大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・053『今度のウズメは三人乗り』

2021-01-24 09:50:50 | ボクの妹

・053

『今度のウズメは三人乗り』   

 

 

 ウズメにそっくり。

 

 でも、比較にならないほど大きい!

 わたしが乗っているウズメが三階建てくらいだとすると、目の前に横たわっているソックリは十階建てぐらいはある。

「なんで、こんなに大きいの?」

 素朴な質問をすると、ナユタがあとを続ける。

「って、ゆーか、なんでマンションの下に、こんなのがあるの?」

「職住近接というやつですか(^_^;)」

 中原さんが締めくくる。さすがは現役っていうか、本物少尉。

「今度のウズメは三人で操作するんです(^▽^)/」

 徳川曹長が、新型ワンボックスカーを納車しにきた自動車販売会社の営業のようなことを言う。

 

 床下からの振動と騒音がひどいので「いったいなんなのよ!?」とみなみ大尉がヒスを起こし、金剛少佐が「しかたない、飯の前に見ておくか」と、みんなをクローゼットに入るように指示して「あ、エレベーターになってるんだ!」と感動したのは、ほんのつかの間で、十秒後には、マンション地下のハンガー(格納庫)に来ているってわけ。

 横たわったウズメは、ほとんど完成しているところもあれば、手首や膝とかは欠損というか、まだ取り付けられていなくて、大きいだけに、進捗状況が部分によってひどく差があるように思える。

「作りながら更新してる様子だな」

 金剛少佐がニヤニヤ、このオッサンのニヤニヤは、みなみ大尉ほどじゃないけど、ちょっとムカつく。

「搭乗するのは背中からです。胸部にコクピットがあります」

「「「う~ん」」」

 三人そろって唸る。

 十階建ての大きさとは言え、それは全長のことで、コクピットの胸部は外径で三メートルあまり。装甲やコクピット内のコンソールや機器の容積を考えると、シート部分は一メートルちょっと。三人が乗り組むには、ちょっと狭くはないかなあ……。

「大丈夫ですよ、搭乗すると睡眠状態になって、三人の思念を融合させてオペレートすることになります。手足を動かしての操作は、どうしてもタイムロスが出るし、体を動かせば疲労するのも早いですからね。そういうところを考えた、次世代機であるわけです」

 エンジニアらしく、徳川曹長はとくとくと解説する。

 少佐とみなみ大尉は、ウズメ以外にも各部のチェックをしたいと言うので、わたしたちは姉妹(?)三人で部屋に戻ることにする。

「こっちから行きましょ」

「中原さん?」

「ここに来るには、他のルートもあるみたい。確認しながら行きましょ。それから、わたしのことは姉さんとか呼んでください、そういう設定ですから」

 さすがは現役軍人、わりきりが早い。

 別ルートでマンションの一階に出て廊下を歩いて本来のエレベーターに向かう。

 途中、数人の住人に出くわす。みんな、旧知の間柄みたいに「こんにちは」とか「あら、金剛さんちのお嬢さん」とか挨拶してくれる。

 ちょっと不思議。

「あれだけの騒音があるのに、みなさん普通なんだ……」

「住人は全員が改アクト地雷のロボットね。いざという時には我々をガードするセキュリティーになんだと思う」

 え、えええ……

 ちょっと、言葉が出てこなかった。

 

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誤訳怪訳日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』

2021-01-24 06:42:29 | 評論

訳日本の神話・11
『イザナギの三神・アマテラス』
  


 三人姉弟の長女であるアマテラス=天照大神(あまてらすおおみかみ)は、伊勢神宮の神さまであります。   

 伊勢神宮というのは、日本の神社の総元締めで、アマテラスは皇室のご先祖であり、事あるごとに天皇や皇室の方々が参拝されています。
 庶民の間でも伊勢神宮と言うのは「一番偉い神さま」であると同時に、もっとも親しみのある神社で、内宮外宮を含め125社の宮社すべてを含めたもので、正式には『神宮』であります。

 銀座に似ていますね。銀座は単に地名であるだけではなく銀座通りにある商業施設と文化の総称で、単に『銀座』と言えば東京の銀座で、それ以外の(銀座にあやかった)銀座は、わたしの街の高安銀座のように、地名が頭に付きます。

 江戸時代、庶民が旅行する場合には名主や町年寄が発行してくれる通行手形が必要でした。時代劇で関所で「へえ、これでござります」と、関所役人に差し出しチェックしてもらうのが通行手形であります。海外旅行において通関でパスポートを提示するのと同じことですね。パスポートが無いと出入国管理法違反ということで身柄を拘束され、最悪の場合スパイ容疑などをかけられ死刑になることもあります。
 このパスポート無しで、外国に行ける場合があります。
 難民などになって外国に亡命する場合です。亡命には程度の差はありますが、厳しい審査があります。ちなみに日本が受け入れている亡命は、年間で二桁にはなりません。
 そのくらいパスポートと言うのは大変なものなのですね。

 それと同じくらいに通行手形と言うものも大変なものでした。

 ところが、例外的に通行手形無しで庶民が旅に出る手段がありました。

 お蔭参り(抜け参りともいう)であります。

 ある日、空から伊勢神宮のお札が降ってきます(もちろん誰かが蒔いたか作ったりかしたもの)、そのお札を持っていれば、その場から伊勢参りにでかけていいのです。
「お蔭でね スルリトね ぬけたとさ(^^♪」
 などと囃しながら伊勢を目指します。お蔭参りする者は道中、沿道の人たちから無料で食事や宿泊の世話がうけられます。
 天下御免のお蔭参りであったわけですね。
 めったにお蔭参りは起こりませんが、幕末に大流行して治安悪化の原因になり、江戸幕府崩壊の原因の一つになりました。

 なにが言いたいかというと、ことほど左様に伊勢神宮はエライ! ということであります。

 ご祭神のアマテラスはとびきり偉い神さまであるということを頭においてほしいのであります。そして、この偉い神さまの末裔が高天原から日向国(宮崎県)は高千穂の峰に降り立ち東に進んで大和朝廷を作ったということになっております。
 これが神武東征神話になっていくわけですが、そこは後ほど展開ということにいたします。

 アマテラスは、二千年の日本の歴史の中でのスーパースターであるというイメージを持っていただければ、理解が早いように思います。

 わたしの理解が正しければ、日本の最高神なのですが、女性であるのがいいですね。生まれた時から成熟した美女です。わたしの最初のアマテラスのイメージは絵本に載っていた姿でした。八百万の神さまを従えて雲の上に仏像のように立っています。表情が硬いので、ちょっと近寄りがたい印象だったのですが、後に『わんぱく王子のオロチ退治』という映画アニメを観て親近感が湧きました。美女なのですが、ちゃんと声を出して喜怒哀楽もあるのです。高天原のあれこれに気を配っていて、なんだか女性社長という雰囲気でもあります。あんなに気を配っていては大変だろうと思っていたら、『いなり、こんこん、恋いろは』に出てくるアマテラスは中小企業の女社長みたいな、ちょっとメタボなオバサンで、いろいろ経営とかの気苦労していたら、こうなるだろうなという姿で、妙に納得しました。

 次回は、三兄妹の末っ子であるスサノオに迫ってみたいと思います。

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』

2021-01-24 06:11:28 | 小説3

たらしいのにはがある・40
『Departure(逸脱)・1』
          


    

 


 病室に入ると圧縮された十数年の時間が解凍され、インストールしているような間が空いた。

 ……………

 そして、ようやく言葉が出た。


「ねね……?」
「……ママ」

「ねねなのね……?」
「うん、ねねだよ……本当にママなんだ!」
「こっちに来て、顔をよく見せて……」
 わたしは(俺の感覚はほとんど眠ってしまって、ねねちゃんそのものになっている)ベッドに近づき、ママが両手で顔を挟み、記憶をなぞるように、そして、それを慈しむように撫でるのに任せた。髪がクシャクシャになることさえ懐かしかった。ママは仕事にいく前に、いつもこんな風だった。
「意外と、胸が大きい」
「もう十六歳だよ」
「もう大人だね……」
 ママは、ベッドに横になったまま、わたしを抱きしめた。
「ちょっと苦しいよ、ママ」
「ごめん。ねねのことは……もう死んだと思っていた」
「わたしも、ママは死んだと思っていた」
「パパは、ねねのこと何も話してくれないもんだから」
「わたしにも話してくれなかった……さっき、この病院に行くように言われて、ひょっとしたらって気はしてたんだけど。パパの話って、いつも裏があって、ガックリしてばかり、こうやってママを見るまで……見るまでは……」

 あとは、言葉にはならなかった。

「昨日までは滅菌のICUにいたのよ。それが、今朝になって普通の病室。最終現状回復までしてくれた」
「最終……」
「最終原状回復。LLD……もう手の施しようのない末期患者に、治療を中断するかわりに、健康だった時の状態で終末を迎えさせてくれる。そういう処置。ママの場合、状態がひどいんで、立って歩くことはできないけど、こうやって、昔の姿を取り戻すことができた。甲殻機動隊の鬼中尉も、最後は女扱いしてくれたみたいね」
「ママは、もう少佐だよ」
「そんなお情けの特進なんか意味無いわ。わたしは、いつも現場にいたときのままの中尉よ」
「うん、なんかママらしい」
「カーテンを開けてくれる。せめてガラス越しでも、お日さまを浴びたいの」
「はい」

 わたしは部屋中のカーテンを開けた。

 ママは一瞬眩しそうな顔をしたけど、すぐに嬉しそうな顔になった。本当はいけないんだけど、窓を少し開けて外の空気を入れた。

「ありがとう……懐かしいわね、この雑菌だらけの空気」
「雑菌だなんて失礼よ。常在菌と言ってあげなきゃ」
「ハハ、そうだよね。ごめんね常在菌諸君。ねね、フェリペに入ったんだね」
「あ、フェリペって、ママ嫌いだったんだよね」
「ママ、一カ月で退学になったからね。でも、懐かしい、その制服。ねね、よく似合ってるよ」
 開けた窓から、初夏の風が流れ込んできた。それを敏感に感じ取って、ママは深呼吸をした。つぶった目から涙が一筋流れた。
「ママ……」
「ねねも義体なんだね……」
 ギクリとした。太一さんの心が邪魔をして、うまく表情をつくれない……どうしよう。
「お日さまに晒すと、義体の目は反射率が生体とは異なるの……ここに来て……」
 ママは、ベッドの側にわたしを呼んで、首筋に手を当てた。やばい、全てを読まれる……。
「かわいそうに、人質にとられたのね。パパは、それでも屈しなかった……で、ねねほとんど……」

 そう、パパの戦闘指揮に手を焼いたK国の秘密部隊が、わたしを人質に取った。情報は、ハニートラップにかかった政府の要人から筒抜けだった。

 パパは、わたしの脳の断片から、わたしの記憶や個性を情報として保存し、向こうの世界が提供してくれた義体に移し替えた。わたしをグノーシスのプラットホームにすることを条件に。
「義体だって卑下することはないのよ。ねねの感受性や個性は、ちゃんと生きて成長しているもの。あなたは、わたしのねねよ」
「ママ……」
 涙で滲むママが続けた。
「ほんとうは、ねねのこと生むはずじゃなかった」
「え……」
「こんな仕事していると、家庭や子どもは足かせになるだけ。でも、政府が勧めたの、極東世界の安定を印象づけるためにも、最前線の兵士も家庭を持つべきだって。で、バディーだったパパと結婚して、ねねが生まれたの。政府のプロパガンダに乗せられただけだけど、後悔はしていない。こうやってここに、ねねがいるんだもん」
「ママ……」
「でも、辛い思いばかりさせて、ごめんね。ママは、ねねのこと大好き……だ…………」

「ママ……………」
「……………………」

 ママがフリーズした。

 LLDの特徴だ。死の直前まで、元気な姿でいられるけど、その死は前触れもなく、あっと言う間にやってくる。フリーズしたら一秒で命の灯が消える。
 わたしは、その一秒で、ママの情報をコピーし、あとはずっとママを抱きしめていた。十数年ぶりで会ったのに、あまりにあっけないお別れだったから。

 パパに、すぐに来て欲しいとDMを送った。東海地方の亜空間のほころびが大きくなって、その手当のために行けないという返事が返ってきた。

 わたしは、Departureすることを決意した……。
 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) ねねの母 高機動車のハナちゃん
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