大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・186『スカイプで部活はできません』

2021-01-14 13:58:41 | ノベル

・186

『スカイプで部活はできません』さくら   

 

 

 せり なずな ごぎょう はこべら すずな すずしろ……

 

 ここまで言うて、銀之助は詰まってしまう。

『えと……』

 モニターの前で腕組みして、いけずなわたしはニヤニヤと笑う。

『もう一回!』

「はい、どうぞどうぞ」

『せり なずな ごぎょう はこべら すずな すずしろ……』

 やっぱり詰まる。

「ブッブー、時間切れ。まあ、緊急事態宣言も出てんねんさかい、家でおとなしいしてなさい」

『せんぱ~い(´;ω;`)ウゥゥ』

 あたしは、無慈悲にスカイプをオフにして、すっかり冷めた紅茶を飲み干す。

 

 銀之助て憶えてますか?

 

 うちら文芸部のニューフェイス。

 せやけど、入部したのは三カ月も続いたコロナ休校のあとで、ろくに部活もでけへんうちに、今度のコロナの二次ピーク。

 文芸部というのは三密が前提の部活やさかいねえ。

 いや、世間の文芸部は知らんけどね。うちらの文芸部は、リアルに顔つき合わせならでけへんのです。

 そもそも、うちの文芸部は聖真理愛女学院に進学した頼子さんが作った部活で、文芸の研究をするというよりは、文芸を言い訳にマッタリとお茶してる部活なんです。

 せやさかい、会社のテレワークみたいにスカイプなんかでは意味ないんですわ。

 それでも部活をやりたいという銀之助に「ほんなら、春の七草全部言えたら考えたるわ」と言うと、うちの後ろでお茶してる詩(ことは)ちゃんは「さくらも、いけずだ」とニヤニヤ。

「せやけど『ほとけのざ』を抜かすのんは許されへんでしょ、お寺の座敷使うて部活やってんのに」

「ハハ、ま、それはそうだけどね……う、お茶飲み過ぎた……」

 プルっと身震いすると詩ちゃんはトイレに立っていった。

 

 ムニャー(=^・^=)

 

 見かけの割にはかいらしい鳴き声でダミアがお布団から出てくる。

 ダミアも一歳半。首の鈴も、いつの間にか体格相応の大きさになった。体重は、すでに5キロ。

 もう、子ネコのころの面影はありません。

 鸞ちゃんが引き取った子ネコが、ちょっと羨ましくなる。

 ニャウ!?

 心が読めたんか、マジな顔して睨まれる。

 さて、お風呂に入って寝よか。

 思って立ち上がると、キンコンキンコンと着メロがして、ツケッパにしてた画面に留美ちゃんが現れた。

 だらしなく出てしもたシャツをスェットに押し込みながら、出たばっかりのコタツに戻る。

「あ、留美ちゃん(^_^;)」

『どうしよう、さくらちゃん……』

 モニターの画面でもはっきりわかるほど留美ちゃんの顔色が悪い。

「どないしたん、なんかあったん?」

『お母さんが……お母さんが……コロナに罹っちゃったああ』

「え、ええ!?」

 息すんのん忘れそうになった……。

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誤訳日本の神話・1『天地のはじめ(アメツチノハジメ)』

2021-01-14 12:04:12 | 評論

日本の神話・1
『天地のはじめ(アメツチノハジメ)』 
 

※ 始まりにあたって

 わたしは、かつて日本史の教師でした。

 わたしが生徒であったころは、日本史の教師はずっと日本史で、古いノート一冊あれば事足りました。気楽な商売でした。一年生の担任になっても日本史とか世界史が自分の持ち教科であれば、一年の地理などは持たずに、二三年生の授業だけを持っていて、自分のクラスにはホームルーム以外は顔を見せない、どうかするとホームルームも生徒任せで、月に数回しかクラスに顔を見せない先生もおられました。
 自分が教師になると大違い。たいてい、複数の小教科を兼ね、ノートも、その年その年の教科書に合ったものを作り(教育基本法だったか指導要領だったかに、授業は教科書によらねばならないとあります。それ以上に教科書を大切にさせる=授業に教科書を持ってこさせるため)、なんとか授業のカタチと水準を維持していました。
 そのため、自分の専門と思っていた日本史は手薄なものでした。

 それで、この歳になって、ちょっと振り返ってみようと思い立ちました。

 振り返ってみるにあたっては、記紀神話から始めようかと思います。

 地震などの災害で避難した時に、日本人の行儀の良さは有名です。戦後の学校教育の成果……いえ、もっと昔、日本書紀には中国に渡った日本人がリーダーの指示に従い、行儀よく並んでいたという記述があります。

『倭』という日本の古名は中国が付けました。背の低いやつらという意味ですが、もう一つの意味は――従順な奴ら――という意味です。集まれと言えば集まり、待っていろと言われれば大人しく、いつまでも待っています。列に並べと指示があれば世話を焼かすこともなく並んで次の指示を待ちます。こういうことを知っていると、日本人や日本の歴史への親近感が違います。明治以降の悪い教育のせいとは思いません。日本と日本人の祖型というか原風景を感じるには良い方法だと思うのです。しかし、一年間三単位~四単位の時間配当で神話は、せいぜい一時間ほどしか割けません。高校生活でたったの一時間、つまり一生で神話に思いを巡らすのは一時間しか持ちようがないのです。
 で、長ったらしい前説を言い訳にして、好き放題に神話を騙って……語ってみようと思った次第であります。

 天地(あめつち)のはじめ


 その昔、世界の一番始めの時、天界で御出現になった神さまは、お名前をアメノミナカヌシの神といいました。
 次の神さまはタカミムスビの神、その次の神さまはカムムスビの神、この三人の神様さまは皆お一人で現れて、すぐに居なくなりました。
 次に国ができたてで水に浮いたサラダオイルのように、またクラゲのようにふわふわ漂つている時に、泥の中から葦が芽を出してくるようなスピードで現れた神さまは、ウマシアシカビヒコヂの神、次にアメノトコタチの神でありました。この神さまがたも皆お一人で御出現になつて、すぐに居なくなってしまいました。
 それから続々と現われ出た神さまは、クニノトコタチの神、トヨクモノの神、ウヒヂニの神、スヒヂニの女神、ツノグヒの神、イクグヒの女神、オホトノヂの神、オホトノベの女神、オモダルの神、アヤカシコネの女神、それからイザナギの神とイザナミの女神とでした。このクニノトコタチの神からイザナミの神までで、神代七代と言います


 最後のイザナミにいたる神さままでは実体がありません。ただ名前が出てくるだけです。

 いろんな面倒くさい解釈がありますが、わたしはハッタリだと思っています。いわばイザナギ・イザナミの出現にモッタイを付けるためのイントロの役割にすぎません。映画や舞台でも、主役がいきなり出てくることはありませんよね。

 このイントロにあたる部分は、たいていの神話や宗教の伝記にはあり、聖書などノアが出てくるまでアダムとイブから何十人も出てきて、箱舟のあとノアの子孫からキリストが出現するまで、長編小説が二冊書けるほどの人物とストーリーがあります。
 まあ、キリスト教はユダヤ教という土壌を持っているせいもありますが、日本の神話は、わずか神代七代に過ぎません。スカートで言えば膝上5センチ程度で、シンデレラほどの長さはありません。まあ、女子高生のスカートほどの軽やかさです。無ければ上着だけのスッポンポンで、どうにもなりませんが、ベルばらのマリーアントワネットほどの仰々しさでもありません。
                        
 寝っ転がってポテチを齧りながら読んでいける軽さでやっていこうと思います。自分のイメージに合わない所は、好き放題に付け加えたり、膨らましたりしようと思います。最後まで行きつけるかどうか分かりませんが、とりあえず、始まりでした。

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妹が憎たらしいのには訳がある・30『里中ミッション・2』

2021-01-14 06:49:16 | 小説3

たらしいのにはがある・30
『里中ミッション・2』
          

   


 ターゲットは帰り道の横断歩道にいた……。

 それまで圧縮されていた情報がいっぺんに解凍された。
 信号機のポールに半身を預けて気障ったらしく(俺の感性では、そう見えた)立っているのは、このところしつこく、ねねちゃんに言い寄って来ている大阪修学院高校の二年生。

――青木拓磨――

 草食を装った肉食男子。

 姿勢が、いつも左右非対称。自分をかっこよく見せる演出以外に、狙った女の子が逃げられない位置を確保するための準備姿勢でもあるらしい。
 大阪市内にいくつもビルを持っている『青木ビル』社長の次男。凡庸な兄を幼稚園のころには追い抜いたと錯覚して『青木ビル』の後継者は自分であると思い込んでいる。
 修学院とフェリペは最寄りの駅がいっしょで、入学早々から拓磨はねねちゃんに目を付けているのだ。
 ねねちゃんは、自分や周囲の人間に危機が迫らない限り、人を拒絶しないようにプログラムされている。
 だから、拒絶しないまま、ここまで来てしまった感があって、拓磨は――ねねはオレのもんだ――と、思いこんでいる。

――こいつを、どうにかしてくれということですね――
――そいつは、今日ねねをモノにしようとしている――
――それって…………――
――ねねは義体だ。肌を接すれば分かってしまう――
――ねねちゃんの生体部分は、人間と変わりません。幸子で慣れてますけど、並の人間じゃ区別つきませんよ――
――ま、万が一ということがあるだろう!――
――フフ、里中さんが、ねねちゃんに愛情もってくれていて、嬉しいですよ――
――これはあくまで!――
――わたしも、こんな奴に……まかしといて……――

 横断歩道のこっち側で気づかないフリをしていたら、歯磨きのCMのように白い歯を見せて手を振ってきた。可愛く戸惑って俯くと、まだ青になりきらない信号を大人ぶった子犬のように渡ってきた。

「なにか考え事してた?」
「ううん、拓磨の印象を思い出してたの」
「嬉しいね、ボクのこと、初めて拓磨て呼んでくれたね」
「ちょっとした気分転換。あの車ね?」
 駅の入り口から百メートルほど離れたところに、後ろ半分スモークガラスになったセダンが止まっていた。
「先に乗っといて。駅の裏側で、オレ乗るから」

 わたしは、車に乗ると、車のAIにリンクした。AIは0.5秒抵抗したが、あっさり従って、ゆっくりと駅の向こう側に走り出す。

 駅の向こう側には『青木13号ビル』が立っていて、小さな花束を持って拓馬が出てくるところで、受付の女性が丁寧に頭を下げているのが見えた。

「あら、ガーベラね」
「うん、持ちながら待ってるのは、ちょっと恥ずかしくてさ。まあ、こんな物でもあれば、車の中も自然な色どりになると思ってね、気に入ったら帰りに持ってってよ(^▽^)」
「素敵、花言葉は……希望、前向き、だったかな」
「そうなんだ、花言葉までは知らなかった」
 うそ、勤務中の受付さんに買わせといたくせに。どんな希望で、何に前向きなんだか……。
「例の場所に……チ、返事なしかよ」
「車も、気を遣ってるのよ」
「そ、そうかな。まあ、アズマの最新型だからな」
 さりげなく拓磨の手が膝に伸びてきた。わたしは偶然を装って、重いカバンを思い切り拓磨の手の上に載せ、可愛く窓の外を見た。
「わあ、阿倍野ハルカスの改修工事始まるんだ!」
「あ、ああ、もう完成から三十年やからな……」
「どうしたの、その手?」
「いや……」
「あ、ごめん。わたしカバン置いたから、下敷きになっっちゃったか……カバンの底の金具が壊れてるんだ(直前に壊しといたんだけど)血が出てる。ちょっと待ってて」

 わたしは、ティッシュで血を拭き、バンドエイドをしてやる。髪の香りが拓磨の鼻を通って高慢で薄っぺらの脳みそを刺激する。車に急ハンドルを切らせた。拓磨が吹っ飛んできて、わたしの体に覆い被さってきた。バンドエイドをしてやったばかりの右手が、わたしの胸を掴んでいる。

「なに、すんのよ、どさくさに紛れて!」
「ご、ごめん、そういうつもりじゃ……」

 機先は制した。そして、谷町四丁目の交差点を曲がって、車は目的地に着いた。

「え、大阪城公園……なんでや?」
「わたしがお願いしたの」
『雰囲気作りを優先しました』
 車のAIが仕込んだとおりの返事をした。
「そ、そうか、さすがアズマの最新型、まずは雰囲気、よう分かってるやんけ(^_^;)」
「まずは……って?」
「いや、アズマの言い間違い。若者は、まず、明るい日差しの下におらんとなあ……!」
 拓磨は健康的に伸びをした。わたしも一応付き合ってやった。

 オレの脳みそと、ねねちゃんのCPが一緒になってのお仕置きが始まった……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     倉持祐介(太一のクラスメート) 加藤先輩(軽音) 優奈(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 高機動車のハナちゃん
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