大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・027『宮さまの裏ワザ』

2021-01-29 10:21:37 | 小説4

・027

『宮さまの裏ワザ』 ダッシュ           

 

 

 13号艇はボートに分類される雑役艇だ。

 

 動力はイオン電池で200年前の小惑星探査機のそれと原理的にはいっしょだ。

 スピードは全然で、並みの船(宇宙船)がリニア新幹線だとしたら、やっと自転車ほどの速度でしかない。

 月と地球は目と鼻の先なので、船なら30分ほどのところを丸一日はかかってしまう。

「君たちは、将軍には会ったことはあるのかい?」

 森ノ宮さまが学校の先輩みたいな気楽さで声をかけてくださる。たった一つのキャビンなので黙っていては気づまりだろうとのお気遣いなんだ。学園艦が何者かによって撃沈されてショックを受けている俺たちへの気遣いでもあるんだろう。

「えと、お見受けするという点では週に一回くらいですけど、学期に一回は学校に来て、気さくに生徒にも声をかけてくれます」

「たいていの生徒は、卒業までに一度は声をかけていただいております」

 きちんと敬語が使えない俺をヒコがフォローしてくれる。

「とっても、優しいニャ(^▽^)/ テルと喋る時は、ちゃんと目の高さを合わせてくれるニャ」

「修学旅行に出発するときも『散歩のついで』とかおっしゃって、宇宙港まで見送ってくださったんです」

「そうか、それは、なかなか出来ないことだね」

「帰ったら地球の話を聞かせて欲しいニャって、タラップ上る時まで手を振って……」

 テルが言葉に詰まる。学園艦の最後が頭をよぎったんだ。

「ああ、そうだ、レプリケーターの裏ワザを見せてあげよう」

「え、レプリケーターに裏ワザなんてあるんですか?」

「うん、僕も学生の頃はいろいろやったからね」

 そう言うと、宮さまはレプリケーターのマイクに数ミリというところまで口をせて、何事かを囁いた。

「……………」

 レプリケーターは画面のメニューをタッチするやり方と、音声入力の二通りあって、音声入力は世界中の120の言語に対応している。対応しているということは、それだけの文化圏のメニューに対応しているということで、万一漂流しても食べ物の嗜好で悩まなくていい仕組みになっている。

「なにが出てくりゅんだろ(^▽^)」

「テル、よだれ~(^_^;)」

 未来が涎を拭いてやっているうちに、マシンはブツを吐き出した。

「え、たこ焼き?」

 それは、定番の普通のたこ焼きだ。

「テルくん、食べさせてあげよう」

「うわ、いいの? なんか畏れ多いニャ(^▽^)/ けど、テル猫舌ニャ」

「大丈夫、40度設定だから、ちょうど頃合いだよ」

「エヘ、そいじゃ……ハム……ん!?」

 テルが分かりやすく驚いて、たこ焼きを咀嚼しながら、とびきりの笑顔になった。

 俺たちも続いて、ビックリした。

 たこ焼きソックリな、なんと言うんだろ、クッキー? というか、味はたこ焼きそのものなんだけど、水分が無くって、カリカリの食感、これは面白い!

「なんなんですか、これ!?」

 子どもの頃の夢はラーメン屋のおかみさんだった未来が目を輝かせる。

「たこ焼きをフリーズドライさせて油で揚げ直ししたものさ」

「メニューには『たこ焼き』しかありませんよね」

「昔は、売れ残ったたこ焼きは廃棄していたんだけどね、もったいないと言うんで、大阪のたこ焼き屋さんが開発したんだ。日持ちはするし、水分が飛んだ分軽くなってるし、レプリケーターが登場するまでは大阪土産で、ずいぶん評判だったんだよ」

「なるほどおおおおおおお!」

「商品名は『再生たこ焼』とか、いろいろなんだけど、イメージを言ってやるとレプリケーターは、メモリーから類推して合成してくれるんだよ」

 俺たちは、決まったメニューしか言わないし、そういうもんだと思っていたけど、こんな能力がマシンにはあったんだ。

 学生時代の宮さまは、そういう食文化にご興味を持っておられたようで、学園艦の悲劇は少し忘れることができた。

「で、宮しゃまは、どこへ行くのよしゃ?」

 テルが遠慮のない質問をする。

 わずかに間をおいて、宮さまはお顔をあげられた。

「僕も、火星に付いていくよ」

 その声を聞いて、元帥は後姿のまま頷いた。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官

 ※ 事項

  • 扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誤訳怪訳日本の神話・16『天岩戸(あまのいわと)を開く!』

2021-01-29 07:15:02 | 評論

訳日本の神話・16
『天岩戸(あまのいわと)を開く!』 

 

 

 天の安河原の会議のつづきからです。

 

 高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の息子である思金神(オモイカネノカミ)が提案します。

「どうだろう、天照大神よりも偉い神さまにやってきてもらうというのは?」

 なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 

 一同息をのみます。

「バカなこと言うなよ、アマテラスさまは最高神であられるのだ、アマテラスさま以上に偉い神さまなんているわけねえだろーが」

「一芝居うつんだよ。じつはな……かくかくしかじか」

 プランを述べるオモイカネ。

 テレビのヤラセ番組のようなことを言いますが、日ごろから思慮深い知恵者として有名なことが幸いしたのか、一同は賛成することになります。

    

 

 まず常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かせます。

 いかめしい名前ですが常世長鳴鳥とはニワトリのことであります。

 夜明け直前にコケコッコーと鳴くニワトリは「太陽を呼んでくる目出度い鳥」ということになっています。

 のち、五世紀ごろに作られた前方後円墳の前方部と後円部の境目にはニワトリの埴輪がよく置かれています。

 前方後円墳の主体は墓地である後円部にあります。前方部は会葬者のためのスペースです。

 だから、後円部の方が尊いので前方部の方が高くなっています。前方部は会葬者が儀式がよく見えるように、末広がりになって、後ろに行くにしたがって高くなっています。劇場の構造に似てますね。

 後円部に大王などの被葬者が埋葬され、埋葬した夜は跡継ぎの皇太子や皇子が守をします。

 一晩被葬者の守をしたあと、夜明けとともに後円部から降りてきて帝位や族長の地位を継いだことを宣言します。

 つまり、ニワトリの埴輪が置いてあるところが、黄泉の国と常世の結界になっており、ニワトリが日の出を招くことになぞらえているのです。つまりつまり、夜と朝の境目を超えて新天皇や族長の権威の再生を現わしているのです。

 身も蓋もなく言えば、ニワトリが鳴いたことで夜明けが来たぞ=アマテラスに代わる新しい太陽神が来たというフェイクをかますわけですなあ。

 しかし、ニワトリはきっかけに過ぎません。あれ? ニワトリが鳴いた? とアマテラス「あれ?」と思わせるだけです。

 そこで、神さまたちはヤラセの大宴会を催します。

 天宇受売命(アメノウズメノミコト)がお立ち台に立って舞い踊ります。

 ヤラセとは言え、本当にエンジョイして楽しくならなければフェイクであるとアマテラスにバレてしまいます。

 アメノウズメは日本で最初のストリップをいたします。

 神懸(かみがか)りして裳の紐を陰(ほと)に垂らしまして……古事記にあります。

 トランス状態になって、着物の紐を解いて陰(ほと)とありますから、えと……エロゲでなければ表現できないようなところまで下ろして……つまりストリップであります。

 それを見て、神さまたちはノリノリになったわけであります。

 この大宴会の中には男神だけではなく女神もおりました。今の時代に女性も参加する宴会でやったら完全にセクハラをとられます。日本では男女共々大らかであった時代があったのですね。

 まあ、本気でお楽しみの大宴会を催したんですなあ。自分たちが本気でなければ騙せません。

 その甲斐あって、いったい何事か? アマテラスは岩戸をちょっとだけ開いて様子を見ます。

 それに気づいたウズメが猥褻物陳列の姿のままでお立ち台から岩戸にジャンプ!

「あんたよりマブくて尊い神樣がおいでになるんでよろしくやってんのよ!」と、かまします!

「な、なんと!?」

 すかさずアメノコヤネの命とフトダマの命とが、鏡をさし出してアマテラスの前に掲げます。

「な、なに、なによ、このイカシた女は!? めっちゃ美人過ぎるんですけどおおお!!」

 アマテラスが動揺したところを、天手力男神タヂカラヲノカミ)が引っ張り出して、天岩戸はしめ縄を張ってもどれなくします。

「ま、その、あ、あんたたちが、それほど言うなら(#^_^#)、言うならあ、戻ってあげなくもない……かな?」

 ということで、高天原にも地上にも光が戻ってくるのでありました。

 

 ちなみに天宇受売命は芸能や芸能人の神さまに、天手力男神は相撲取りの神さまになりました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妹が憎たらしいのには訳がある・45『栄光へのダッシュ・1』

2021-01-29 06:52:48 | 小説3

たらしいのにはがある・45
『桃畑律子の想い』
         

  

 


 優奈は懸命に練習した。

 桃畑律子の想いが分かったからだ。

 自分たちが生まれる前に、自分たちと同じ年頃の少女たちが対馬の山中で戦って死んでいった。そして、それは軍や政府の一部の人間しか知られず、評価もされないどころか、存在さえ認知されていないことを。

 優奈は知ってしまった。

 あの少女部隊のことは公表することはできないが、その想いは伝えたいと思った。

「声で歌うんじゃない、体で歌うんだ! 体が弾けて、その結果想いが歌になるんだ!」
 加藤先輩の指摘は厳しかった。そして、加藤先輩自身も壁にぶつかってしまった。叱咤激励はできてもイメージを伝える段階で自分のイメージもエモーションも希薄になっていく。
「これじゃ、ただのサバゲーのプロモだ。覚めたままビビットにならなきゃ!」
 冷蔵庫の中でお湯を沸かすような無茶を言う。


 俺たちは国防軍のシュミレーションを受けることにした。 


「謙三、祐介、左翼から陽動。太一はここを動かないで。真希、優奈は、わたしに続いて!」

 しかし、その動きは読まれていた。

 敵は謙三たちの陽動にひっかかったフリをして、圧力かけてきた。


「ハハ、大丈夫、陽動のまんま敵のど真ん中に突っ込めますよ!」
「余計なことはするな、おまえたちはあくまで陽動なんだ。太一、ブラフで指揮をとって!」
「了解」
 加藤先輩は、上手くいきすぎているような気がした。でも、それは、すでに真希と優奈に突撃を指示した後だった。「あ!」と思った時には、真希と優奈がパルス機関砲にロックされていることが分かった。
 閃光が走り、真希と、優奈は、粉みじんの肉片になって飛び散ってしまった。二人の血を全身に浴びた加藤先輩は、それでも冷静だった。

「総員合流、撤収す……」

 先輩の意識は、そこまでだった。

 敵は劣化パルス弾を撃ってきた。

 瞬間の判断で先輩は身をかわしたが、パルス弾は至近距離で炸裂した。


 炸裂の勢いがハンパではないために、先輩はグニャリと曲がったかと思うと、衝撃を受けた反対側の体が裂けて、体液や内臓が噴きだしていった。俺たちの分隊は壊滅してしまった……。

「これが、対馬の前哨戦だよ」

 桃畑中佐の声がした。

 訓練用の筐体から出てくるのには、みんな時間がかかった。あらかじめ衝撃緩和剤を服用していたが、それでも、今の戦闘のショックはハンパではなかった。


「緩和剤無しでは、発狂してしまうこともある」
「……これ、実戦記録がもとになってるんですよね」
「そうだよ、この分隊は運良く生き残った。隊員一人だけだけどね。その記録を元に作った訓練用シュミレーションだよ……ようし、全員心身共に影響なし」
 アナライザーの記録を見ながら、桃畑中佐が笑顔で告げた。
「この戦闘で、彼女たちは今のように……?」
「あの程度のブラフは簡単に読める。この戦闘では死傷者はいない。分隊がたった一人になったのは次の戦闘だ。ただ民間人の君たちにシュミレートしてもらえるのは、ここまでだ。むろん現役の部隊には最後までやらせている。失敗するものはいない。だから先日の防衛省への攻撃を陽動とした敵の侵攻は100%防ぐことができた」
 俺は、それを防いだのは、ねねちゃんにインスト-ルされた里中マキ中尉のおかげだと知っていたが、話さなかった。ねねちゃんも、お母さんのマキ中尉もそれを望んでいないことを知っていたから……。

 国防省で、シュミレートの体験をしてからの俺たちは変わった。

 プロの軍人から見れば遊びのようなものかもしれないが。毎日1000メートルの全力疾走と、バク転の練習を始めた。顧問の蟹江先生が、たえず脈拍や、心拍数を計測している。1000メートルの全力疾走というのは、古武道で言うところの死域に入ることに近い。死んだ肉体を精神力でもたせ、その能力を最大限に引き出す。俺たちは、それで限界の力を出そうとした。バク転は、恐怖心の克服である。短期間で、成果を出すのには、一番手っ取り早い。
 それをみっちり一時間やったあと、やっと演奏の練習。最初の三日間ほどは、全力疾走とバク転の練習でへげへげになり、とても演奏どころではなかったが、四日目には変わった!

 

《出撃 レイブン少女隊!》 

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! みんなのために

 放課後、校舎の陰 スマホの#ボタン押したらレイブンさ

 世界が見放してしまった 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート

 エンプロイヤー それは世界の平和願う君たちさ 一人一人の愛の力 夢見る力

 手にする武器は 愛する心 籠める弾丸 それは愛と正義と 胸にあふれる勇気と 頬を濡らす涙と汗さ!

 邪悪なデーモン倒すため 巨悪のサタンを倒すため

 わたし達 ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! For The Love!

 ああ ああ レイブン レイブン レイブン 傭兵少女隊……ただ今参上!

 


 あきらかに歌にも演奏にも厚みと奥行きがでた。いけると思った。

「あかん、真剣すぎる。この厚みと奥行きを持ったまま、楽しいやらなあかん。うちらのは音楽で、演説やないねんさかい」

 俺たちは、加藤先輩の意見に、進んで手をあげることができた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする