大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 154『書籍範老人』

2023-12-02 08:22:55 | ノベル2
ら 信長転生記
154『書籍範老人』茶姫  



 あなた方は、もしや三蔵法師御一行様!?


 馬が喋った……と思ったら、馬の首にへばりつくようにして乗っているジジイだ。

「いかにも天竺より経文を受け取って帰る途中の三蔵法師とその弟子三名ですがッパ、なにか御用でしょうかッパ、ご老人?」

 町の老人会の会長に対するように、優しく訊ね返す。

「はい、わたしは豊盃は豊盃楼の豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)で書店を出しておりました書籍範という年寄なのですが、オーナーの大橋(だいきょう)さまの代理で三蔵法師さま御一行を探しに出ておりました」

 ああ、思い出した!
 
 扶桑の国に逃れる前、兄の曹操に追われて、大橋のアンティークショップに匿われていた。店の主人までは覚えていないが、たしかに十字路の向かいに書店があった。

「この度は、パサージュの改装を機会に閉店して引退しようと思っていたのですが、大橋さまが店を買い取ってくださいました。その上、慰安旅行を兼ねて三蔵法師さま御一行を探すお仕事もお与えくださって、このように、皆さまにお会いできたのです」

「おお、それはご奇特ッパ!」

「それにしては、ちょっとくたびれてるブヒ」

「はい、西安で婆さんと観光をしておったのですが、玉門関からこちらの噂を聞き伝えまして、敦煌までの道のりできっとお会いできるに違いないと、年甲斐もなく馬を飛ばしてまいりました」

 三国志の書店は古書も多く取り扱う。古書の仕入れは、店の主人の目利き次第だ。見えていたわけではないだろうが、知らぬ間に兵馬俑たちの行軍に触発されてやってきたのかもしれない。

「おお、これにおわすお上人様が三蔵法師さまなのですね!」

 ザっと説明し終えると、念仏を唱え続けている三蔵法師に三跪九拝の礼をする老人。

「三蔵法師さまは、お念仏の最中ウキ、邪魔してはいけないウキ」

「話なら、我々三人が聞くブヒ」

「はい、実は、三蔵法師様御一行に豊盃にお越しいただき、御説法していただけないだろうかと大橋さまはお考えなのです」

「「「説法!?」」」

「はい、豊盃の街は豊かで穏やかな街ですが、大きく目を三国志全体に向けますと、天下は三国に分裂し、いつ戦国の大乱を招くか分かりません。ここは仏法をもって太平の道を歩むにしくはなし。そうお考えになっておられるのではないかと拝察しております」

「「「なるほど……」」」

 しかし、待て。

 この三蔵法師は忠八の紙飛行機からでっちあげたNPCとも言えないオブジェに過ぎない。念仏するとかニコニコ微笑む程度のギミックはできるが、説法するなんてことはできない。馬から下ろして念仏の姿勢をとらせるのだって、三人がかりだったんだぞ。

 悟空の信長も猪八戒の市も――無理だ(-_-;)!――という顔をしている。

「それは、ありがたい話ではありませんか」

「「「え!?」」」

 オブジェの三蔵法師が口をきいた!?


☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
  
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ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)第8話《レイア姫の事情》

2023-12-02 05:39:29 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第8話《レイア姫の事情》 




 レイア姫おパンツ事件は目出度く一件落着。


 でも、姉のあたしが後悔していると言ったら、驚かれるだろうか?

 じつのところ、アミダラ女王とレイア姫のおパンツを勧めたのは、何を隠そうあたしなのだ。

 ティーンの子なら当たり前なんだけど。さくらは自分の長所がよく分かっていない。

 ありがちなんだけど、自分の欠点ばかりが気になる年頃なんですよ。

 自分は可愛くない。人並みに勉強もできない。空気が読めない。人生に夢がない……の、ないないづくし。

 姉妹のひいき目をさっぴいても、さくらは十人並み以上にかわいい。スタイルも悪くない。この年頃にありがちなプニプニ感がなく、シュっとしている。で、本人は、エンピツみたいな体だと自信を失う。

 自信がないもんだから、表情が暗く、姿勢も悪い。勉強も優等生というわけではないけど並以上の成績はとっている。そうでなきゃ偏差値六十五の帝都女学院に通るわけがない。

 さくらは勘のいい子で、相手の気持ちや空気が読める子である。

 しかし、読めるが故に、集団の空気の中にとけ込めないところが無きにしも非ず。

 本人は筋道をたてて話したい子なんだけど、世間の女の子は筋道なんか関係なく雰囲気で話してしまう。

 さくらは、それを飛躍に感じたりして「意味分かんない」になり、つい返事が、気のない「そうなんだ」になってしまい、クラスや友だち仲間にとけ込めない。

 当然友だちも少ない。

 中二の時に、太宰にハマっていた。中三の春には太宰の主な作品は読んでしまい、それ以来口癖が「ダスゲマイネ」。犬飼のオイチャンのお通夜でもクチバシッテいたけど、聞こえないふりをしておいた。

 それから、名前も原因。佐倉さくらってのはね……ま、言ってもセンない話なので、またの機会に。


「この本、おもしろいよ」


 帝都に受かったとき、古本屋で見つけたメグ・キャボットの『プリンセスダイアリー』をプレゼントした。映画化された時のタイトルは『プリティープリンセス』 アン・ハサウェーの出世作として有名。で、もちろん中古だけど映画のDVDもくっつけておいてやった。

 で、そうそう。おパンツの話。

 主人公のミアは冴えない女子高生なんだけど、ある日自分がジェノヴィアという国の王位継承者だということが分かって、ドタバタの末に目出度くジェノヴィアの王女になる。大事なのは、その中で主人公のミアが自分を失うことなく、周囲に調和させながら成長していく姿。

 狙い通り、さくらは主人公のミアに、自分との共通点を見いだす。

 ここまでは良かった。

 さくらは、ミアの愛用品であるアミダラ女王とレイア姫のおパンツを渋谷で発見。以来験担ぎで、さくらの愛用品になり、今回の騒動に至ったわけですよ。

 責任の一端は、あたしにも有るわけです(^_^;)。

 バイトが遅番だったので、朝一で映画を観て、さくらのために買い物をした。

 ブツはくるっちょブラとへっちゃらパンツ。

「だめだよ、学校は柄物のブラは禁止だよ。自分も帝都だから知ってるでしょ」

「これはリバーシブルなの。ね、白と柄になってんでしょ。学校いくときは白、プライベートは柄でいこう!」

「この、へっちゃらは?」

「レイア姫とアミダラ女王は、さくらの必須アイテムなんだからさ、その上に穿くの。AKBとかナンチャラ坂もこれだよ」

「……そうなんだ」

 さくらは思索的な顔になった。

「考えるなって、たかがブラとパンツ。ものは試し。犬飼のオイチャンじゃないけど、世界が変わるかもよ」

「そ、そうだよね。世界は自分で変えていかなくっちゃね!」

 と、気合いは入るがマジな顔。まあ、前向きな分評価はできる。

 話は前後するけど、さくらの買い物をしたあと秋元クンに出会った。さくらのお礼もあるし、聡子ちゃんのこともあるので、身銭を切って昼ご飯を奢る。ペーペーの女子大生にとっては出費オーバーな一日だった。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 香取            北町警察の巡査

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