コッペリア・41
ゴールデンウィークといっても、学校は暦どおり、今日と明日は授業がある。
本格的な連休は、5月2日の土曜からである。なんとも邪魔くさく半端な授業が月、火、とんで木、金と続く。
二年生は、どこか、まだギクシャクしている。やっぱり、こないだの学級改変問題が尾を引いている。
すっかり学校不信になった者や、その便乗者たちが二割も休んでいる。そのリーダー的な存在が、PTA会長の娘、青木穂乃果だ。
「学校は、まだ正式に謝罪もしていないし、対策もとっていません。わたしたちは痛みを受け止めながら、クラス編成をもとに戻すことを要求します。なしくずしの現状変更は断固認めません。神楽坂のみなさん、いっしょに戦いましょう。保護者やマスコミ、そのほか応援してくださる方々に感謝するとともに、いっしょに戦ってくださることを期待します!」
そんな檄文のようなメールを、学校関係者やマスコミに送っていた。
「青木さんて、どうなの。普段から、こんなに愛校精神とか持ってるような子だったの?」
パソコンの画面を見ながら、栞は咲月に聞いた。
「……あんまり学校には関心のない子って感じ。こんな過激なこと言うの初めてだと思う」
「この上、元に戻したら、学校を撃沈できるかもしれないけど、あたしたち生徒が、一番迷惑こうむるよ」
パソコンのスイッチを切ると、栞は立ち上がった。
「どうするつもりなの?」
「先生の組合は認めないけど、世論は完全にあたしたちの味方になってる。これ以上混乱させることは、かえってみんなの為にならない。直接青木さんに会って話をつけてみる。もうこの問題で、振り回されるのはごめんだし」
振り回されている人間が、もう一人いた。AKPの矢頭萌絵である。
「萌絵ちゃん、どうして名古屋で収録の仕事やりながら、アキバのシアターにも出られたわけですか?」
「いや、それが……」
AKPのスタジオで、マスコミから突っ込まれる萌絵であった。
萌絵はAKPの総監督で、みんなの動向は常に把握している。昨日のお助け飛び入り出演のことも何度も映像で見なおしている。あれは、どう見ても自分自身だし、あの状況(堀部康子が交通事故の影響で本番に穴を開けたら、自分は映像通りのことをやったとも思う。みんなも「あれはソックリさんなんかではなく、矢頭萌絵本人であった」と口をそろえて証言している)
そんな話を聞き、何度も映像を観て、みんなの話を聞いているうちに、本当に自分が超常現象を起こしたような気になってきた。
二つの問題は、まだもう少し尾を引きそうな様子。
刺激的な連休になりそうな予感がする栞であった(^_^;)。