大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:219『イザナギ踏み込む』

2023-12-10 10:03:25 | 時かける少女
RE・
219『イザナギ踏み込む』テル 



 いい人たちばかりだ。


 元々はわたしの過失だ。

 もう少し慎重にやるべきだったんだ。

 国生み神生みは神聖で大事なものだ。それを若さに任せ、あまりに性急にいたしすぎた。わたしとイザナミは、この地上、人々が生きるに必要なものをすべて生み出す使命を与えられていた。

 むろん、辞令とかをもらって、研修期間があってというような悠長なものではない。

 ヤマトの国は萌え出る息吹に満ち満ちていた。わたしとイザナミは、その息吹を国生み神生みの交わいによって生きた形になすことであった。

 当然、やがては人の営みにとって欠くべからざる火、あるいは火の神を生むことは分かっていた。そのためには、うだつを立てるとか、ファイアーウォールを設けるとか、火災保険に入るとか……最低でも互いの体を不燃性にしてから臨むべきであった。

 どう考えても、わたしに100%の過失があっての不始末だ。

 それなのに、テルとヒルデは我がことのように心配して、オノコロジマからずっとついてきてくれている。この黄泉比良坂にいたるまでに、二人の縁でケイトやタングニョーストが加わり、早くも動き出した歴史の中から与一殿が加わわってくれ、瀬戸の海を渡ってからは、桃太郎二号、雪舟ねずみにヨネコまで加わって『黄泉の国を目指す神々の会』はまことに賑やかになった。

 できることなら、このままこの九人で日の本のあちこち旅して周れたらと思うくらいだ。

 しかし、イザナギよ、お前には使命がある。

 わたしは用を足すふりをして、小さな松明一つを持って岩戸に踏み込んだ。

 もし、イザナミが黄泉の神々との交渉に難渋しているのなら、わたしも加わらなければ。火の神を生んで焼け死んでしまった責任の半分、いや、全てがわたしにあると言っていい。イザナミは「けして覗かないで」と言っていたが、あれは、イザナミらしい責任感からだ――子を産むというのは女にしかできない神聖な使命、男は産室の前で、ただオロオロと祈って下さればよいのです――それぐらいのプライドを持っている、わたしには過ぎた嫁なのだ。

 しかし、もう七日になろうとしている。外つ国 の神なら世界を作り終えて安息日を迎えているころだ。

 あそこを曲がれば大きな岩室……空気の流れで予感された。

 よし、行くぞ!

「イザナギ殿、一人でいくとは水くさいぞ」

 !?

 声に振り返ると、ヒルデさんを先頭に神々の会のみんながついて来ていた!

 
☆ ステータス
 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》

2023-12-10 06:57:38 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第16話《箱根温泉のクリスマス》さくら 




「さくらぁ~、ゆでだこになってしまうでえ~」

「う……うん……」


 恵里奈が言ったのに生返事したことは覚えていたけど、あたしは、それから二十分近く温泉に浸かっていた。

 温泉が、こんなに頭にいいとは思わなかった。

 頭にいいと言っても賢くなるわけではない。なにも考えなくてもいいんだ。

 うちのお風呂だと、その日にあったことや、明日のこと、ときにはとんでもない昔のことを思い出し、狭い湯船で身もだえすることもあるけど、温泉は頭が空っぽになる。考え事の多いあたしには、まさに極楽なんだ。

 最初は考えたんだよ。

 浴槽の真ん中に人魚姫の彫刻、それを見た瞬間に優奈も呼んでやればよかったかなぁってさ。

 でも、優奈って八百比丘尼だし、まくさと絵里奈に会わせるにはもうちょっと段取りがいると思った。世間的には電波な中二病だしねぇ……他人の心配なんかしてられるか~ってぐらいに気持ちがいい。

 この開放感をどう表現したらいいんだろ。

 ダスゲマイネ……なわけがない。

 わたしって、こういう時の言葉を持っていない……という想いも、すぐに湯気に溶けてしまって、ただただボンヤリしていた。


 やっと大浴槽から出ると、体がきれいな桜色になっていた。あたしは自分の体に見とれるという、この成長期の女の子にありがちなクセはないけど、この時ばかりは驚いた。スベスベの桜色……大きな鏡にボンヤリ映る自分の体を初めてキレイだと思った。


 きれいね……


 小さく呟いたのが意外に反響してうろたえる。幸い浴室にはあたし一人しかいなくて安心した。

 半ばサロンのようになった脱衣場に出ると、まくさと恵里奈が浴衣に丹前羽織って、アイスを食べていた。

「あ、そんなの食べてえ(´Д`)」

「クリスマスのサービス。さくらもどうよ?」

「食べる食べる!」

 わたしは、据え付けの冷凍庫に向かった。

「その前に、浴衣ぐらい着いや。おんな同士でも恥ずかしいわ」

 あたしは急いで、体を拭いて浴衣と丹前のユニホームになった。

「……賞味期限が、年内いっぱいなんだね」

「だからサービスに回したんじゃない?」

 そう言うまくさと恵里奈の側には、カラのカップが一つずつ。

「あんたたち、二つ目!?」

「誰かさんが長風呂してるからよ」

「あたしのせい?」

「ハハ、おかげかな。気がねせんと三つも食べられた」

「え……!」

 よく見ると、恵里奈のカップは二つ重ねてあった。

 温泉は、小さい頃に家族で来て以来。この開放感と阿呆といっていいほど頭を空っぽに出来るのが、世のオバサンやオネエサンに人気がある理由だと悟った。

「せやけど、クリスマスの晩に女三人でくつろげるのは、まだ、うちらお子様やねんやろね」

 晩ご飯の一人用の鍋をハフハフ食べながら恵里奈。

「どうして、これら毎年やってもいいよ」

「さくらって、変に大人びたとこがあるのに、こういうことには、まだまだネンネなんだね」

「どういうことよ?」

 あたしは、蟹の脚から実をほじくりながら横目になる。

「やっぱ、クリスマスは彼と二人でしょ」

「せやせや、女同士の温泉は、年末年始の休み中とかやな」

「この冬空の下のどこか、いずれあたしといっしょにクリスマスの夜を過ごしてくれるオトコが居るんだよね……」

「まあ、高校一年では、早すぎるけどな」

「どんなオトコなんだろうね」

 あたしの頭に一瞬四ノ宮クンの顔がうかんだ。

「あ、ありえない!」

「ありえないとは、失礼でしょ」

「い、いや、まくさのことじゃないわよ」

「ははん、特定のオトコの顔が頭にうかんだな?」

「ち、違うってば!」

「お、さくらが、真っ赤なバラになった!」

「もう、お鍋煮上がっちゃうわよ!」


 それから、寝るまで三人で喋りまくった。脳みそを使わずに、ポッと頭に浮かんだことを好きずきに。この三人組だから出来ることだ。


「なあ、ドッペルゲンガーて知ってる?」

「なに、ドイツのお菓子かなんか?」

「まくさは、すぐ食い物の話やな」

「あたし、知ってるよ。自分と同じ人間のことでしょ。萩原朔太郎やら太宰治が書いてるよ」

「さすがは、さくらやな。うち、試合中に見えた」

「え、見たの!?」

 まくさといっしょに、恵里奈の布団に潜り込んだ。

「試合が、フルセットまでいってヘゲヘゲの時に、相手のセッターの子がうちに見えてん……」

「それで……?」

「それがな……」


 深夜まで盛り上がった、箱根の女子会。まだまだ続きます……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 香取            北町警察の巡査

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