大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・4・『わざわざ法律』

2021-01-03 08:03:08 | エッセー

 エッセーノベル    

4・『わざわざ法律』   

 

 

 お祖父ちゃんは「食べれない」という言い方を嫌います。

 

 子どもの好き嫌いを戒めての事ではありません。

「栞(しおり)、ちゃんと『食べられない』と言いなさい」と注意されるのです。

 そうなんです『ら抜き言葉』を注意するのです。

「たかが二三十年の言葉の流行りで日本語を崩しちゃいけないよ」

 そう注意されて――ほんとかなあ――と思って、昔の小説を引っ張り出します。

 なるほど、小松左京も野坂昭如も佐藤藍子も瀬戸内寂聴も司馬遼太郎も、ちゃんと『ら入り言葉』です。

 いっしょにテレビを見ながらホカ弁を食べていて『そのパセリはプラスチックだから食べれないよ』と注意したら、お茶目なお祖父ちゃんは、ズイっとラー油を押し出しました(^_^;)。

 わたしが生まれる前は、学校では日の丸も君が代もNGだったとは知りませんでした。

 わたしの世代は、保育所にだって日の丸ありましたからね。

 学校の門の前には学校の看板があるのと同じくらいの常識で日の丸は翻っていましたし。

 そういう当たり前のことを復活させるって大変なことだと思うんです。国や教育委員会が「ああしろ」「こうしろ」と言って変わるもんじゃないと思うんですよ。

 上から言って一発で変わるのは独裁国家です。

 お祖父ちゃんに言わせると四十年ほどかけてまともにしたんだそうです。

 職員会議で日の丸に賛成すると「法律には書かれていない!」と反対意見を言う先生がいたそうです。しかたなく政府が国旗国歌法(合ってたっけ?)を成立させると「法律で強制するのはけしからん!」と反発されるとか。わたしの知る限りでも国旗国歌法に反対する広範な国民運動が起こったことは確認できませんでした。

 国によっては国旗・国歌の扱いを口やかましく法律にしてあるところもありますが、日本は「日の丸を国旗とし君が代を国歌とする」的なことしか書かれていません。

「それは、国旗国歌については日本が長年慣習法でやってきたからだよ」とお祖父ちゃんは言います。

 慣習法と言うのは、当たり前の事なので、わざわざ法律にはしないということらしいです。商業の慣習とかがそうらしいんですけどね。

 日本の言葉は日本語だというくらい当たり前の事なんで、わざわざ成文法にはしなかったということなんだそうです。

 お祖父ちゃんのように、そういうことを主張してきたからこそ、いまの当たり前があるんだと思います。

 そういうことを地道に主張してきたお祖父ちゃんは偉いと思います。

 ちなみに、うちの家は日の丸は揚げません。

 ちょっと矛盾みたいですけど、まだまだ一般家庭で旗日に日の丸を揚げるところまではいっていません。

 お祖父ちゃんは、わたしのことを気遣ってくれているんです。

「おお、栞んちは日の丸挙げてんだ」と、場合によってはネトウヨを見るような目で見られたりします。そういうリスクをわたしには持たせたくないので気を使ってくれているんです。

 

http://wwc:sumire:shiori○○//do.com

 

 Sのドクロブログ!  

 あら、今度もアクセスしてくれたのね(o^―^o)

 お祖父ちゃんて、友だちが居ないのよ。

 分かるでしょ、団塊の世代なのにさ、日の丸君が代に反対だなんて、そりゃあ世間狭くなるわよ。

 一介の平教師が反対したってさ、世の中変わるもんじゃないっしょ。

 それをヒーローぶってさ、学校の会議でわざわざ手ぇ挙げて主張する!?

 友だち失くすって!

 んなことしたって、退職金増えるわけじゃないし仕事が減るわけでもないっしょ?

 ちょっと考えりゃ分かるじゃん。

 まあ、ソフトは家……アハハ、おっもしろい。

 変換ミスって面白いよね。

「祖父とは云え」と打ったら「ソフトは家」だもんね。

 家はソフトじゃねえっちゅうの!

 気づいた人もいると思うんだけど、あたしはクソジジイと二人暮らし。

 あたしも哺乳類だから生物としての両親は居るよ。

 でも、親とはいっしょに暮らしてはいない。

 なんでかは、まだ言いたくない。ま、いろいろ想像して楽しんでよ。

 ブログに晒すんだから、そのくらいにオモチャにされることは覚悟してるわよ。

 あ、名前ばらしちゃったよね(^_^;)

 Sのドクロブログなんて看板なのにね、あたしもアホだ。

 そう『栞』ってのがあたしの戸籍名。

 あんた『栞』って、一発で読めた?

 中二の時、新任の先生が出欠点呼してて、あたしのとこで詰まっちゃった。

 大学出てんのに『栞』読めねえんだよ。生徒には初見で読めねえやつってけっこういたからさ。ま、いいんだけどぉ。

「えと、しおりって読みます。『耳をすませば』って宮崎アニメの主人公の名前なんです(#´ω`#)」

 ブリッコで注釈したらさ、いたく感動されて、その先生の前ではブリッコ通さなきゃならなくなって困った。じっさい、通したしぃ。

 夢壊されるのって嫌いだから、人の夢も壊さないようにしてんの。

 ら抜き言葉とかもTPO考えて使い分けてるよ。時々ほかのクソジジイやクソババアに感動される。

 まあ、ポッと頬染めて、ますますブリッコに磨きがかかる。

 どーでもいい話なんだけどさ。

 三分とか四分とか、どう発音する?

 ああ、これ、宿題。こんど聞かせてよ。

 じゃね。

    by Shiori (^▽^)/

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・19『ニホンの桜』

2021-01-03 05:49:25 | 小説3

たらしいのにはがある・19
『ニホンの桜』
          

 

  


「すごい、テレビの取材まで来てる!」

 連休前の大阪城公園の取材に来て、たまたま見つけたんだろう。「ナニワTV」の腕章を付けた取材チームが熱心にカメラを向けている。
「AKRやってぇや!」
 オーディエンスから声がかかる。
「リクエストありがとうございます! それではAKR47の小野寺潤で『ニホンの桜』」
 そう言ってイントロを弾き出すと、身のこなしや表情までも小野寺潤そっくりになっていった。

 《ニホンの桜》
 
 春色の空の下 ぼくたちが植えた桜 二本の桜
 ぼく達の卒業記念
 ぼく達は 涙こらえて植えたんだ その日が最後の日だったから 
 ぼく達の そして思い出が丘の学校の

  あれから 幾つの季節がめぐったことだろう
 
 どれだけ くじけそうになっただろう
 どれだけ 涙を流しただろう 
 
 ぼくがくじけそうになったとき キミが押してくれたぼくの背中
 キミが泣きだしそうになったとき ぎこちなく出したぼくの右手
 キミはつかんだ 遠慮がちに まるで寄り添う二本の桜

 それから何年たっただろう
 訪れた学校は 生徒のいない校舎は抜け殻のよう 校庭は一面の草原のよう 
 それはぼく達が積み重ねた年月のローテーション
 
 校庭の隅 二本の桜は寄り添い支え合い 友情の奇跡 愛の証(あかし)
 二本の桜は 互いにい抱き合い 一本の桜になっていた 咲いていた
 まるで ここにたどり着いたぼく達のよう 一本の桜になっていた

  空を見上げれば あの日と同じ 春色の空 ああ 春色の空 その下に精一杯広げた両手のように
 枝を広げた繋がり桜

  ああ ああ 二本の桜 二本の桜 二本の桜 春色の空の下

 

 引き込まれて聞いてしまった。

 気づくと、幸子の顔立ちは小野寺潤そっくりになっていた。
 そして、ナニワTVのスタッフ達が寄ってきた。
「あ、この人、あそこで唄てるサッチャンのお兄さんで佐伯太一君ですぅ!」
 優奈が、余計なことを言う。
「妹さんなんですか。すごいですね! 妹さんは以前から、あんな歌真似やら、路上ライブをやってらっしゃったんですか?」
「え、あ、いや最近始めたんです。ボクがケイオンなもんで、門前の小僧というやつでしょう。ハハ、気まぐれなんで、飽きたら止めますよ。なんたって素人芸ですから、ギターだって……」
「いや、たいしたもんですよ。歌によって弾き方を変えてる。上手いもんですよ!」
「セリナさん、もうじき曲終わり、インタビューのチャンス!」
「ほんとだ、ちょっとすみませーん。ナニワテレビのものですがあ!」
 取材班はセリナという女子アナを先頭に、オーディエンスをかき分けて幸子に寄っていった。

 俺は、こういうのは苦手なんで、そそくさと、その場を離れる。

「な、楽器でも見ていこうや(^_^;)」

 そういう口実で、無理矢理三人の仲間を京橋の楽器屋につれていった。

 優奈なんかは最初はプータレていたが、一応ケイオン。最新の楽器を見ると目が輝く。店員さんに「真田山のケイオンです」というと「スニーカーエイジ見てましたよ!」と、店員さん。付属のスタジオが空いていたので、三曲ほど演らせてもらった。加藤先輩たちがスニーカーエイジで準優勝したことが効いたようだ。
 四曲目を演ろうとしたら。
「すみません。予約の方がこられましたんで」
 と、追い出された。

「ただいま~」
「おかえり~」

 ここまでは、いつもの通りだった。

 リビングを通って自分の部屋に行こうとすると、キッチンに人の気配がして、バニラのいい匂いがしてきた。で、お袋は、テーブルでパソコンを打っている。


「台所……なにか作ってんの?」
「幸子が、ホットケーキ焼いてんの。幸子、お兄ちゃんの分も追加ね!」
「もう作ってる!」

「幸子、ナニワテレビの取材はどうだった?」
 ホットケーキにメイプルシロップをかけながら聞く。
「え、なんのこと?」
「おまえ、大阪城公園で路上ライブやってただろ?」
「なに言ってんの、ずっと家にいたわよ。あ、佳子ちゃんと優ちゃんとで、公園の桜見にいったけどね。あの公園八重桜だったのね。今年はお花見できなかったから得しちゃった」
「え……?」

 幸子の様子がおかしい……話が食い違う。

 まあ、ライブのことは親には内緒にしたかったのかもしれないが。それ以外の……とくに態度がおかしい。歪んだ笑顔や無機質な表情をしない。「リモコン取って」とか「お兄ちゃん。短い足だけど邪魔!」など、ぞんざいではあるけれど、自然な愛嬌がある。ニュートラルじゃなくプログラムされた態度かとも思ったが、決定的と言っていい変化があった。
 風呂上がり、頭をタオルで巻いて、リビングに入ってきた幸子のパジャマの第二ボタンが外れて、形の良い胸が覗いていた。


「第二ボタン、外れてるぞ」
「ああ、見たなあ(#'∀'#)!」


 慌てて胸を隠した幸子は、怒っていた……ごく自然な、女の子みたいに。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 学校の人たち    倉持祐介(太一のクラスメート) 加藤先輩(軽音) 優奈(軽音)
  • グノーシスたち   ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス

 

 

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やくもあやかし物語・48『土筆を食べる・2』

2021-01-03 05:37:46 | ライトノベルセレクト

物語・48

『土筆を食べる・2』      

 

 

 はかまを取ってあく抜きするんだよ(^▽^)/

 

 まだまだ子どもなのに、えりかちゃんは土筆の料理法をよく知っていた。

 わたしってば、水洗いして、サッと湯通ししたらサラダみたいに食べられるんだと思ってたからビックリした。

 えりかちゃんはシンクの上にやっと首が出るくらいの背丈だから、調理のほとんどはわたしがやる。

 でも、指示を出すのはえりかちゃん。

「ハカマ取りをしっかりね」

 土筆には等間隔に腰蓑を逆さにしたようなのが付いてる。このハカマは硬くて食べられない。

「やだ、手が汚れるよ~」

 触っただけでアクみたいなのが指先にまとわりつく。スーパーで売ってる野菜しか知らないわたしにはひどく汚らしい。

「なに言ってんの、こういう手間もおいしさのうちなんだよ」

 のっけからお叱りを受ける、でも不愉快じゃない。

「さあ、水洗いと下ゆでするよ」

 ザルいっぱいの土筆をボールに移して水洗い、二回水を替えてジャブジャブ。

 ツルンとして、白っぽくなって食材らしくなる。

 それを大きめの鍋にお湯を沸かした中にザブッと入れる。

 

 ここが感動ものだ!

 

 パーーーっと傘のところが開いたかと思うと、お湯が鮮やかな緑色に染まる。

「なかなかじゃろ、こんなひょろ長くてなまっちろい体の中に、こんなに春の息吹を隠しておるんだからなあ🎵」

 お婆さんみたいな言い方は、えりかちゃん自身ウキウキしているからなんだ。

 二人は、なんだか仲良しの錬金術師みたくなってきた。

「この緑はな、傘の中に入っていた胞子が解き放たれるからじゃぞ、土筆自体春の息吹みたいだけど、この瞬間が、さらに春の偉大さを感じさせるのよ、ヌヒヒヒ……」

 スターウォーズのヨーダに孫娘がいたらこんな感じだろうと思った。

「やくもちゃんちは少人数だから、いろんな種類の土筆料理を作ろう!」

 たしかにザルいっぱいの土筆を単品の料理にすれば、美味しくても飽きるだろう。

 醤油バター炒め 佃煮 天ぷら サラダ オリーブオイル漬け

 アレヨアレヨと言う間に五品が揃った。

 たくさん作ったのは佃煮とオリーブオイル漬け。なんたって保存がきく。

 天ぷらは爺ちゃん婆ちゃんお母さんにもとっておき、熱々を二人でいただく。

「醤油バター炒めとサラダは置いとくとクターっとなっちゃうからね」

 三品を滞りなくいただく。

 

 すごいなあ、こんなチッコイのにこんなに色々知ってて。

 

 感心のしまくりなんだけど、口に出して誉めるというか感動を伝えるのは憚られた。

「さて、やっと気分がノッテきた♡」

 そう言うと、えりかちゃんはポケットから例の虹色のヘアピンを取り出した。

「つけてくれる?」

「うん、いいよ」

 前髪を軽く右に流してヘアピンを着けてあげる。えりかちゃんの髪からはお日様の香りがした。

「うん、かっこよくなった!」

 スカートをフリフリさせて喜ぶえりかちゃん。

「そうだ、写真に撮ろう!」

 スマホを出して、パシャリと一枚。

 よく撮れた!

 ……顔をあげると、えりかちゃんは居なくなっていた。

 

 台所のそこには、天窓から降りてきた春の陽だまりができていたよ……。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん      図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け
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