大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・153『だけじゃん言うな』

2021-01-26 09:14:46 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)153

『だけじゃん言うな』 啓介    

 

 

 運命って、あいまいなもんだと思う。

 

 俺の親父は二人姉弟の長男だ。

 親父の父親、つまり祖父さんは寅さん風に言うと職工で、カミさんと子供二人を養っていくのがやっとだった。

 親父は、この爺さんと婆さんの二番目の子どもで、上が女なんで、長男と言うことだ。

 長男だから、貧しいところをオッツカッツで、なんとか大学まで出してもらった。そして、大学を出て働いた職場でお袋と出会って結婚して俺が生まれた。

 実は、親父の姉、つまり伯母さんの上にもう一人いた。

 男の子だ。

 七カ月の早産で生後三十分で死んでしまった。

 もし、この男の子が早産でなくて、ふつうに十月十日(とつきとおか)で生まれていたら、親父は生まれてこなかった。

 爺さんは三人も子どもを育てる余裕は無かったから、親父のあとにできた子供は始末している。つまり婆さんと相談して堕ろしちまった。上の男の子が生まれていたら、親父は三番目なんで、始末されていたってことだ。

 上の男の子が早産になったのは、洗濯物を干そうとして躓いたせいなんだ。だから、婆さんが躓かなければ、普通に生まれていたはずだ。そして、親父は妊娠三カ月くらいで堕されている。

 親父が生まれてこなければ、あたりまえだけど、俺が生まれてくることは無かった。

 ひょっとしたらさ、俺の息子とか孫あたりが総理大臣とか偉い学者とかになって、日本や世界の危機を救うってことがあるかもしれない。いや、救うんだ!

 そのためには、俺の親父が生まれなければならないわけで、ひょっとして、未来から密命を帯びた工作員とかがタイムリープしてきて、洗濯物を干そうとしていた婆さんを転ばせたんじゃないかなあ?

 婆さんは、そそっかしい人だった。呼び鈴が鳴ったりすると、狭い家の中でもドタドタ走って玄関に急ぐ人だった。じっさい、七十三の歳に、これで大腿骨折をやってる。

 俺が千歳にコクらなかったのも、こんな偶然、いや、未来からやってきた工作員のせいかも知れない。

 中庭で千歳に出会って、あと一呼吸したらコクっていた。

 コクらなかったのは視線を感じたからだ。

 本館四階の生徒会倉庫から生徒会長の瀬戸内先輩が見ていたのは気づいていた。瀬戸内先輩は部室移転問題からの腐れ縁だから、そうは気にならない。目にしたからって、口笛拭いてヒューヒューからかうような人じゃねえからな。

 実は、中庭の向こう、渡り廊下の下から「プッ(* ´艸`)」って笑う奴がいた。

 反射的に目をやると、一瞬目が合った一年の女子が、口押さえて逃げ去っていくところだった。

 きっと、奴は未来世界の工作員だ。

 で、千歳のことは、それっきりになってしまった……。

 ドン!

「なに妄想の世界に入ってんのよ!」

 ミリーが、背中をドヤしつけて俺の前に座った。

「な、なんだよ、勝手に妄想とかあり得ねえし」

「ちょっと相談なんだけど、クラブで調理実習とかやってみない?」

「調理実習ぅ?」

「うさんくさそうな顔しないでよ、ちょっとした縁で調理実習することになったのよ」

「うちは演劇部だぞ」

「看板だけじゃん」

「だけじゃん言うな」

「ちょっと、面白いってゆうか、運命なのよ……」

 なんだか、新しい運命が開けてしまう……。

 

 主な登場人物

  •  小山内 啓介      二年生 演劇部部長 
  •  沢村  千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した
  •  ミリー・オーウェン   二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生
  •  松井  須磨      三年生(ただし、六回目の)
  •  瀬戸内 美晴      二年生 生徒会副会長
  •  姫田  姫乃      姫ちゃん先生 啓介とミリーの担任
  •  朝倉  佐和      演劇部顧問 空堀の卒業生で須磨と同級だった新任先生

☆ このセクションの人物 

  • 杉本先生
  • Sさん
  • 蜂須賀小鈴
  • 蜂須賀小七

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誤訳怪訳日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』

2021-01-26 06:22:00 | 評論

訳日本の神話・13
『イザナギの三神・スサノオ・2』
    

 

 高天原(たかまがはら)というくらいですから、高い空の上にありました。

 そんな空の上に、スサノオはどうやって行ったか?
 むかし、スサノオの話をアニメにした『腕白王子のオロチ退治』というのがありました。たしか東映動画の作品で若き日の宮崎駿監督も参加していたと思います。
 アニメではアメノフチコマという空を飛べる馬に乗って行くことになっていますが、記紀神話では記述がありません。
 まあ。神さまだから行けたということでいいのではないかと思います。

「え、弟のスサノオがやってくるって!? なんなの、それはあああああああヽ(`#Д#´)ノ!?」

 スサノオが高天原にやってくるのを知ったアマテラスは、歓迎するどころか激怒して嫌がります。
 そうして、自分も他の神さまといっしょに完全武装してスサノオに立ち向かいます。
「なんだって、おまえが来るんだよ! おまえ、父ちゃんも持て余してたヤンチャクレなんだろがあ! 入ってくんな! こっち見んなあああ!」
「そりゃねーだろ! オレはワルサなんかしねーよ。ただただカアチャンが恋しくってさ、父ちゃんに言ったら、ネーチャンがカアチャン似だってっから……その、来ただけなんだし」
「ざけんじゃねーよ! あたしはカアチャンの代用品ってか!? おまえ、どんだけマザコンなんだよ!? ここはなリア充しか住んじゃいけないんだよ、さっさと帰れ、このウンコ!!」
「ウンコじゃねーよ! おいら、ただただ寂しいんだ。な、ネーチャン、ワルサしねーから、置いておくれよ……頼むからよ(;゚Д゚)」

 姉弟とは思えない冷めた関係です。アマテラスは、もうスサノオのことを敵認定したような態度です。

 前にも述べましたが、アマテラスは伊勢神宮の御祭神で、皇祖神であります。
 その皇祖神であるアマテラスが非常に警戒するのですから、ここにおけるスサノオは、大和政権に敵対した大きな勢力があったことの記憶が反映されていると見るべきでしょう。
 大和政権が確立するまでは、いろいろな対立や抗争があったんだと理解しておけばいいと思います。

「じゃあさ、神さま生んで、潔白を証明しようじゃんか!」

「え? 神産みだとお!? く、くそ、仕方ないわねえ……」

 スサノオの提言で、姉弟の神さまは、子どもの神さまを生みあうことになります。
 アマテラスが付き合うのは、こういう場合の潔白の証明は双務的に行うものだからです。

 例えば、握手とか敬礼に、この名残があります。

 握手も敬礼も右手で行います。
 右手は武器を持つ手なので、お互いに相手の右手を握ることで武器を持っていないことを確かめ合うのです。
 敬礼も同様に、右手を肩の上に掲げることで、武器を持っていない=害意が無いことを証明しています。
 ですので、世界中にある敬礼の中で、はっきり右手の手の平を見せるイギリス流が敬礼の元祖なのかもしれません。

 礼砲というのがあります。

 外国の港に軍艦が儀礼的に入港する場合や、逆に入港される場合は、20発前後の大砲を撃ちます。
 儀礼がなんで大砲を撃ちあうことになるのかというと、物騒な気がしますが、以下の理由があります。

 昔の大砲は一発発射すると、次の発射までには時間がかかりました。だから、大砲を撃ってしまうことで「撃ったあとは無防備」なので害意はありません。ということの表明になるからです。
 最近の軍艦は、礼砲専門の大砲を積んでいることが多いようです。いまの艦載砲は口径120ミリくらいで、昔ほどデカい音が出ません。かといって、主力武器のトマホークやハープーンなんかのミサイルをぶっ放すわけにのいきませんですからね(^_^;)。

 この項続きます。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妹が憎たらしいのには訳がある・42『幸子失格』

2021-01-26 06:08:33 | 小説3

たらしいのにはがある・42
『幸子失格』
          


    

 

 我が家には、ささやかなこだわりがある。

 二十一世紀も半ば過ぎだというのに、いまだに紙の新聞をとっているのだ。


 新聞を開いたときに、アナログな情報の山が紙とインクの匂いをさせながら目に飛び込んでくるのは、脳の活性化に役に立つと日本人ノーベル賞受賞者のナントカさんが提唱して以来、右肩下がりだった新聞購読が増えるようになり、今でも世帯の25%は紙の新聞を購読している。

  しかし、この紙の新聞で弁当を包むという前世紀の習慣を維持しているのはウチぐらいのものだろう。
 
 これは意外なことにお袋の習慣なのだ。

 編集という特殊な仕事柄のせいなのかもしれないが、去年、親父とのヨリが戻り、家族の復活をしみじみ感じたのは、この新聞紙に包んだ弁当を学校で開いたときかもしれない。
 お袋は早起きで、朝の支度をしながら新聞を読み、必要なものを赤ペンでチェック、最後にまとめてスマホに取り込んだあと弁当をくるむ。何ヶ月も新聞を溜め込むようなことはしない。やはりニュースは新鮮さが第一というのは、今の人間である。

 その日はテスト終了後の短縮授業。

 学校は昼までなんだけど、部活があるので弁当を持ってきたのだ。
 そこで広げっぱなしにしていた新聞紙の赤ペンに幸子が注目した。
「へえ、先月の極東事変の裏は、甲殻機動隊が……」
「あ、的場って防衛大臣の首が飛んだやつ」
「あれ、軍が大臣に内緒で攻撃準備してたんでしょ。あれ勝ったんで戦争にならずに済んだって。戦争やってたら、スニーカーエイジどころじゃないもんね」
 優奈が食後のお茶を飲みながら言った。
「押さえた記事になってるけど、仕掛けたのは甲殻機動隊だって……」

 ちがう。

 俺は、一カ月前、ねねちゃんにインストールされて、ねねちゃんのママの臨終に立ち会ったことや、そのあとDepartureして防衛省に潜入したことを思い出した。あれは、義体であるねねちゃんの判断だった。ねねちゃんは、あれからも急速にねねちゃんらしさを取り戻している。それに比べて、わが妹の幸子はあいかわらず。義体として他人になりきる技術は完ぺきだ。小野寺潤を始め、骨格の似ているアイドルには完ぺきにコピーできる。もうレパートリーは20を超え、いくつかを合成して、オリジナルな佐伯幸子としてもアルバムを出すようになった。
 ただ、幸子は、あくまで週末&放課後アイドルに徹しており、高校生活に穴を開けるようなことはしなかった。

「さ、お兄ちゃん、練習だよ」
「はいはい」
 幸子は、ケイオンの選抜メンバーに選ばれても、昼や休憩時間の半分以上は、もとの仲間と時間を過ごすようにしている。妹ながら気配りのできた奴だ。もっとも、それはプログラムモードのときだけで、ナチュラルモードのときは、相変わらずのニクソサなのであるが。

 それから一週間、スニーカーエイジのプロディユーサーが学校にやってきた。

 顧問の蟹江先生立ち会いの下で、選抜メンバーはプロデユーサーに会った。
「やあ、プロデューサーの的場です。大事な話なんで、ぼく自身で来ました」
 初対面なんだけど、どこかで会ったような気がした。
「あ……兄貴が、こないだまで国防大臣。でもナイショね。かっこ悪いし、兄貴は兄貴、ぼくはぼくだから」
 そう言うと、的場さんは頭を掻いた。でも、兄貴がドジな国防大臣であったのとは違う緊張感がした。
「なんでしょう、もし編成に関わるようなことならハッキリ言うてください。わたしらも対応せんとあきませんから」
 加藤先輩が促した。的場さんは、メンバーの顔を見渡してから口を開いた。
「申し訳ない、佐伯幸子さんの出場が認められなくなりました」

 一瞬、みんなが凍り付いた。

「理由はなんですか」
「佐伯さんの芸能活動です」
「それは、登録するときに問題ないて、言わはったやないですか!」
 ギターの田原さんが広義した。
「登録時はセミプロだったが、今はヒットチャートの常連だ。立派なプロだよ」
「そんな……」
 みんなの口から同じ言葉が漏れた。
「しかし、それは殺生だっせ」
 いつも口出しをしない、蟹江先生が平家蟹のような顔で言った。
「規約では、出場者は、学校やエージェントが不良行為と認めた場合に出場を取り消すことがある……としか書いてまへんけど」
「あと、もう一点、プロと認定された者は出場できないとあります」
「待ってください。わたしがプロなのは週末だけです。それ以外は普通の高校生です」
「スニーカーエイジの本選は週末に行われる……週末の君はプロなんだ」

 外の蝉の声が、ひときわ大きく耳障りに聞こえてきた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする