rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

掃き清めた庭に舞い散る落ち葉、菱田春草「落葉」

2013-12-04 22:17:31 | アート

菱田春草 落葉

どっさりと積もるように落ちている庭の落ち葉を掃き集め、畑で豪快な焚き火をした。
人の足によって踏み固められた土の、掃き清めたあとの庭は、こざっぱりとして気持ちがよい。
きれいになった庭を満足気に眺めていると、北よりの風がざあっと吹いて、きれいに色づき始めたカエデの葉をはらはらと地面に落とす。
すると、黒褐色の地面に黄色や赤のカエデの葉が、モザイクのように散らばっていく。
ちょっと場所を移動して、家人のアトリエのすぐ横に大きなブナの木があるが、黄朽葉色のブナの葉も、先ほどの風で舞い落ちて、クチナシや椿、南天の周りにかさこそ散っているのも、また趣がある。
毎年繰り返される秋の光景に出会うたびに、菱田春草の「落葉」が思い起こされる。
地面から立ち上がる木の幹、点在する落ち葉、ありふれた風景だけれど、人を感傷的にする詩情を湛えている。
春草の絵には、これ見よがしの押し付けがましい野心が感じられない。
それは穏やかにひっそりと、でも確かに存在する。
彼の絵がもつ独特の存在感だ。
春草の生きた歳をはるかに越えてしまっている私だが、自分の表現するものも、そのような空気感を纏いたいと願っている。