東方三博士の礼拝
The Coronation of the Virgin
Adoration of the Magi
15世紀のイタリアで活躍した国際ゴシック様式を代表する画家、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ。
北方の細密な画風の影響を強く受け、イタリアの優美さを黄金背景テンペラで表現した。
”東方三博士の礼拝”は、フィレンツェのウフィッツ美術館に収蔵されている。
30年近く前訪れたとき、くしくもクリスマス時期のフィレンツェで、 サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の前にあるサン・ジョヴァンニ礼拝堂のあたりに赤い装束を身に纏って松明か蝋燭をもった隊列が、凍てつく夜に印象的だった。
まだ薄暗い朝、イタリアの美術館の短い開館時間を無駄にしまいと、石畳の道をウフィッツに向かって歩く。
美術館の入り口から程遠くないところに、ファブリアーノのその絵はあった。
きつくない照明に浮かび上がる、金で見事に装飾されたその絵は、ルネッサンス以前の中世の雰囲気を多くとどめる。
どこもここも緻密にびっしりと描き込まれてはいるが、息が詰まるというものではない。
中央の遠景に向かってジグザグに人々が描かれて、閉塞感を救っているからか。
その見事さにいつまでも見とれていたいけれど、ウフィッツの膨大な名画コレクションを思うと、そこで立ち止まるわけにもいかない。
名残り惜しみながら、先に進んだのを覚えている。
思い出を楽しむのは、年の瀬だからか。
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ、私の人生にしっかりと食い込んでいる画家の一人である。