大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・069『演劇部の大発明』

2023-12-19 16:10:07 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
069『演劇部の大発明』   



 令和の時代から昭和の宮之森高校に通ってる。


 多少の問題はあった、学校のトイレがみんな和式で音姫も付いてないとかね。体育の時間はブルマだとかね。むろん授業はつまらないけど、それは令和でも同じだから問題ない。

 狭い学校の付き合いだから断言はできないけど、人間はおもしろい。

 1970年は、前の年に学園紛争というのが完全に敗北。10円男に聞くと、主題は日米安保阻止だったとか。

「ええ、なに言ってんの、安保無しでどうやって日本守るの?」

「それは……」

 いろいろ十円男は言ったけど、ぜんぶタワゴト。やれ、革命だ! 造反有理だ! 国連だ! 話し合いだ! 共産主義だ! ゲバラだ! 毛沢東だ!

 あ、面白かったのがゲバラ。

 10円男は「チェ!ゲバラ!」と、かならず名前の前に「チェ!」って言うから「尊敬する人に、どうしていちいち『チェ!』なんて舌打ちすんのよ?」と聞いたら、スペイン語かなにかで「チェ」っていうのは「やあ!」とか「よ!」とかの呼びかけの言葉で、まあ「ダチ」ってな意味なんだって。

 あっちの国で「同志ナニナニ」って言うのと変わらない。

 で「チェ加藤!」って呼んだらムッとしてた。

 ホームルームや委員会でも、けっこうアグレッシブ。MITAKAじゃ、けっこう盛り上がってるしね。真知子、たみ子、ロコ、佳奈子も前向きな子たちで、いっしょに万博旅行したのは一生の思い出になるかもしれない。

 クリスマスイブの24日に『イブの集い』をやるために『フォークの集い』をやっている。

 まだ二回やっただけだけど、手応えは十分。

『エーデルワイス』でスッゴク盛り上がった。直前に『青年は荒野を目指す』をやってたんだけど、その三倍は盛り上がって、特に女子は四倍くらいに熱が入っていた。

 ちょっと不思議なんで家に帰ってから、改めてググってみる。

 ああ、そうなんだ!

『エーデルワイス』は『サウンドオブミュージック』ってミュージカル映画の挿入歌で、映画は65年のアメリカ映画で、アカデミー賞を五つも獲ったっていう不朽の名作。小学校で習った『ドレミの歌』も、この映画の歌だって発見して、グッと親近感。みんな、この映画『サウンドオブミュージック』の印象があるから、あんなに盛り上がったんだよね。

 これをスラスラギターで弾いた10円男は、根は案外のロマンチストなのかもしれない。

 その昭和の宮之森の数少ない不満が一個。

 土曜日にも学校がある!

 週休二日っていうのは世界の常識! お祖母ちゃん流に言うと神武以来の決まり事! だと思うんだけど。

 でも、今までは、そんなに気にしなかった。

 でも、今週は疲れたからね……ひとしおなんだと思う。


 ええ、すごいじゃん( ゚Д゚)!!


『フォークの集い』も三日目の今朝、商店街をロコといっしょに学校に向かっていたら、真知子とたみ子が追いついて来て「演劇部が大発明してくれた!」と言って、教室に行く前に演劇部の活動場所である図書分室に向かった。ドアを開けて、思わず三人口を突いて出たのが「「「ええ、すごい( ゚Д゚)!!」」」だよ。

 まるで、本物のファイアーストームだよ!

 四角い箱の中に薪がくべてあって、そこから真っ赤な炎がボウボウと燃え盛ってるんだけど、これが、ちっとも熱くない。

「ええ?」「なんか、仄かに涼しいくらいですよ」「どういう仕掛けぇ?」

 不思議に思っていると、ジャージ姿の美人さんが腰に道具袋(あとで聞いたらガチ袋というらしい)を下げて入ってきた。

「千秋、どういう仕掛けなのぉ?」

 美人さんは智満子の知り合いで千秋というらしい。

「あ、演劇部の部長の牧内千秋。こっちはMITAKAの仲間」

「どうも、ほんとはもっと早く仕上げるつもりだったんだけど、まあ、気に入って頂けた感じだからよかった」

「で、どういう仕掛けになってるんですか?」

 ロコが子犬みたいにピョンピョン。

「いったん、スイッチ切るわね」

 ペチ

 見ると箱からはコタツみたいなコードが伸びていて、そのスイッチを切ると、炎は瞬間で輝きも勢いも失って沈んでしまった。

 ええ?

「覗いてみて。説明するよりも早い」

 どれどれ(._.)

 オオ! なるほどぉ!

 箱の中には小さな扇風機とライトが入っていて、箱の縁には、ダミーの薪と、その内側に炎の形に切られた赤とオレンジの布切れが張ってある。

「スイッチ入れると、扇風機で布が吹きあがって、ライトに照らされて、まあ、ファイアーストームに見えるわけです」

「す、すごい発明です!」

 ロコは、もうノーベル賞受賞者を見る目だよ(^_^;)

「ううん、昔からある手法よ。でも、こんなものでも女子だけのクラブだとなかなかでねえ。まあ、今日からは、ほかの照明も含めてなんとかするから」

「そうね、これでいちだんと盛り上がるわ、ありがとう千秋」

「いいよいいよ、役に立ったんならこっちも嬉しい」

 
 放課後、三回目の『フォークの集い』が盛り上がったのは言うまでもありません。

 おかげで、わたしのLED照明も忘れられて、ホッと胸をなでおろしたよ。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  


 

 

 
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やくもあやかし物語2・021『戦い済んで・1』

2023-12-19 10:49:41 | カントリーロード
くもやかし物語 2
021『戦い済んで・1』 




 ね、やって見せて!


 ソフィー先生が席を外すと、子どものような目をして王女さまが言う。

「え、ここでですか!?」

 ネルが目を丸くする。

 わたしとネルとハイジは、デラシネをやっつけたので、その報告に王女殿下の部屋に呼ばれている。

 時々ソフィー先生が「跳んだ高さは?」とか「敵との距離は?」とか「命中率は?」とか専門的なことを聞いてタブレットに入力して、一通りまとまったんで司令室へ戻って行った。

 それで、それまで真面目に聞いていた王女さまは、自習時間に監督の先生が出て行った生徒みたいに精神年齢の下がった表情になってネルに言ったんだよ。

 耳をクルンチョと曲げて、手を使わずに耳の穴を塞ぐのを見せて欲しいって。

 ほら、デラシネとの戦いでやってたでしょ(019『デラシネの攻撃!』)、耳をクルっと巻いて耳の穴を塞いだ、あれよ。

「え、そんなのやってたのかぁ! 気が付かなかった、ハイジも見たいぞ!」

 ハイジも懸命だったので気が付いていなかったんだ。

「え、あ……では、ちょっとだけ」

 しゅんかん息をつめたような顔になると、ネルの耳はクルンと巻いて見事に耳を塞いだ。

 パチパチパチ

 お行儀のいい王女さまは、キチンと感動の拍手をされる。

「は、拍手されるときまりわるいです(^_^;)」

「おお、それでハナクソとかもほじれるのかぁ?」

 ハイジがバカを言う。

「んなことするかあ!」

「でも、見事です。見事にデラシネをやっつけて、しばらくは森も平和になると、ティターニアもお礼を言ってましたよ」

「ええ、ハイジたちにはお礼来ないぞぉ」

「森の者たちも舞い上がってしまって、気が付いたらあなたたちも帰ってしまっていたそうよ」

「アハ、でしょうね」

 たしかに、あの後の森のざわめきは止む気配が無くて、それでわたしたちも帰ってきたんだし。

「たぶん、このあとお礼を言いにくると思うわよ」

「あ、そうなんですか(^_^;)」

「はい、森の者たちは、そういうところキチンとしているから。あなたたちも、キチンと受け止めてあげて」

「「「はい」」」

「森の件はひとまず置いておいて、もう一つ伝えておくことがあるの」

 え、なんだろう?

「実は、日本から聖真理愛学院の生徒たちが修学旅行で来ることになっていたんだけど、事情で二月に伸びてしまったの。他の先生たちや生徒たちにも伝えておくけど、なにかおもてなしのアイデアを考えておいて欲しいの」

 あ、そうか。いろいろドタバタして忘れていたけど、たしかにそういう話があったよ。

 忘れたまま突然的に来られたら、アタフタして何もできなかっただろうけど、クリスマスや正月を挟んで二か月あれば、じゅうぶん準備もできるだろう。

 ちょっと楽しみが増えた気持ちになって、王宮を後にして学校に戻る。

 エリアゲートをくぐって、学校への道にさしかかると、森の方から風が吹いて来た。

 ピュゥ~

 そして道の真ん中で渦を巻いたかと思うと、背中に大きな蝶々の羽を付けた銀髪のきれいな女の人が空中に現れた!

 ティターニア女王だ(⊙∀⊙) !



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
 

 

 

 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第24話《四日目のさくら》

2023-12-19 07:17:57 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第24話《四日目のさくら》さくら 




 二日と三日はグータラな正月だった。


 大晦日から元旦にかけては、恵里奈とまくさの三人で、初詣のハシゴをやって、家に帰ってからは一日寝ていた。夕方に起きてトイレに行ったら、兄貴を感じてしまった。
 便座に無防備で座っていたところを開けられたことじゃなく、便座の蓋がスーっとゆっくり閉まったときに――ああ、ソーニイが直したんだ。と、シミジミ感じた。


 夕方帰ってきた兄ちゃんは、パソコンで、なにやら調べていた。

 新幹線の時刻表と博多駅の構造を調べている様子だ。


「博多にでもいくの?」

「攻撃するためには、敵の情報を知るのが肝心だからな……」


 それ以上は機密という顔をしてしまったので、あたしは、後出し分の年賀状を書いた。友だちが少ないので年末に出したのは十枚ほどだったけど、三枚番外のがあった。今の担任と中学の担任の先生。そして、白石優奈。


 二日の朝は、兄貴がふらっと近所を散歩するようなナリで出て行った。あたしはバイトに行くお姉ちゃんといっしょに家を出た。第一目標は年賀状を出すことだったけど、ポストが駅前にしかないので、ついでに渋谷にでも出てみようと、定期、お財布、スマホの三点セットを持っている。

「ねえ、あれソーニイじゃないの?」

 デミーズから、ジャケットにマフラーだけという軽装の兄ちゃんが出てきたのをあたしは目ざとく見つけた。

「ちょっと、年賀状は?」

「行った先で出す」

 そう言って、兄貴を追跡することにした。


 ソーニイは、渋谷で山手線に乗り換えた。


 お姉ちゃんと別れたあたしは、品川駅までの切符を買って、あとをつける。

 予感は当たって、兄貴は品川駅で降りて新幹線のホームに向かった。急いで入場券を買って後に続く。

 前から三番目の乗車マークのあたりで、新聞を広げ始めたので、あたしは大胆にも隣の乗車マークのところで、兄貴の背中を視野に入れつつ立ちんぼした。

 五分ほどすると、明菜さんが、キャリーバッグを引きずりながらやってきた。

 明菜さんは、驚いた様子もなく、兄貴の後ろに立つと、頭をポコンとした。なんだか、約束していたカップルみたいに見える。

 一言二言交わすと、スマホを出し合って番号の交換をしている様子。

 それから、電車が来るまで十分足らずだった。二人は、ほとんど喋らないどころか顔も見合わせない。入ってきたのぞみのドアが開くと、やっと二人は向き合うと、げんこつ同士ぶつけるアメリカ映画でガキ同士がやるような別れの挨拶。明菜さんが乗り込み、発車すると、のぞみの姿が見えなくなるまで兄貴は見送っていた……。

 しまった(꒪ꇴ꒪|||) !

 家に帰って玄関を開けようとしたら年賀状を出してないことに気付いて、駅前のポストまで戻る。ちょっと凹んだ(-_-;)。


 そして、二日後の四日。再び品川の駅に兄貴といる。ただし横須賀線のホーム。


「さくら、付けてくるの、ヘタッピーだよな」

「え……?」

「渋谷から分かってたよ。品川じゃ、さくらが入場券買うの待ってたんだぞ」

「ソーニイ、人が悪いよ!」

「ちょっと早いが、男と女の有りようの観察させてやったんだ。感謝しろよ」

「ソーニイ、自衛隊に入って人が悪くなった」

「思慮深くなったんだ。昔のオレなら、渋谷でさくらのことまいてるぞ。観察と分析、戦闘行動の要諦だ。おまえも、もう半分女だ、スマホで撮った明菜の顔とか、よく見て勉強しろ」

 新聞丸めたので、頭をポコンとされた。我ながら軽い音がする。

「今度戻ってきたら……夏かもしれない。父さん母さん頼んだぞ……それから、さつきのこともな。シャト-豪徳寺の東大生は悪い奴じゃない。まあ、歳の離れた友だち程度の気持ちでつきあっとけ」

「え、なんで……( ゚Д゚)」

「観察と分析。とにかくさくらは人間関係ヘタクソだから、勉強しとけ。じゃあな」

「まだ、電車来てないよ」

「兄妹で映画みたいに見送られるのはごめんだ。早く帰って冬休みの宿題をやりましょう。英語がまだ残ってんだろ」

「ウウ……」

 なんでもお見通しのソ-ニイだった。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査

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