”が、数多く描かれている。
どうやら、街と地元企業がアーティスト支援の一環として、描かせているらしいのだ。
川沿いの遊歩道などで開かれる、日曜日午前中のマルシェには、アーティスト達が作品を持ち寄る即売会がある。
他に、地元デザイナーが多く出店する、クリエイター村などもあって、街全体で芸術を育てようとする意思が見える。

もちろん、天国、楽園、桃源郷ではないのだから、いいことずくめではない。
最近では、銃乱射などの物騒な話、イスラム原理主義や反ユダヤ主義など、負の面も多い。
しかし、受け継がれている文化への情熱が、街に溢れているように見受けられ、強く惹き付けられる。

オランジーナを片手に散歩をし、芸術の妖精と語り合いながら、創作に打ち込めたなら、どれほど幸せだろう・・・
リヨンの映像を見るたびに、こんな夢想に浸ってしまうのだった。