大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:218『キャンプは続くよ岩戸前』

2023-12-04 10:58:56 | 時かける少女
RE・
218『キャンプは続くよ岩戸前』テル 




 岩戸の前は広場とは名ばかりの三十坪ほどの空き地だ。


 三十坪というと、家の前の私道部分を含んだ我が家の敷地と同じ。

 近所も似たような家ばかりで、三十坪というのは、やっと十七年の人生の全てが詰まっている単位。車庫付き三階建てで、四人家族で住むにはまずまずの広さ。

 しかし、九人の人間と一頭の馬が焚火を囲んでキャンプするには少し狭い。

桃太郎二号:「でも、ギューギューしてて楽しいぞ(^▽^)」

ケイト:「うん、なんだか秘密基地みたいでワクワクするなあ」

雪舟ねずみ:「ムヘンでは戦車に乗っておられたのでしょう、普通の車でも車中泊はこたえますが、大変だったんじゃないんですか?」

タングニョ-スト:「寝る時は戦車の外だ。砲身にキャンバスをかけて、あちこち結わえると、けっこうなテントになるんだ」

ヒルデ:「ああ、エンジンルームの上なんか暖かくて四号なら三人は寝られたな」

ヨネコ:「なんか、おもしろそう」

ヒルデ:「でも、それは戦争をしている時だ。普段は兵舎のベッドで寝ている」

桃太郎二号:「そうなんだ。与一のおじさんは?」

与一:「馬次第だな」

ヨネコ:「馬?」

与一:「ああ、慣れた馬だと腹に寄りかかって寝させてくれる」

ヒルデ:「そうだな、馬にひっついて寝ると暖かいぞ」

タングニョ-スト:「よっぽど慣れていないとできないがな」

ヒルデ:「馬と言うのは三十分もすると起きてしまうんだ。起きると立ち上がってしまう。野生生物だったころの名残だ」

タングニョ-スト:「常に警戒していないと、天敵の獣に襲われてしまうからな」

テル:「馬は立ったまま寝ると聞いたことがあるけど」

与一:「ちゃんと横になるよ、よっぽど慣れてくると、人が寄りかかって寝いる間は起きたりしないがね……斑駒はどうかなあ……」

 与一殿が近寄って、首のあたりを小さく叩くと、それがスイッチだったみたいに膝を折って就寝の態勢になる斑駒。

イザナギ:「さすがは高天原の馬だ」

桃太郎二号:「オレ、斑駒といっしょに寝る!」

ヨネコ:「あ、あたしもぉ!」

ケイト:「自分もぉ!」

与一:「三人一緒でも十分いけるだろ」

三人:「わーーい(^▽^)」

テル:「与一殿はいいのか?」

与一:「わたしは鎧を着たままですからね、馬が嫌がる」

ヒルデ:「常在戦場の心がけだな」

与一:「いやあ、大鎧というのは着脱が大変でしてね、武将の無精です」

桃太郎二号:「下手な洒落ぇ( ´艸`)」

テル:「譲ってもらって失礼だろ」

 ポコ!

桃太郎二号:「イッテー!」

与一:「いいさ、待つのも戦の内、肩に力が入っていてはもたないさ」

ヨネコ:「桃太郎にはもったいないさぁ」

桃太郎二号:「ヨネコ、日和やがって!」

 アハハハハハハハハ(^▽^)( ´艸`)((´∀`))


 和やかに最初の夜が更けていった。


 ある程度の覚悟はしていたが、三日経っても四日経ってもイザナミさんは姿を現さなかった。

 少しでもキャンプを快適にしようと、周囲の草や木を刈り取り、刈り取った木は自然に乾いて薪になって、いつしか広場は百坪近くになった。

 与一殿も鎧を脱いで小具足姿(鎧の胴を脱いで、小手と脛当てだけの姿)で過ごすようになった。


 そんな夜半、夜明けに近いころ、異変に気付いて目が覚めてしまった……。


☆ ステータス
 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第10話《待てない未来がある・1》

2023-12-04 07:09:32 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第10話《待てない未来がある・1》 



 ドサ


 空から靴が降ってきた。

 体育の時間にグラウンド用に使う学校指定の運動靴。

 危ないなあ……!?。

 一瞬、見上げた校舎の屋上に人の気配。


「どうかした?」


 体操服の佐久間まくさが近寄ってきた。

 今日の四限は実質二学期のおしまいなので大掃除になっている。帝都女学院の生徒は全員体操服に着替えて担当区域を掃除の真っ最中。

 で、あたしたちのクラスの半分は、北校舎外周の掃除に当たっていて、落ちてきたのと同じ運動靴を履いている。


 この運動靴はヤバイと思った。


 第一に「白石」と書かれていて、うちのクラスに白石という子はいないこと。

 第二に、その靴が、ほのかに暖かいということ。つまり寸前まで誰かが履いていたということ。

 第三に、屋上に人の気配がしたこと。

 第四に、屋上は危険なので、清掃区域には入っていないこと。


「声を上げないで上も見ないで」

「え?」

「……白石って子が屋上から飛び降りようとしてる」

「ええ……( ゚Д゚)!?」

「静かに……先生呼んできて」

「う、うん……」

「早く、あたしは屋上に行ってみる……」


 まくさは、校舎をまわって体育館を目指す。土足のまま一番早く行けそうなのが体育館の教官室だったから。やっぱ、機転の利くセッターだ。

 わたしは、ゴミ置き場のゴミだか備品だか分からないロープを持つと、校舎まではゆっくりと……校舎に入ると、土足のまま階段を一段飛ばしに上がっていく!

 
――あたしの早とちりでありますように!――


 こういう時の勘は当たる。

 四階から屋上に上がる扉の鍵は開いていた。屋上は普段は出入り禁止で、鍵は先生でないと自由にならない。

 隙間から覗くと、体操服にロングの髪靡かせた子が、柵の外側に立って校舎の北側をじっと見ている。

 北西側には、恵里奈たちが掃除の真っ最中。


 ……恵里奈たちが居なくなるのを待って飛び降りるつもりなんだ!


 わたしは、自分の体に袈裟懸けにロープを巻くと、端っこをドアノブに結びつけた。そして、ゆっくりドアを体一つ分だけ開けて、離れたところから柵を越え、白石さんに近づいた。街の喧噪と風の音で気づかれることは無かった。

 でも三メートルが限界……そう感じたとき、白石さんが振り返った。同時に、あたしは語りかけた。

「靴落としたわよ。白石さんでしょ?」

 振り向いた顔に見覚えがあった。

 勉強はできそうだけど、あたし以上に人間関係が苦手そう。あたしみたいな無口じゃない。廊下や食堂で、たまに見かける彼女には、いつも取り巻きがいて楽しそうに冗談なんか飛ばしていた。

 でも、この子の目は笑ってないなと感じたことを思い出した。

 人の中に居ても孤独な子っているんだ……と思った。

「やっぱり落としてたのね……」

「何度かあなたのこと見たことがある。ちょっと同類のような感じがしてたの……」

 それから、なにか話したんだけど、覚えていない。


 だって、事態は急展開したから……。 


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 香取            北町警察の巡査
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