大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:221『羨道を前にして』

2023-12-22 13:34:26 | 時かける少女
RE・
221『羨道を前にして』テル 



 先遣隊・中継隊・ベースキャンプ隊の三つに分かれた。


 先遣隊――イザナギ ヒルデ タングニョ-スト テル 

 中継隊――ケイト 与一 桃太郎二号 

 ベースキャンプ隊――ヨネコ 雪舟ねずみ


 先遣隊もイザナミさんの気配がしたら、その場で待機する。

 イザナミさんや黄泉の神々と話すのは、神であり夫であるイザナギさん一人でなくてはならない。

 本当ならば、イザナギさん以外は黄泉の岩戸に踏み込むべきではないだろう。

 イザナギ・イザナミお二人で約束されたことであり、幽世の国にはどのような穢れが潜んでいるか分かったものではない。穢れを払うのは神の身としても大変なことで、まして人の身では相当な負担になる。帰りを考えると、ここで無理をすべきではないと思う。

 
「この先、通路が狭くなっています」


 篝を持って先頭を進んでいるタングニョ-ストが手を挙げて立ち止まった。

 少しの異変や変化でも立ち止まって様子を探ろうというのは歴戦の下士官らしい振舞だ。以前の世界ではタングリスと二人で任に当たってくれていた。こちらの世界に転移してきたのは何か大きな力が働いているのかもしれないが、タングニョ-ストに関しては、軍人として、ガードとしての責任感だったのかもしれない。

イザナギ:「羨道のようですね」

ヒルデ:「センドウ……passageのようだな、言葉は違うが、墓室に続く通路のことだろうか?」

イザナギ:「ヒルデさんの国でも同じなのですか?」

ヒルデ:「種族、部族によって違うのだが、石組みを組んで墓とする場合は、この形式が多いように思う」

イザナギ:「そうですか、どこの世界でも人の死を悼むと似たような形になるのかもしれませんねえ」

テル:「わずかだけれど、羨道には篝があります。拒絶はされていないようです」

 三人とイザナギ殿に顔を向ける。

 冷静にイザナギ殿の判断を仰ごうとしているんだ。

 気は逸るが、みんなそれぞれのポジションと目的を理解している。

 単位は小さいが、いいパーティーだ。

イザナギ:「おそらくは、黄泉の神々も気づいていると思います。進んで迎えようと言う様子もありませんが拒まれているようにも思えません。いま少し様子を伺って、だいじょうぶと思えたところで、わたし一人でこの先に向かいます」

テル:「分かりました、小休止にしましょう」

 ドサ

 腰を下ろす音が微妙に響く、周囲の岩壁に反射したものか、微妙に疲れが現れているのか。

ヒルデ:「タングニョースト、貴様の背嚢……」

タングニョースト:「重くなってきました……これは……タングリスの復活が近い……いや、復活します!」

 タングニョ-ストが背嚢を下ろすと、まるで生き物のようにモゾモゾと動き始めた!


☆ ステータス
 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

 

 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第27話《話は遡るけど白石優奈って覚えてる?》

2023-12-22 10:15:45 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第27話《話は遡るけど白石優奈って覚えてる?》さくら 




 話しは遡るけど、白石優奈って覚えてる?


 ほら、去年、終業式の日の大掃除で屋上から飛び降りようとして、わたしが救けた子。

 自分のことを熊野の八百比丘尼だと言っている、ちょっと電波な子。

 八百比丘尼って、人魚の肉を食べて永遠の若さと命を授かってるんだ。だけど、近ごろは永遠の命はともかく、若さの方は衰えるようになってきて、来たるべき日に備え、時どき肉体を更新しなければならない。

 わたしと話したことで、なんだか活性化したみたいで、肉体の更新は思いとどまってくれたのが、ついこないだのこと。


 その白石優奈からメールが来た。

――学校のカフェテリアで待ってる――


「どう、元気してる?」

「うん、おかげでね。ちょっと待ってて……」

 南側のテーブルに着くと、優奈はホットミルクコーヒーを取りにいった。ちなみに、この食堂がカフェテリアなどという小粋な名前でいられる言い訳が、このホットミルクコーヒー。
 ここのオーナーは帝都の大学の学食も引き受けていて、大学では、キチンとしたカフェテリアがある。そこで出た大量のコーヒーの出がらしを煮詰め、シロップとミルクをしこたま入れてミルクコーヒーにしている。
 アカラサマに言えばチープな再生飲料なんだけど、脳みその活動に必要な糖分の摂取にはもってこい。夏はアイスで、冬はホット。300CCで80円というのも嬉しい。

 優奈は、それを二つ持ってきて、テーブルに置いた。

「どうぞ」「ゴチです」

 取りあえずミルクコーヒーで暖まる。

 ホワワ~~

 タイミングよく、雲間からお日様が顔を出して、年の瀬とは思えない暖かさになった。

「……実は、年明けから中国に行くの」

「中国?」

「うん、お父さんの仕事の都合でね」

「え……ちょっとたいへんなんじゃない?」

 ネットとかで、いまの中国はいろいろ大変だと聞いている。

「うん、まあね。それで、さくらにはどうしても会っておきたくて……」

「あ、うん……ありがとう」

 そのあと言葉が続かなくて、陽だまりの席で熱々のミルクコーヒーをいただく。
 
「なんだか、いつもより美味しい……出がらしとは思えないわね」

 出がらしのところは、そよっと顔を寄せる。カウンターのおばさんに聞こえたら悪いもんね。

「うん、ここの名物だし……今日は、ちょっと特別なの」

「とくべつ?」

 そう言うと、優奈はポケットから小さなボトルを取り出した。

 お寿司の醤油淹れより少し大きいボトルには『熊』の一字が刻まれている。

 白地のボトルに熊なので、熊のプーさんが浮かんだんだけど違った。

「熊野明神に行ってきたの」

「あ、あの熊野明神?」

 口には出さず、コクリと頷く優奈。

「うん、日本を離れるんで、こないだの報告を兼ねてご挨拶に行ってきたの」

「じゃ、それは……」

 テーブルのボトルに目がいく。

「熊野明神の御神水」

「ごしんすい?」

「わたしが日本を離れているあいだ、わたしの代わりをしてもらいたくて」

「え!?」

「八百比丘尼になるわけじゃないわ」

「え……ああ……」

 残念なようなありがたいような。

「力の現れ方は人によってちがう。それに、わたしが日本に帰ってくるまでの間だけだし」

「それで、これを飲めとか?」

「うん」

 あっさり言うしぃ(^_^;)

「ええと……」

「だいじょうぶ、もう飲んでくれたし」

「え?」

 優奈は、ソロっとミルクコーヒーのカップに目を落とした。

 は、謀られたぁ……(;゚Д゚)

「じゃ、ごめん、飛行機の時間迫ってるから(^▽^)」

 晴れ晴れとした笑顔で小首をかしげると、すっごい軽やかさでカフェテリアを出ていく優菜。

 
 我に返って周囲を見回すと、どの席も椅子がテーブルに上げられ、配膳のカウンターにもシャッターが下りている。

 そうだよ、冬休みの真っ最中、カフェテリアどころか学校だってやってるはずがない!


 ダスゲマイネ(-_-;)


 手遅れかもしれないけど、大晦日から元日にかけて、まくさと絵里奈と三人で初詣しまくった。

 もちろん厄除けよ! 

 少しは優奈の無事も祈ったけどね。

 
☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査

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