大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・189『王女旗はためかせ』

2021-01-31 14:16:20 | ノベル

・189

王女旗はためかせヨリコ   

 

 

 お婆さまは危機を感じている。

 まず、コロナでしょ。コロナって中共ウイルスのことなんだけど、バイデンが中共ウイルスっと言ってはいけないという大統領令を出したので使用を控えているのよ。

 べつにヤマセンブルグ公国はアメリカの属国じゃないんだけどね、弱小国はアメリカを立てておかなきゃならないしね。

 コロナの事は、お婆さま自身が高齢者なんで、本人も周囲の人たちも心配。

 なんせ、ヤマセンブルグの跡継ぎは正式には決まっていない。

 理由は簡単。

 わたしが日本国籍を放棄していないから。国王の二重国籍は認められない。お婆さまにもヤマセンブルグの国民にも申し訳ないんだけど、わたしは、まだ母の国の国籍を捨てられない。

 そのかわり、お婆さまの言うことはきちんと聞いている。

 高校に進学するときに専用のガードを付けるのに同意した。正式にはベテランガードのジョン・スミスなんだけど、身長が190もあって、胸の厚さがわたしの肩幅よりも大きいマッチョに付きまとわれるのは願い下げだから、わたしと同い年のソフィアについてもらっている。

 ソフィアは、ヤマセンブルク王家に代々仕えている魔法使いの家系で、わたしをガードすることが人生の全てを掛けた使命だと思っている。この子の使命感は筋金入りで、日本に来ただけじゃなくて、同じ聖真理愛女学院に入学して同じクラスで、部活も、最初は剣道部に入っていたんだけど、わたしが散策部を作ると、剣道部に籍を置いたまま散策部に入ってきた。

 その散策部も、コロナが心配なお婆さまの意向で休部状態。

 年が明けてからは、コロナと警備の問題で、とうとう自宅を領事館に移されてしまった。

 週に一回はPCR検査受けさせられて、そのたびに綿棒を突っ込まれるんで、鼻の奥の粘膜は三年物のスルメみたいに丈夫になったわよ(^_^;)。

 親類のイギリス王室に頼めばワクチン接種もしてもらえるんだけど、お婆さまは自分はワクチン打ってもらったのに、わたしが打つことは許さない。

「なんでよ、ワクチン打ったらお祖母ちゃん(プライベートではお婆さまとは呼ばない)だって安心でしょうが!?」

 画面に怒鳴ったら、こう答えた。

「それについては、ジョン・スミスにお聞きなさい」

「なんで!?」

「ネットは情報を盗まれる恐れがあるからよ。じゃ、お祖母ちゃんは、もう寝る時間だから。ジョン、そこに居るんでしょ? よろしくね」

 そこまで言うと、一方的にクソババアは通話を切った。

「なんで、わたしはワクチン打てないの!?」

 綿棒を持って構えているジョン・スミスを詰問した。

「確率は低いのですが、深刻な副作用の可能性があります」

「副作用なら、クソバ……お婆さまのほうが心配でしょ!?」

「女王陛下は、もうお世継ぎをお産みになることはありませんから」

「え、それって……(#゚Д゚#)!?」

 16歳の純真少女としては、それ以上のツッコミが出来なくなってしまう。

 グニュ!

 油断していると、いつものように綿棒を突っ込まれ、不覚にもクシャミが出てしまう。

 ヘプチ!

 かろうじて、女の子らしいクシャミに留めると、反動でポタポタと涙がこぼれる。

「では、殿下、如来寺に行くことは禁じられていませんので、参りますか?」

 ジョン・スミスが妥協案(たぶん、お婆さまとは示し合わせてるんだろうけど)。

 そこへ、前回に出ていたさくらからの電話があったというわけ。

 あの角を曲がれば、ちょっと久しぶりの如来寺。

 着く前に車のノーズに掛けた小旗を引っ込めてくれないかしら。

 わたしだって恥ずかしいわよ、いちいち王家の王女旗をはためかせられるのは!

 

 

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かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』

2021-01-31 08:54:46 | 小説5

かの世界この世界:168

『ほとんど元の世界』語り手:テル(光子)    

 

 

 学校の中を一通りまわった。

 冴子が他人になってしまった以外は何も変わっていないように感じた。

 クラスの友だちは普通に話しかけてくれるし、席に戻って五時間目の教科書を出すと、表紙の隅に憶えのあるシミがちゃんとついている。

 黒板に目を向けると、今日は日直だ。

 そうだ、日直だった。

 日直の最大の仕事は黒板を消すことだ。

 改めて確認すると、四時間目の板書はきれいに消してある。

 相棒の戸倉さんがやってくれたんだ。

「ごめん、戸倉さん、ボーっとしてて日直忘れてた(^_^;)」

「いいわよ、寺井さん考え事してたみたいだったし」

「え、あ、ちょっとね」

「よかったら、学級日誌とってきてくれる? ちょっと担任には会いにくくって」

 そう言うと、戸倉さんは手元のプリントに視線を落とす。

 プリントは進路希望調査だ。文系・理系・就職・その他の四択の欄は白紙のまんま。提出期限は二日前。

「任しといて」

「ありがと(^▽^)」

 事情を察して職員室に向かう。

 うちの学校は規模の割に職員室が狭い。半分くらいの先生が担任をやっていても準備室などに籠っている。連携の悪い学校だと思うんだけど、それで回っているんだから、まあいい。そんな中でもうちの担任は朝から職員室に居る。ちゃんとした先生なんだ。でも、戸倉さんは、そういうのが苦手なんだ。

「おう、寺井、ちょっと」

 日誌をとって「失礼しました」を言おうとしたら担任に呼び止められる。

「はい、なんでしょうか?」

「進路希望なんだけど」

「はい」

「その他はいいんだけど、異世界・勇者というのはなんだ?」

「え……あ……(;゚Д゚)」

「なにかのナゾか?」

「あ、ラノベとか読んでたんで、ちょっとボーっとしていて……書き直します!」

 ふんだくるようにして教室に戻り、戸倉さんに「わたし書いとくから」と学級日誌を示すと中庭に向かった。

 ここは、ほとんど元の世界だ。冴子が他人だと言うことを除いて、とても穏やかな感じ。この分だと、ヤックンともうまくいってるような気がする。ヤックンと言う名前を思い浮かべても、穏やかに温もって、胸を刺すような痛みが無いもの。

 いっそ、ここに留まれば……という気持ちもしないではないけど、わたしは中庭を素通りして部室に向かった。

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

 

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・18『姫を櫛に変えて(#´ω`*#)』

2021-01-31 06:45:55 | 評論

訳日本の神話・18
『姫を櫛に変えて(#´ω`*#)    

 

 大宜都比売(オオゲツヒメ)をブチ殺した後のスサノオは様子が変わります。

 それまでの乱暴者は影を潜めて、普通のヒーローになっていきます。

 普通と書いたのは個人的な趣味です。読んでいる限りでは高天原までのスサノオの方が断然面白いと思います。

 スサノオは、出雲の国のトリカミという所にやってきます。何気に川に目をやると上流から箸が流れてきます。

「……箸が流れてくるということは、この上流に人が住んでいるんだなあ(^▽^)/」

 人恋しいスサノオは、エッチラオッチラ川に沿って歩いて行きます。

 

 一軒の家から爺さん婆さんの泣き声が聞こえてきました。

 

 年寄りが泣いているのを見過ごせるスサノオではありません。キャラ変してしまったようですが先に進みます。

「通りがかりのもんだけど、年寄り二人が泣いているのはただ事じゃないぜ、いったいどうした……」

 そこまで言って、言葉が止まってしまうスサノオ。

「か、かわいい……(#´ω`*#)」

 えと、婆さんを見て「かわいい」のではないのです。

 爺さん婆さんに挟まれて美少女が悄然と俯いているのです。

「なにから申し上げましょう……わたしは手摩霊(テナヅチ)、婆さんの方を足摩霊(アシナヅチ)と申します。で、これは、わたしどもの娘で櫛稲田(クシナダ)姫と申します」

 テナヅチというのは手で撫でる。アシナヅチは足で撫でるという意味で、要は撫でまくりたいほどに娘を可愛がっているという意味になります。

「それが、どうして泣いてるんだい?」

「はい、ここいらには八岐大蛇(やまたのおろち)という頭が八つもある蛇の化け物がおります。その八岐大蛇が毎年かわいい女の子を一人生贄に寄越せと申します。生贄を渡さなければオロチは大暴れをして、住民みんなを困らせます」

「チョ-我儘なヘビ野郎だな!」

 高天原でのことは棚に上げて老夫婦を慰めます。スサノオというのはなかなかの神経をしております。

 でも、キャラ変したのだから仕方ありません。

「八人の娘がおりましたが、毎年生贄に取られてしまって、とうとう、このクシナダ一人になってしまいました」

「そうだったのか……いや、お二人が涙にくれるのももっともだぜ……よし、では、このオレ様がオロチから護ってやろうではないか」

「ほんとうでございますか!?」

「そ、そうおっしゃるあなた様は?」

「あ、スサノオって言うんだ。よろしくな」

 高天原の事には触れてほしくないので、名前だけをサラッと言います。

「ス、スサノオノミコトと言えばイザナギ・イザナミのご子息で、高天原をしろしめす天照大神さまの弟君ではありませんか!?」

「ドッヒャー! チョーセレブなお坊ちゃんではないですか! サインもらわなきゃ!」

「握手じゃ! 写メじゃ!」

 三人並んで写メをとります。

「えーーあのーーちょっと違うんじゃ……」

 クシナダが遠慮気味に言います。

「そーだそ-だ、いっそクシナダを嫁に差し上げます!」

「え、オレの嫁? いいの、嫁さんにもらっちゃって!?」

「はい、助けていただけるんなら、いえ、助ける力のあることに疑いは有りません。どーぞ、もらってやってくださいまし~!」

「そ、そーか、そーか、そーであるか、ならば、無くしちゃいけないから、こうしよう!」

 スサノオが指を一振りするとクシナダは小振りな櫛になってしまいます。そして、その櫛を髪に差しますととっておきの作戦を披露するのでありました。

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・47『優奈と幸子の二転三転』

2021-01-31 06:30:16 | 小説3

たらしいのにはがある・47
『優奈と幸子の二転三転』
         

 


      

 そこにはねねちゃんが立っていた……。

「これ、警察病院からもらってきたの。亡くなる前にママが、一時的に元気になった時の薬剤」
「これは……」
 そうだ、里中ミッション・4でねねちゃんの義体にインストールされた俺が里中リサを看取った時のものだ。まだ残っていたんだ。
「優奈ちゃんにも効くわ、元々は、戦闘中に負傷した者を一時的に健常にもどし、あとで治療するためのものだから」
「じゃ、優奈ちゃん出場できるのね!」
 みんなが喜んだ。幸子も喜んだが、仕様書を読んで顔が曇った。
「心臓に負担が……15%の確率で効かないこともあるのね」
「……ええ、それに状態によっては、完全に戻らないこともあるわ。使うかどうかは、あなた達次第。じゃ、明日は会場で見てるわ。チサちゃんも来るんでしょ?」
「うん、えと……D列の35番。みんなそのへんよ」
「わたしも、そのあたり確保しとくわ」
「でも、予約いっぱいよ」
――甲殻機動隊に不可能はないの(^▽^)――
 高機動車のハナちゃんが、車体をガシャガシャ揺すって笑った。

「優奈ちゃんも飲む?」

 開演前、みんなで特製のジンジャエールをまわした。よく冷えていて、喉がスッキリする。
 みんなのスッキリ顔を見て、自分も飲みたくなったのであろう、優奈は進んで手を出した。
「ぼんど、ズッギリじまず……」
「酷い声だなあ」
「あい、おどなじぐ、ごごで見でまず( ;∀;)」
「じゃ、わたしリハーサル室行ってるね。またあとで見に来るからね」
 幸子と俺はリハーサル室へ向かった。

 そして蟹江先生と加藤先輩には、ジンジャエールに薬を混ぜて優奈に飲ませたことを伝えた。二人とも驚いていたが、喜んでくれた。
「いっしょに苦労したんや、優奈が歌うのがベストやで!」
 珍しく加藤先輩が目を潤ませた。

 午前中の会場は、まだいくらか空席があったが、午後には強豪校の出場が目白押しなるので、満席になった。

「……声が出る!」


 午前中最後の茶屋町高校の曲は、優奈の好きな曲だったので、口パクでナゾって、気づいたら自然に歌えたのである。
「優奈ちゃん、リハーサル室へ行って!」
 チサちゃんが促す。ちょうど様子を見に来た俺といっしょになったので、足を弾ませてリハーサル室に向かった。
「なんで、そんなに楽しそうなの?」
 出られることを知らない優奈には、俺は本番を前にハイテンションになったバカにしか見えなかっただろう。え、いつもバカみたいだから目立たなかっただろうって……はい、そのとおり(o^―^o)!

 いよいよ、俺たち真田山高校の出番が回ってきた。

――さて、急遽予定を変更。ボーカルは、山下優奈さん回復して、もとの編成に戻り、真田山高校は審査対象になります――
 幸子の出演を楽しみにしていたファンの中からはブーイングも起こったが、概ね会場の反応は暖かかった。
――なお、終演後ファンのみなさんのため、佐伯幸子の30分ミニライブをおこないま~す!!――
 会場は、どよめきにつつまれ、あとのアナウンスは、ろくに聞こえなかった。

 そして、これが大きな悲劇を生むことになるとは、誰も気づかなかった……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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