大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『岳飛伝・3』読了

2016-12-20 07:28:21 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『岳飛伝・3』読了


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは悪友の映画評論家・滝川浩一クンが個人的に流している読書感想ですが、面白いので、本人の了解を得て転載したものです。

  いやいや、年末近い本屋ってのは罠だらけの森みたいなもんで、入ったが最後、何冊も抱えてしまいます。
「岳飛伝」…大橋っさん以外には説明がいりますかねぇ。こいつは北方謙三の水滸伝(19巻)シリーズで、水滸伝が直訳本の半分位の所で宋江(梁山泊頭領)が死んでしまい、その後を頭目の一人、青面獣楊志の養子(洒落ではない)である楊令(楊令伝15巻)が継いで、現在 楊令の死後の話になっています。
 
 岳飛は南宋の軍閥で実在した将軍です。物語では宋の童貫(この人も実在)に鍛えられた武人で、楊令と戦ううちに男同志の絆を深めるという設定になっている。さて、梁山泊に集った108人の好漢達も粗方は亡くなり、もはや10名程が残るのみ、永く梁山泊の頭脳であった智多星呉用も死の床にあり、史進・李俊・燕青らはいるものの、第二世代の時代になっている。双鞭呼延灼の息子 呼延凌が軍総帥、宣賛の子 宣凱が呉用の後を継いでいく。元は宋の王室を私する官僚に反旗を翻すべく集まった梁山泊も、宋滅亡と共に その存在形態を変化させ、今や軍を持つ先進経済地域となっている。

 そんな中にあって、この変化を楊令の抱いた夢と信じて邁進する者、もはや楊令を知らずに育った世代、変化に馴染めず老いを感じ孤独の中に生きる者……と人間模様も多岐に入り組んだ世界になっている。
 そもそも「水滸伝」を知らない向きにはチンプンカンプンですかねぇ。もう少々お付き合い……元の明末~元初に出来た演義(講談本/小説)は宋代に現実に有った反乱を元ネタにしています。梁山泊頭領の宋江なんてな人も実在したそうです。その実話に数々の英雄(関羽の末裔で大刀関勝とか)を加えて壮大なお話にしてあるのです。
 さて、第三シリーズの主人公はかっての敵将・岳飛。この人が実在だとは先述しましたが、実史では北方の金に敗れ、揚子江の南に南宋が建つのですが、南宋丞相榛會は金との講和を目指し、岳飛はあくまで主戦派。南宋成立2~3年で岳飛は榛會に毒殺されるのですが、どうやらこの2年余りで12~3巻にはするつもりみたいですねぇ。この後は ご存知の通り、モンゴルの侵攻で金も南宋も無くなっちまう訳ですが、それでも梁山泊は生き残るのか?まぁ、このペースだと どえらい先の話になりますが………。


 いやはや、なんとも尊敬されたものです。わたし(大橋むつお)は水滸伝(19巻)楊令伝の7巻までは読んでいますが、ざっと読んだだけ。本というのは、好きならば、10回、20回と読むモノです。滝川のオッサンは、そういう読み方をしております。わたしは、もう自分の部屋に本が入りきらないので、図書館で間に合わせておりますが、「罠だらけの森」というのは確かにその通りで、赤川次郎から、瀬戸内寂聴まで、ここで見つけました。わたしは乱読で、読んだ尻から忘れていきます。しかし記憶の引き出しには残っているようで、ときどき、自分で本を書いている時に浮かんできます。
 先日から、新連載小説『真夏ダイアリー』を始めました。ごく最初の部分しかプロットを考えていません。引き出しから、自然に飛び出してくるのを待って書き続けていくつもりです。主人公は「冬野真夏」 そう、名前から、この小説は始まっています。苗字と名前がガチンコしています。そこに青春の矛盾と、「真夏」という名前に、熱い青春を象徴させています。
 マッタリした友だちに「春夏秋冬省吾」というのがいます。苗字読めますか? 「春夏秋冬」で「ひととせ」と読みます。他に「中村玉男」という、どこかで聞いたことがあるような、ちょっとオネエな感じの男の子も出てきます。等身大の高校生(高校演劇で、好んで使われる)を書こうなどとは、思っていません。こんな女子高生、こんな友人関係、こんな青春があったら面白いだろうなあ。そんな思いで書き始めました。
 同じようなモチーフで、『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』があり、これは出版されました。書店に出た部数が少なく、今はネット販売で、僅かに出ています。希少本という事らしく。新古品のものなど5万円を超える法外な値段が付いていますが、青雲書房に、直接注文いただければ、定価の1260円でお求めになれます。
 なんだか宣伝になってしまいました。今は小野寺史宣さんの『みつばの郵便屋さん』ポプラ社を読んでいます。メグ・キャボットの『プリンセスダイアリー』なんかもお勧めです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・{The Wizard of The Education}

2016-12-19 06:56:48 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
{The Wizard of The Education}
        


 おもしろい男が応募してきた。

 元はアメリカのマジシャンで、数年前に来日、一年余りジョージのマジックショーでゴールデンタイムで38の数字を叩きだした男だ。
 一年で、ふっつりと番組を辞めた。
「一年契約だし、私のタネを見抜けた人間が現れなかったからね」
 ジョージは、それから全国的に有名な進学塾の講師を務め、教え子の99%を希望校に進学させた。1%は不幸にして交通事故で亡くなった5人の高校生。だから並の統計方法では100%になる。ジョージはThe Wizard of The Educationと呼ばれた。
 そいつが、日本国籍を取得してO市の民間人校長に応募してきたのだ。

「三年で、国公立への進学率を50%に引き上げます」

 自信満々でジョージは言ってのけた。論文も面接も非の打ちどころが無かった。
 演説や論戦では自信のある市長が言い負かされた。市長は上機嫌でジョージを採用した。

「君、そう君だよ」
 校長の辞令をもらったジョージは、市役所の廊下を歩いていて、悄然として市教委に向かおうとしていた初老の男を呼び止めた。
「君は、立花さんだね。訓戒か戒告で済むように祈ってるよ。まあ、期待薄だがね……君は結果を出せなかった」
 立花は、私立X高校の民間人校長だが、彼が校長になって以来X高への進学希望者も、大学への進学率も落ち目で、おまけにパワハラで元職員と係争中である。市教委は事情聴取というカタチでアリバイを作り、この年度末で諭旨免職にもっていく腹である。

 ジョージは着任式で、ボロ校舎が立派な新築になるイリュージョンを見せた。どよめきが起こった。

「今のはイリュージョンだが、私と君たちとのホープでもある。大事なものはイマジンだ。二年生は二年後、三年は一年後の自分をイメージしてみよう。I wish I wereじゃなくてI shall! I will!だ。目をつぶりなさい。one, two,three,で目に浮かんだもの、それが君たちの将来の世界だ。one,two,three! どうだ、浮かんだかい。浮かばない人のために奇跡をおこそう」
 ジョージが指を鳴らすとAKPの人形が現れた。
「この人形に魔法をかけよう。1……2……3!」
 ジョージが手を叩くと人形は本物の選抜メンバーに変わった。そして『恋するフォーチュンキャンディー』がかかり、ジョージが先頭を切って、選抜メンバーと踊りだした。数秒後には次々と生徒が、教職員が踊り始めた。ジョージのスタッフたちが、それをビデオに撮って、午後の入学式が終わったころには、ユーチューブに投稿され、その日のうちにアクセスは三万を超えた。

 変わったところでは、人権推進部の先生に「在日外国人の生徒に本名宣言を迫るのはやめてください」と真剣に言った。
「しかし、社会の差別や偏見と戦うために……」
「戦わせた、その結果に、先生や学校が責任をもてますか。大事なのは差別し偏見を持つ人や社会と先生自身が戦うことです」
 このジョージの言葉は賛否両論だったが、ジョージの人気は決定的だった。

 三年後、ジョージはX高校の国公立進学率を本当に50%にしてしまった。

 市長は喜び、共同の記者会見を開いた。
「私は三年前にお約束した通りX高校の進学率を伸ばしました。そうですね市長」
「おっしゃる通り、民間人校長の登用は間違っていませんでした。ジョージ校長に脱帽です!」
「しかし、先生が二人亡くなりました。五十人の生徒が学校を去りました。二つの運動部と三つのクラブが廃部になりました。ただ、私は、それを楽しくやって見せました。たしかに進学者は増えました。X高校としては……でも、大学の定員に変化はありません。つまり、他の有能で本来なら国公立に合格できた他の生徒を排除しただけです。私のやったことは魔法と同じです。ここに落ちてくる爆弾は排除できますが、それは他に落ちるだけ……と同じです。先に述べたように犠牲者も出しました。でも、本人も周りも犠牲とは思わないように……そうしただけです。それでは約束を果たしましたので、私はこれで失礼します」

 ジョージは辞表を出して、その場を去った。そして、その年の選挙で常勝の市長は初めて落選した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『アルゴ』読了

2016-12-19 06:32:17 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『アルゴ』読了


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、我が悪友の映画評論家滝川浩一が、身内に流している読書感想なのですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです。



 典型的な直訳悪文でんなぁ。読むのに時間が掛かってしゃあない。

 話は、1979年に起こった テヘランのアメリカ大使館占拠事件で、当時 運良く脱出してカナダ大使公邸に匿われていた6人を 架空のSF映画をでっち上げ、脱出させるってぇお話し。CIAの公式作戦だったが、1986年まで機密とされ、その後も 各方面への影響に鑑み、当事者の著述は無かったようだ。

 映画台本はインタビューをもとに起こされたようで、本作は映画公開に合わせて書かれたようです。だから、この本が原作って訳じゃない。映画と本作を単純比較すると、脚本のほうが断然面白い。ただ、その筋(ってどの筋?)に聞いた所によると、この本に書かれてはいないが、映画の中のエピソードにはホントに有った出来事が描かれているとか……それがどれなのかまでは解らんのですが……まぁ、実際に有った情報戦だけに どこまで行っても「これが真実だ」ってのは解らんのでしょうねぇ。
 私の聞いている話では、みんなが空港に向かっているその最中に カーター大統領が諫言されて作戦中止となり、あわやの所でチケットがキャンセルされそうに成ったのがそれだってんですが、ちょっと確認のしようがないので“?”であります。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(アフガンゲリラに武器を供給するように働いた上院議員の話)なんかと同じ混乱があります。「チャーリー~」の訳文はもっと酷かったなぁ。
 いずれも映画公開に間に合わせる為、大特急で翻訳したかららしいのですが、「てにをは」の間違いなんてな可愛いもんで、内容に齟齬があって、有り得ない展開に成ってたりしとりました。本作にはそこまでのミスは無いようですが「てにをは」の混乱はそこら中に散見できます。だから 意味が逆転していたりして、途中何度となく読み返しましたわい。これが原文のミスなのか翻訳のミスなのかは判断しかねますが、本作は少なくともプロの物書きが共同執筆者として名を連ねていますから、やっぱり翻訳ミスなんでしょうねぇ。

 昔のミステリー翻訳には専門用語が解らず、ムチャクチャええかげんな訳文が有ったもんですが、さすがに最近ではさほど酷い作品は有りません。突き詰めれば、出版社が間に合わせる事だけを考えた結果って事に成るんでしょう。お粗末。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『ツナグ』

2016-12-18 06:17:05 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『ツナグ』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは、悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に、仲間内に流している読書感想ですが、おもしろく、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。



 映画もやってて、予告編を見ていて「泣かせの映画」だと一人決めしてました。 だからライターの仕事も他の人に頼んで、小説もほったらかしてました。

昨日まで、水の専門書を読んでたんですが、それも終わって……さて、今日から何を読みますかいねと持った文庫が二冊。「ARGO」と、コレだったんですが、なんで「ツナグ」を選んだのか解らないんですが……
 一読、「泣かせ」の対局に有りました。俄然、映画に興味がわいたのですが、これは後の祭り。月末の連休にまだやってたら見に行ってきます。
 さて、ご存知かもしれませんが、「ツナグ」とは、一生に一人だけ、死者との再会をさせてくれる「使者」の事です。
 これは死んだ人にも同条件で、死者も一回一人きりしか会えない。 使者は意外に若い(後に高校生と知れる…この謎は少しずつ解けていく)物語における一人目の依頼者は、突然死したアイドル(飯島姉御を思わせる)に会いたいという、彼女が死んで直ぐではなく、すでに数ヶ月が過ぎている。アイドルなんてな人種がそれまでに誰かと会っていないてな事があるのか、ましてやアイドルにとってもたった一回のチャンス。それを単なる一ファンのために使ってくれるのか。
 他には、母に会いたい息子、親友を無くした女子高生、恋人が失踪したサラリーマン…彼に至っては恋人の生死すら解らない。生者・死者共に心に秘めた想いがあり、また自覚していなかった秘密もある。一つ一つのエピソードには二重三重の展開があり、一夜の邂逅の後に去来する想いも様々である。 そして「使者」たる若者にも重い過去が有った。
「死」を描くのはとても難しい、ことに現在の日本のように確たる宗教観の無い国では 人の死生観もバラバラである。だから、物語の中で年若い「使者」は苦悶する。「死者に会いたいとねがうのは生者の傲慢ではないのか」 読み進む内に解ってくるのは、本作は単に生者と死者が会う話ではなく、互いに等しい存在としての命の物語だという事です。今、自分に問うています、もし自分なら……自分が死んでいたなら……チャンスは一回だけ。
 あまり、語らない方が良さそうです。静かに心に染み込んでくるような本でした。泣かせてやろうなんぞという企みは全くありません。逆に泣かさないで読み通してもらうには どう描くべきか、よく考えられた作品だと思います。さて、映画はどこまで原作に迫ってるんでしょうねぇ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想・『ホビット』映画化に先立って

2016-12-17 06:40:44 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想・
『ホビット』映画化に先立って


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一氏が個人的に『ホビット』映画化に先立って読み散らかした読書感想を仲間内に流した物ですが、映画鑑賞にあたって、お役に立てればと、本人の了解を得て転載したものです。



 前に読み返したのが「指輪物語」の映画化前だから、かれこれ10年以上前になる。
 今回 「ホビット」が映画化されるのでまたひっぱり出して読み返した。 日本での創刊は1951年、 もう60年になる。

 確か、「指輪物語」を発表しようとしたが、あまりの長大さに出版社が二の足を踏み、プレ編を童話仕立てにして出したのが本作だったと思う。
 トールキンの創作の原動力は、イギリスに神話の無きを悲しんでの事、当時 同じ大学の教授であった C・S・ルイス(ナルニア国物語の作者)と共に書き始めた。文学者であると共に言語学者でもあったトールキンは、ストーリーを錬るのと同時に「エルフ」や「ドワーフ」の言語を作ったり、各種族の詩や歌(作曲もやった)を作ったり、本編には書き込まない「世界創世神話」をも作っていた。
 ルイスの方は、ナルニア著述にあたって そこまでアンダーラインを引かなかったようだ。アスランがルーシー達の世界では違う名前で呼ばれている(キリスト)と さっさと裏を割っている。
 さて、「ホビット~行きて帰りし物語」は早々にベストセラーとなり「指輪~」出版の背中を押す事と成るのだが、今回再読して、その世界観のまとまり方に改めて気づかされた。
 作家は、その処女作に 後に続く数々の作品の総てを詰め込んでいるものだといわれる。物書き各位におかれては異論もおありだろうが、私の読書経験からすると十分に首肯できる。ましてや「ホビット~」はトールキンの気か遠くなるような未整理草稿の上に成立している。これ以後、「指輪物語第1部~旅の仲間」に修正が入ったかどうかについては記憶が不確かなのだが、ホビットから指輪1の間は密接緻密に繋がっていて 些かの齟齬も無い。そして「指輪~」で語られる膨大な物語のエッセンスをプレ冒険談として語り尽くしている。まさにトールキンの総てがここにあると言って差し支えないと断言できるのである。
 
 トールキンは、世界を三千年を一区切りとして、三つの三千年紀を語っている。唯一神がまず天使を生み、天使達との合唱の内に世界が創世されていく。この時、不協和音を出した天使が悪魔となり、もともと繋がっていた神界と地上を引き離す原因となる。悪魔を滅ぼさんと地上に残った天使達は後のエルフ達の先祖となる。悪魔対天使の戦で悪魔は滅ぼされるが、その一番弟子と一部眷属はしぶとく残り、この弟子が 後に魔法の指輪を作り、悪魔族対エルフ・人間連合の大戦争となる。
 この戦いもエルフ・人間側の勝利となるのだが、この時 指輪を破壊しなかった為、悪魔の弟子を完全には滅殺できず、後に禍根を残す事となる。
 記憶が定かではないが、確か 悪魔対天使の戦いまでが第一の三千年紀で、悪魔の眷属との戦争が第二の三千年紀の二千五百年、この時 とあるホビットが指輪を偶然拾い 山深くに隠れてから五百年、この間に彼は怪物ゴラム(瀬田貞二訳ではゴクリと名付けられている)へと変身してしまう。
 世界創世から第二の大戦争までの五千五百年の話は、トールキンの死後 彼の子息が膨大な草稿を整理して「シルマリルの物語」として出版している。その後の五百年に関しては「指輪物語 第三部~王の帰還」巻末補講に触れられている。
 現在 日本語訳では、未発表草稿の内から 比較的まとまった逸話を集めた。「知られざる物語(全二巻)」が発行されている。イギリスではトールキンの遺稿総てを整理し 全十巻の本がある。知る限り未だ邦訳はされていない筈で、今回の映画化によって日本語訳が出版されるかもしれない。トールキンフリークとしては涎を垂らして待っているのだが……。
「指輪物語 第三部」で主なる登場人物達はこの世を去り、新たな三千年紀が 今度は人間の世紀として始まる…今は その第三の三千年紀の終末期と捉えられる。さて人間は無事に第四の三千年紀を迎えられるのだろうか…というのがトールキンの含みである。
 翻訳者の瀬田氏に対して何の含みも無いが、ただ、宗教的考察に欠けるきらいがある。訳自体も少々古くなっているので改訂訳を望みたい所。さらに言うと、ホビットがウサギの人格化ではないかと指摘されている。ホビット~ラビットで、至極当然な連想であるがトールキン自身それに言及してはいない(筈である) 瀬田さんは岩波文化人であって、どうしても唯物的思考のお人と思われる。
 イデオロギー・フリーでなおかつ宗教的教養のある人の訳で読みたいものである。いやなに、私が自在に英語を操れれば良いのですがね…………アハハハ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タキさんの押しつけ読書感想『あなたへ』『黄金を抱いて飛べ』『岳飛伝』

2016-12-16 06:51:23 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『あなたへ』『黄金を抱いて飛べ』『岳飛伝』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、面白いので、本人の了解を得て転載したものです

☆あなたへ
 読み終えました。店のお客さんから「映画より良かったよ」といわれてたんで、読んでみようかなと思ったのですが…妙に分かり易く書かれていて、まさに不注意に映画を見ていたら見落とすような所をやけに詳しく書いてあるし、映画とは違った所でショートカットしてある。
 ただ、映画では極めて短いセンテンスの手紙が妻からもたらされるのですが、本には割と長めな文面になっている。
 文庫本「あなたへ」は誤解の仕様のない一本のはっきりした物語で、まぁこれはこれで感動的ではあるのですが、なんかこじんまりとまとまっとるなあっちゅう感じであります。これがあれだけ色々感じた映画の原作なのかと思うと、少々拍子抜けの感が否めない……ちゅうことはです。
 ひょっとして「映画が原作を超えたんかい?」…うっそ~!! マァジですかい!……と思ったのも束の間、本作は映画脚本のノベライズでした、チャンチャン。  
 
 
☆黄金を抱いて飛べ
高村薫の「黄金を抱いて飛べ」も本日読了。 高村のデビュー作で、来月映画公開されます。大阪を舞台とした銀行強盗物ですが、計画、調査、手法がやけに緻密に書かれているのと同じ位、メンバーの一人一人が至極丁寧に描かれています。映画キャスティングは判っているのて、ああ こいつは浅野やな とか思いもってよんどったんですが、さて 主人公の「幸田」をやるのが「妻夫木聡」なんだよなあ……。
 いやいや、妻夫木聡が下手だと言ってるんじゃないんですが、あまりにもイメージと違うキャラクターなので、一体どう演じるのか…興味深いやら怖いやら、頼むから変に原作をいじってなきゃええんですがねぇ~。


☆岳飛伝
「岳飛伝」二巻 終了しましたが、実史でいくと岳飛と榛魁(字忘れた シンカイ)が金に対する開戦・否戦で決裂して暗殺されるまでどう考えても二年ほどしかないんですが、どうも一冊当たり1~2ヵ月位のスピードなので下手したら10巻以上になるんかなと思いますわ。その後も梁山泊が存続するとしたら、やっぱり蒙古の侵攻が次の話になる。さあ、誰を主人公にするんでしょうねぇ。実は、楊令が女真族の女に生ませた息子ってのがいて、金軍のウジュツが養子にしとります。
 こいつなんですかねぇ? はたまた、元帝国になっても梁山泊はなんらかの形で残るのか? そういやチンギス・ハンの後継者フビライの子の内 チャゴタイ・ハンは確か養子だったとおもうんですが、話はこの辺まで続いていくんですかねぇ、どうせなら榛容なり胡延凌なりの子供が日本に逃げて来て世良四郎三郎の先祖に成るとか、アハハハハそれじゃ隆慶一郎ですかい。いずれにせよ、このサーガシリーズ、何処までいくんでしょうねぇ……。

 ところで、今ハタと気づいたんですが……明日から読む本がねぇぞ! ぎゃ~どないしょう~~!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タキさんの押しつけ書評・のぼうの城

2016-12-15 06:58:32 | 映画評
タキさんの押しつけ書評
 のぼうの城


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

 これは、友人の映画評論家の滝川浩一が個人的に仲間内に流している書評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。

ハードカバー発売時、目には留まったんだけど手にはしなかった。
 おそらくは同じように目に留まった “ど(「石弓」を現す字が出てこない)”がイマイチだったのが原因かと……来月映画公開されるのでまぁ読んどこかいと思って読み出したら、これがなんとも良い!

 “のぼう”ってのはデクノボウの事、時は戦国の再末期 秀吉の北条攻めが舞台である。
 北条方の一枝城「忍城(おしじょう)」守兵500人対秀吉方 石田三成・大谷吉継以下20,000人。この忍城守護のトップが“のぼう様”こと成田長親(なりたながちか)。
 デカい身体をしているが武術・体術からっきし、城代の倅ながら 城下の村をうろつき百姓仕事を手伝いたがる。それがまともに出来るならまだしも、麦踏み程度の作業にも失敗する。 百姓にしてみれば有り難迷惑も良いところで 本人にメンと向かって「のぼう様は手を出さんで下され」と言い放つ。言われた長親、悲しそうではあるが一向に怒る気配なし。
 
 さて、この話 れっきとした史実であり、成田側、石田側はたまた公式の戦記にもはっきり記載されている。江戸期の書物には 公方に逆らった者として、必要以上に石田三成を貶めた書き方がされているが、戦闘があった当時のリアルタイム資料が五万と残っている。 本作の面白さは、合戦のスペクタクルと、“のぼう様”が本当に馬鹿者なのか稀代の将器かトコトン最後まで解らないというこの二点。
 時にハラハラ、時に爆笑(こっちの方が多い)しながら最後まで一気に読ませる。作中 長親が内心を吐露する部分は一切ない。その場に一緒にいる人間の評価が示されるだけで、読者にも全く判断が付かない形になっている。一読、隆慶一郎の何作かが浮かんだが…隆さんの作品にも この小田原攻めを扱った部分は多くあるのだが、また違った趣の小説である。
 映画では この“のぼう様”を野村萬斎が演じる、さほどの巨漢ではない彼が いかなる“のぼう様”振りを見せるのか、今からムズムズしている。
 他の配役も、なる程なあ~と思わせるのだが…ただ一点、石田三成が上地雄輔ってのが引っかかる。さて上地君、大化けして大向こうを唸らせる事が出来るか、彼にとってはキャリアの分かれ目になるとおもいます。本の内容にはあまり触れませんでしたが、面白いのは保証致します。是非とも御一読ありたい!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・123『ARISEとお知らせ』

2016-12-14 06:31:01 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・123 最終号
『ARISEとお知らせ』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです



 攻殻機動隊:ARISE4完結いたしました。

 ちょっと違うストーリーを予想していて、肝心の導入部を読み間違って、帰宅してディスクを見返した上で書いています。毎度、本作は一筋縄では行きません。それは全くそうで、なんせ25年前に、今日の社会情勢、水の問題、人間心理の変化……などなど、見事によみきった作品。それをウブカタ・トウが深読みに読み込んで、“公安9課攻性部隊”結成前夜を描いている。確かにファン数はワンピースに比べれば極少数、しかし、そのコアさ加減は並みじゃない。少しでもミスればズタズタにされてしまう。それを、納得の深い溜め息と拍手の中に劇場を巻き込むのだから、こいつは凄い!まさに脱帽です。
 さて、本シリーズ、幕開けから“電脳ハックと疑似記憶”が物語のメインを流れています。各人が、その必要に応じて義体(サイボーグ)化し、肉体に手は入れずとも、何らかのコンピューターと外部接続端子は、この時代の人間には必要な装備
。現代の我々が携帯電話なしに生活する事が困難なようにです。

 ただ、そうなると、外部からの操作で偽物の情報を与えられる危険性が惹起してくる。しかも、与えられるだけでなく記憶を書き換えられる可能性が出てくる。物語の前提として、人間の精神の最奥部には、その人固有のゴースト(魂?個人を個人たらしめる精神)が存在し、未だ、ゴーストのハックは研究中の段階。
 原作①には、ゴーストのコピーを作る逸話が出てきますが、本シリーズは原作の前夜ですから、まだ、そこまでの技術は無いとなっています。
 本シリーズ③のラストに一人の少女が登場しましたが、彼女は草薙少佐と戦えるかと問われ、頷いていました。そのときは、単に電脳ハックのスペシャリスト?くらいにしか思っていませんでした。
 本作導入部、多数の人間が同時にハックされているシーンから始まります。 なる程、そういう能力なんやね……と見ているとさにあらず、彼女はもっととんでもない能力を秘めていました。さらに、その後ろに501部隊の影が見え隠れするわ、軍部の暗躍はあるわ、某国の謀略が絡むは……ややこしいったらありゃしねぇ、とても一回見ただけじゃ取りこぼしが出てしまいます。と、まぁ、あんまり喋ったんじゃファンの皆さんの興味を殺いじゃうんでこの辺にしときます。

 そこで爆弾情報!来年、“攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL”最新作劇場版公開です!どこまで続く? 本作には、原作では不明であった、設定のアンダーグラウンドに答える部分が幾つもあります。一番大きな所はゴーストに対する考え方でしょう。後日、草薙が出会って一体となるA.I.人形使いにゴーストは在ったのか(在ると結論せざるを得ないが、それはこれまでデータ不足で、ストーリー設定を受け入れているだけだった) 草薙と人形使いはネットの中に入っていくが、果たしてネットの中にまでゴーストは持っていけるのか。 ゴーストとは、複雑ではあるが、ある種のデータに過ぎないのか……知的(痴的?)興奮を覚えますね。
 さて、小咄程度ですが、素子達のバックアップロボット(A.I.を組み込んだロジスティック・コンベイヤー・マシン 通称ロジコマ)は、原作では“フチコマ”と呼ばれていました。これは、日本神話にある、素戔嗚尊の乗馬「天乃斑駒」からの命名、アニメシリーズのロジコマが“タチコマ”と呼ばれるのは、「タチコマはフチコマより“立っている”から」……だそうです。(´ヘ`;)はぁ~~なんだんねん!の真相でありました。チャンチャン。


 お知らせであります。 私、映画評のゴーストゴーストライターをやっていた関係で、その下書きを兼ねて、当「押し付け映画評」を配信してきましたが、実は、私に仕事を振ってくれていた編集事務所は、本年初めに解散しています。 今までも、同じような事態は何度かあったのですが、そのたび復活していました。しかし、どうやら今回はこれまでのようで、社長も編集長も、老後の楽しみとか言って、この春から海外に消えとります。

 これまでは、編集スタッフだった女性が二人、仕事を取り次いでくれていたのですが、一人が結婚し、残っていた一人も、今回を最後に別な編集局に就職しました。 まぁ、別に、個人的に見に行ってウダウダ書きゃあええだけですが、ちょっと一息つきたいと思います。 気にはなってるんですよ来週の「舞妓はレディ」えらい顔ぶれです。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」こいつら来年のアベンジャーズに登場?「るろうに剣心」どんな決着? 猿の惑星」予告見る分には予想してたのと違うみたい。「ゲッタウェイ」は期待はずれでしょう。「世界一受けたいお稽古」活ける伝説、ピーター・ブルックの舞台演出ドキュメント。10月に入って「蜩の記」岡田准一 今回はいかに、「ミリオンダラーアーム」インドからメジャーリーガーは生まれるか? 「不思議な岬の物語」大して期待なし。アタシャ吉永小百合さんをあんまり評価しとりません、竹内結子さんも、ちょっとオバチャン化?「誰よりも狙われた男」フィリップ・シーモア・ホフマン遺作、ジョン・ル・カレ原作。「ヘラクレス」う~~怖いなぁ~。あと、年内、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ「美女と野獣」実写、説明不要「エクスペンダブルス3」、期待してます!クリストファー・ノーラン監督「インターステラー」。ついにやります「寄生獣」 ブラピの「フューリー」はプライベートライアンの焼き直し以上の物語を見せられる?ディズニーの「ベイマックス」は日本人のお話、これは何らかのムーブメントの先駆け? 年明け、黒人版「アニー」やいかに、ほんで最大興味は「エクソダス」“十戒”のリブートであります。クリスチャン・ベールのモーセです。“ノア”みたいに、またまたいがんだ聖書物語に成っちゃうんでしょうか、私の記憶に残る、一番始めの映画はチャールトン・ヘストンの「十戒」です。さて、どうなんでしょうね。

 これまで何度も言って来ました。人がなんと言おうとも、あなたが「面白い!」と思う映画が面白い作品です。「こりゃ、テレビでええわ」とか「こんなもん、見やんでええ〓」っつな作品もございますが、それはそれで、見た後ブツブツうなるのも楽しいもんです。 皆さん、映画を愛して下さいね。私のウダウダに返事をくださった多くの方々、喧嘩した事もありましたね。クェンティン・タランティーノは言うに及ばず、リチャード・ロドリゲスファンの皆さん、よう ド突きあいにならんかったですね、いや面白かったです。では、またどこかでお会いするかも……しばし、お別れいたします。

 お付き合い、心より感謝いたします。 サイナラ〓さいなら〓サイナラ〓 アハハハ パクリヤ〓



 ※:次回からは、滝川浩一くんが残した書評やエッセイを掲載いたします。ご愛読ありがとうございました。 大橋 むつお
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画論・122『LUSY』

2016-12-13 06:18:34 | 映画評
タキさんの押しつけ映画論『LUSY』

この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


まず、面白い映画でした。それは間違いなし。

 スカーレット・ヨハンセン主演だから……否定しません。綺麗でした。始めは、ルーシーの役をブラピの嫁にオファーしたらしいが、いゃあ、アンジーで無くって良かったですねぇ、この役は絶対スカーレットどす!ほんまどす! 本編90分あるかないか、相当スピード早いです。これって、リュック・ベッソン的ごまかしでしょうか? 実感としては“???”なストーリーが随所にあります。
 例えば、脳のアクセスが30%くらいで複数の人間を昏倒できるのに、もっとアクセスが上がった段階で敵をそのままにしていたりします。そういうアンバランスが多数存在しますが、割と平生に受け入れて見ていられます。
 ルーシーは、自ら「どんどん人間性を失って行く」と語っていますが、これは増えて行く情報を処理するのにタンパク質とアミノ酸の肉体は不適当だ、という判断とイコールになっていて、これがスムーズに納得出来るストーリーになっているからです。
 正直、あちこちで引っかかるのですが、間に正確な脳科学情報を挟み、展開をスピードアップして、あまり深く考える余裕を与えない、しかも次の展開がスリリングな構成になっていて、画面に目をとられるので余計にそうなります。リュック・ベッソン一流の映画作法ですね。
「ニキータ」や「レオン」と同じく、有り得ない設定をリアルに見せる、あるいはそれ以上に、映画の中に深く感情移入させてしまう。 これが彼の上手さで、成功すると絶大な効果を発揮します。ニキータなんてのは、設定の割に組織が脆弱に感じられ、画面もどこかチープなのに、あまり気にせず見ていられましたからね。
 ルーシーが、脳アクセスアップと共に段々変化していくってのは、あんまり感じられません。一番始めのアクセスアップでの変貌が最大です。あとは、アクセスアップに伴って自分が踏み込む領域に驚いたり感動しているように見えます。 ちょっとネタバレになりますが、重要なファクターは「時間」だと結論され、アクセス100%に達すると時間の流れに乗る事が出来るようになるのですが、そこで彼女が何をするかに注目、ここでドジると、ラストでもありますし、取り返しはつきません。
 スカーレットは少々難ありながら、問題なしです。これがアンジーだったら、もっとえらい事になったでしょうからね。   モーガン・フリーマンはさすがの説得力ちゅか存在感ちゅか、大したセリフが在るわけでもありませんが、彼の存在で映画にリアルを与えています。 敵役、台北のマフィアに「オールドボーイ」のチェ・ミンシク。チャンという名前なので、韓国俳優が中国人を演じているのかと思いましたが、喋っている言葉が韓国語で、韓国マフィアです。ここでも中国人を悪役にしない配慮がされています。舞台は台湾なのにであります。嗚呼、リュック・ベッソンよ、お前もか!ってなもんですが、これもマーケットリサーチの結果、商売商売ですね。

 さて、ハリウッド情報を少々、かつての007 ピアーズ・ブロスマンがスパイとして復活「スパイ・レジェンド」来年1/17公開。この人、幾つになったんですかね。原作はベストセラーのスパイ小説です。
 イントゥ ザストーム 公開3週間で10位落ちですが、4000万$に迫ってます。ほんまに微妙~ですねぇ。
 シン・シティ2が初登場8位の680万$……あっちゃ~ですね。原作者のフランク・ミラーを久し振りに見ましたが、なんか「エルムストリート」みたいになってました。存在が妖怪じみてましたよ。
 1位2位は先週と入れ替わり「亀」が落ちて「アライグマ達」が返り咲いてます。売り上げは、以然低調なままですが、ランク内は400-1800の範囲内、ドングリの背比べ状態で平和に推移しています。
「ルーシー」はランク外に成りましたが、4週間で1億$を超えてますから大ヒットしとります。こっちでも、大体満員の入りで、結構当たっているようであります。
 あっと、もひとつ、「ルーシー」ラストに、日本のアニメ(漫画)ファンなら、思わずニンマリするセリフが有りますよ、どの漫画か指定するとバレちゃうんで、ファンの皆さんお楽しみに〓

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『フェロモンの偽証』

2016-12-12 06:52:22 | ライトノベルセレクト

ライトノベルセレクト
『フェロモンの偽証』



 あれは、転落死したAの葬儀の日だった。

 出棺の時、霊柩車の横にクラスの全員が整列。その時から僕は感じていた。
――かわいい子だな――
 転校して間が無いときだったので、亡くなったAにも特別な感情はなかった。そして綾子の存在にも気づいていなかった。
 霊柩車がクラクションをならして、動き始めた時、綾子が、ほんのわずか前に出かけた。

 僕は察した。

 それからの綾子は、普段通り……と言っても、それ以前の綾子のことは知らないけど、本人と周囲の雰囲気から普段通りだと思った。
 周囲は口を閉ざしていたし、綾子も、あのわずかに霊柩車の前に出ようとしたことを除いて、そぶりも無かった。
 それから、何事も無かったように数か月が過ぎ、僕たちは、それぞれの高校に進学した。

 偶然、僕と綾子は同じ学校に進学し、クラスは違うけど、同じ演劇部に入った。

 本格的な演劇部で、基礎練習をみっちりやらされた。
 基礎練習の中に、人のウソを見破るのがあった。一人が前に出て話をする。ただ、その話の中に一つだけウソを入れ、他のみんなは、話しの後で、そのウソを見破るのだ。人はウソをつくとき、目が動くことが多い。
 僕が前に立った時、僕は、ほんのイタズラ心で、出てくる人間の名前を変えた。OをAと言いかえた。
 誰も、僕のウソを見抜けなかった。みんなには「うっかりウソを入れるのを忘れた」と言っておいた。でも、綾子だけは気づいていた。

 僕は確信した。

「古い話だけど、Aは綾子のことが好きだったんじゃないかな」
 クラブの帰り道に、ほんの世間話のつもりで言った。綾子の顔色が変わった。

 当たっていた。

 中学の頃、Aは綾子のことが好きで、自殺の数日前に告白していたが、手痛くふられてしまった。そのことを綾子は、ずっと気に病んでいた。
「あたしが悪いの、あたしが、あそこまでA君が思い詰めているなんて思ってもいなかったから……」
 綾子は嗚咽し始めた。
「そんな、Aのことは誰にも分からないよ。きっと他にも悩んでいたことがあるんだよ」
 綾子は納得しなかった。人目もはばからず、綾子は僕の胸に顔を埋めるようにして嗚咽し続けた。

 僕は、胸いっぱいに綾子の苦しさを感じた。そして綾子の温もり、髪の感触、匂い立つ香りも……僕は、綾子を本当に愛おしく思った。

 それから十年ちょっと。

「ちょ、じゃま」
 綾子は。寝転んでテレビを見ていた僕を平気で跨いでいった。
「もう三十路なんだからさ、そういうパンツ止した方がいいよ」
「いいの。アナのパンツはゲンがいいんだから」
 今日は上の子の卒園式だ。綾子は、スタイルも物腰も(亭主を平気で跨いでいくことなどを除いて)あのころと少しも変わらない。
 お母さんたちの集まりでも、その可愛いといってもいい女らしさは評判のようだ。会社の仲間からも「いいの見つけたな」とか「純愛の末だもんな」とか言われる。穿いているパンツも、あの時嗚咽した時に付けていたブラとお揃いのアナ雪のアナのパンツだ。

 で、亭主である僕本人は、多少嫌気がさしている。

 あのころ愛おしいと思ったのは、綾子のフェロモンだ。僕はフェロモンの偽証に騙された。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・121『ハリウッド情報』

2016-12-12 06:20:01 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・121
『ハリウッド情報』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


さて、エクスペンダブルス3は初登場1位になったんでしょうか?

 そいつは後のお楽しみ。月刊スクリーンの西森マリーさんのコーナー(この人、映画の引っ掛かり方が私と一緒ですわ)にまたまた注目です。
 今月のテーマは「いかにハリウッドは中国に媚びを売っているか」であります。あったりまえでは在りますが、「トランスフォーマー/ロストエイジ」があんまりっちゃああんまりだったので、アホらしいやら、フツフツと怒りが……中国は近日中に日本を抜いて世界第2の映画鑑賞国(アメリカがトップ)になると聞いていたのですが……2012年既に国内売上27億$を記録、堂々の世界第2にのし上がっています。この勢いだと、2020年にはアメリカさえ抜かれると予想されています。
 まぁ、そうはいかんと思います。数字の取り上げが偏っているし、映画産業総枠の稼ぎからするとまだまだ桁が違ってます。アメリカは何じゃかんじゃで1千数百億$ですからね。ハリウッドとしちゃ13億(15億とも)の人口は魅力ですが、映画を見にいけるのはそのうちの2億に過ぎません(それでもデカイ数字ではありますがね)
 アメリカ国内売上より中国での売上の方が上になる状況も続いています。「トランスフォーマー」がアメリカ17千万$の時に、中国では22千万$でした。「パシフィック・リム」の売上もアメリカ1億$少々に対し、中国11千万$(日本は1千4百万$で桁違い) とは言え、中国は自由市場ではなく「チャイナ・フィルム・グループ」っちゅう中国政府組織の上映許可がいります。外国映画の年間公開は34本(2011年まで20本)でかなりの狭き門。だからハリウッドはなりふり構わずチャイナ・フィルムに尻尾を振る訳です。 最近ハリウッドの悪役から中国人の姿が消えています。東洋人でなければならなければ「朝鮮人」になります。主人公が外国に行く設定も、原作ではフランスになっているものを中国に変えたり、主人公の恋人も、元々アメリカ人だったのに中国人に変更……日常チャメシすぎて、一々あげられない位です。

 当の中国人には、このハリウッドの“媚び”を「中国人を馬鹿にしている」と受け取る向きもあるそうで、何を考えてるんでしょうね? んなもん「商売」に決まっとりまんがな、ハリウッドが目指すのは「金儲け」に決まっとります。
 反中国の作品には、政府様から厳重なお叱りがございます。「セブン・イヤーズ・イン・チベット」なんざ“歴史改竄だぁ~!”てなもんで、どっかの国に対するようにカンカンです。ホンマにどの口がほざくやら、対するハリウッドは馬耳東風(今ならどうなるかわかりまへんけど)どこぞの国も知らん顔しとったらええのにね。いつ靖国に行こうと、こっちの勝手でんがな、ね〓 まぁ、チャイナ・フィルムにも抜け穴があって「合作映画」は範囲外っちゅう事で、今後中国資金がどんどこハリウッドに入りそうです。
 暫くは、ハリウッド映画で中国人が暴れ回りそうですね、しゃあないっす。
 
 まぁ、そら置いといて、“アリス・イン・ワンダーランド”の続編が決定いたしました。キャストはそのまんまで、2016年夏公開、もち“鏡の国のアリス”でんす。
 続編と言や“ミュータント・タートルズ”も2016年に公開決定。これ公開3~4日で発表されてます。
“シン・シティ”の続編が完成しました。ブルースとミッキーはこっちに出るから“エクスペンダブルス”に出なかったのかな?
 さて、ランキングですが、先週の⑧~⑩がランク外に、③~⑦が三つずつ下げてます。中でも「LUCY」が1億$〓“HUNDRED FOOT JURNEY”が邦題決定「マダム・マロリーと魔法のスパイス」…ムムゥ…このセンスはいかがなものか?新登場⑤THE GIVER(1230万$)ちょっと寒い売上、見てないんで解りませんが、“クラウド・アトラス”的失敗?④エクスペンダブルス3(1580万$)……信じられん低空飛行ですが、映画を盗まれ、違法ロードされたらしいです。ダウンロードが200万以上あったとか、災難ですね。③LETS BE COPS(2620万$)毎度お馴染みバディコップ・コメディ……全然知りませんでした。当の制作者が一番ビックリしてるようです。 ①②は先週と同じくタートルズとガーディアンズです。とは言え、どちらも3千万$以下、今週はどうも不作やったようです。
 年末にかけて、こんな感じで推移していくと思います。

 ローレン・バコールとロビン・ウィリアムスが亡くなりました。バコールは相当のお歳ですが、ロビンは60を少し超えたくらい。ご冥福お祈りいたします。 ロビンはまだまだ見ていたい俳優さんでした。色んなシーンが思い出されます。別に引っ掛けるつもりはありませんがクロエ・グレース・モレッツの最新作品は事故にあって肉体から離れてしまった魂の役、人間じゃないけど怪物でもない。久しぶりに普通の女の子を演じる彼女が見られそうです。では、この辺で。また、来週お目にかかります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・ライトノベルベスト・〔エピソード・赤鼻のトナカイ・3〕

2016-12-11 07:06:05 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
〔エピソード・鼻のトナカイ・3〕



 サンタは、赤ずきんが「インターナショナル」を唄い終わるまで待った。

 起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し
 醒めよ我が同胞(はらから) 暁(あかつき)は来ぬ
 暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて
 海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの

 聞け我等が雄たけび 天地轟きて
 屍(かばね)越ゆる我が旗 行く手を守る
 圧制の壁破りて 固き我が腕(かいな)
 今ぞ高く掲げん 我が勝利の旗
 いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの


 佐々木孝丸/佐野碩訳詞・ドジェテール作曲

 赤鼻のトナカイは、赤ずきんが唄っているあいだ、コーヒーには口を付けず、ただ両の手で温もりを愛しんでいた。
「赤ずきんちゃんのインターも、捨てたもんじゃないな」
 サンタは、自分のカップを持って赤鼻の向かいに座った。
「これは……タワリシチ・サンタ!」
「懐かしいな、その呼び方」
「あんただけでしたからね、タワリシチって言っても嫌な顔しなかったの」
「インターも、今の女の子が唄うと、心地いい違和感を感じるね」
「ハハ、懐かしいね、あんたのシニカルなとこも。赤ずきんちゃんは『はらから』を『腹から』だって、大笑いでしたけど、意味なんていい。インターはメロディーとテンポにソウルがありますから」
「昔どおり、ノンポリでいいよ」
「この店に来れば、みんなタワリシチですよ」
「でも、我が祖国ソヴィエトなんて、気持ちの悪いことは言わんでくれよ」
「いまさら、コミンテルンでもないでしょ。あたしはアナクロじゃない」
「『資本論』の剰余価値説でケツ割ったオレが言うのもなんだけど、思想としても政治手法としてもインターが目指すところのものは蜃気楼に過ぎないことは、20世紀で勝負がついた。それを承知の上で、選挙運動やってる君の一徹さには頭が下がる」
「よしてくださいよ。この歳まで続けたことだ……ここで歳だからって、隠居顔してたんじゃ、人生の帳尻が合わない」
「だよな。パージ受けた時も、君は節を曲げなかった。ひ弱な学生諸君らとは腹の据え方がちがう」
「で、こんなロートルに、なんの御用ですか?」
「アナログサンタは、今年でよそうと思ってさ……」
 サンタは、老眼鏡を拭こうとしてハンカチを出そうとした。
「ハンカチじゃ、レンズの曇りはとれない。どうぞ」
 赤鼻は、専用の眼鏡ふきを差し出した。
「こういうところが、君の長所だ。先々代の赤ずきんが惚れたのも、そういう、ちょっとボヘミアンずれしたとこだったなあ」
「古傷です。あの子といっしょになっていたら、あの赤ずきんちゃんは、この世には生まれてませんからね」
「ん……この眼鏡ふきのイニシャル、刺繍だな」
「ただの年寄り同士の小さな親切です。誤解しないでくださいね、こういうことにかけちゃ、自分はプラグマティズムなんです」
「ハハ、そうか。じゃ、単なる年寄りのリリシズムと笑われるかもしれんが、最後の橇は、君に曳いてもらいたいんだ」
「……そうですか」

 赤鼻は、眼鏡を外してハンカチを出した。

「眼鏡は、眼鏡ふきだろ……」
「いえ、歳のせいでしょ、涙腺が緩くなっちまって……」

 二人は、やっとコーヒーカップに手を付けた。すっかりぬるくなってしまったが、ロートル二人の心は十分に温まった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・120『ハリウッド情報』

2016-12-11 06:47:15 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・120
『ハリウッド情報


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評です。今回は番外ハリウッド情報です。



 てな訳で、お休み恒例“ハリウッド情報”

 トランスフォーマー/ロストエイジ……世界興行10億$〓で、現在歴代19位! 因みに“アナ雪”は12億5千万$〓の5位でんす。
 エクスペンダブルス3……またまた新顔登場、その中で、ハリソン・フォード/ウェズリー・スナイプス/アントニオ・バンデラスは味方みたいです。メル・ギブソンが敵役。ジェット・リーも復活、ただ 今回もミッキー・ロークは出ないようで……大ブーイングであります(個人的に)
 スピルバーグ制作/ヘレン・ミレン主演“THE 100FOOT JORNEY”全米先週末公開(日本11/1)の作品。ヘレンのミシュラン星付きレストランの向かいにインド人が越してきて、インドレストランを開くというお話。最近のハリウッドは、オイルマネーやら日本資本、中国資金と並んでインドマネーも絡んでます。映画のストーリーにも反映されてて、金は出さんが増える傾向にあるのが、ヒスパニック向けと黒人向け。キリスト教系作品は誰が金主かよぉ判りません。

 では全米ボックスオフィス順位です。

⑩プレーンズ2(4週目、5290万$)アニメとしちゃ、お寒い売り上げ。とは言え「カーズ」の成績からすりゃこんなもんでありんす。
⑨猿の惑星:ライジング(5週目 2億$目前)前作が7週で1億7千万$強でしたからスケールアップ。 ここらで止めた方がええんやけどね……続編はあるんやろなぁ。
⑧GET ON UP(2週目 2千万$強)“ゲロッパ”でお馴染み、ファンクの帝王 ジェームス・ブラウンの自伝。まあ、来週は消えてますね。
⑦ヘラクレス(3週目、63百万$)なんとか7千万$には乗りそうな勢い、たぁ言え少々微妙。日本公開10/24……この類、最近日本じゃコケるんで、さて、どないだっしゃろ?
⑥STEP UP ALL IN(1週目 640万$)STEP UPシリーズ最低スタート。ダンス映画で、ヒットしたためしが無いのに、毎年1本作ってます……まぁ、製作費が安いんでしょうね。これも来週には消える運命
⑤LUCY(3週目、1億$弱)人間の脳が100%覚醒したら? っちゅうSF、今月末公開で、次の押し付けはこれです。スカーレット・ヨハンセン主演ですから“華丸お薦め”決定しとります。アハハハ〓
④THE 100FOOT JORNEY(1週目、1千万$強)上記、スピルバーグ制作の作品、内容からすると破格のスタート成績、さて、どこまで伸びますやら、注目です。
③イントゥ ザ ストーム(1週目、17百万$)これも、何年かに1本作られる“竜巻映画”……今回は同時多発巨大竜巻で、まぁ、展開は読めとります。来週 急降下すると思います。
②ガーディアンズ オブ ギャラクシー(2週目、1億8千万$)ご存知マーベルの“アベンジャーズ”系譜の一本。次がいよいよ“
アベンジャーズ2”で、これまでのいきさつからすると“ガーディアンズ”が新メンバーとして参加します。はてさて、どんな突飛なストーリーに成るんでしょうね、“アベンジャーズ2”を見る予定の人は必見。日本公開9/13です。
①ミュータント・タートルズ(1週目、65百万$)ある程度年配の方ならご存知の“亀の忍者”のお話です。キャラクターの歴史は古いと思とりましたが、なんと30年前に出来たキャラクターらしいです。案外新しいキャラなんですね。“トランスフォーマー”を、自らの暴言で首になったミーガン・フォックスが共演(これだけで、見る気が失せますなぁ)してます。1億$〓には成るんでしょうが、私、何やら嫌~~な予感がいたします。

 さて、来週は、いよいよ“エクスペンダブルス3”の公開です。初登場1位を取れるや否や。今回もド派手な映画なのは間違いなし、日本公開11/1からです。
 今回は、もう消えとりますが、日本公開未定ながら注目されるのが、“TAMMYメリッサ・マッカーシーっちゅう太ったオバサンのコメディ、低予算作品ながら全米スマッシュヒット。もう一本、ロブ・ライナー監督(名匠)、マイケル・ダグラス/ダイアン・キートン共演“AND SO IT GOES”頑固爺と隣のオバチャン設定と来たら、こらみのがしちゃいけません。十戒”のリメイク、日本公開は来年のようですが、アメリカは年末公開。さぁて、どんなモーセが登場するやら、またもや賛否両論/侃々諤々大作なんでしょうかね、相当意地悪な気分で待っております。 では、来週も“押し付けハリウッド情報”の予定。“エクスペンダブルス”の成績はどうなんでしょうか、乞う ご期待。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・ライトノベルベスト〔エピソード・赤鼻のトナカイ・2〕

2016-12-10 06:40:44 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
〔エピソード・鼻のトナカイ・2〕



 赤鼻のトナカイの家は留守だった。

「ああ、選挙まで一週間もないものな……」
 サンタは、携帯で呼び出すのも無粋に思い、近くの喫茶店で時間を潰した。
「この店、まだやっていたんだね」
 出てきた赤天狗のマスターに、つい言ってしまった。
「こんな店が、世界に一軒ぐらいあってもいいと思いましてね」
 マスターは嫌な顔一つしないで、コーヒーを入れてくれた。どこか悟るところがあるのだろう、昔ほど鼻は高くない。
「今でも、みんなで歌ってるのかい?」
「ハハ、これでも歌声喫茶ですからね。世の中、まだインター歌いたい奴もいるんですよ」
「え、昔でもインターまでやる歌声喫茶は少なかったよ」
「今は、コアなお客さんしか来ませんからね」
「嫌味じゃなく、重要無形文化財だな……」

 そこまで言うと、マスターもサンタも黙ってしまった。別にどちらかが気を悪くしたためではない、サンタの詠嘆に、この世代にのみ通じる思いが醸し出され、二人の老人は、それに浸っているのである。

 入り口のカウベルを元気に鳴らして女の子が入ってきた。名前を聞かなくても姿で分かった。

「おう、赤ずきんちゃんじゃないかい!? お祖母ちゃんは、まだ元気なのかい?」
「はい、オオカミサンにデイサービスの送り迎えなんかしてもらって、元気にやってます」
「あそこも孫の代かね?」
「ううん、オオカミサンは、今年61のオジサン」
「え、オオカミには子供がいなかったっけ?」
「うん、オレの代で店じまいだって……いまどきオオカミの時代でもないって、若いころにパイプカットしたって、こないだ初めて聞いてショックだった」
「赤ずきんちゃんは、お客でくるのかい?」
「ううん、アルバイト」
「ハハ、ウソですよ。バイト置けるほど繁盛はしてませんからね。ボランティアで手伝ってくれてるんです」
「あたし、渡り廊下走り隊の『希望山脈』のプロモ見て感動したんです。歌声喫茶なんて、あたしらの感性じゃ絶対思いつかないもの。今時喫茶店と言えば、漫画か、ネットか。普通の喫茶店でも、スマホかタブレットばっか見てて会話がないでしょ。それが赤天狗のお店じゃ、お話しもするし、みんなで歌まで歌っちゃうんだもん。これはイケてるわ!」
「渡り廊下走り隊」ってのはなんだね?」
「あら、ご存じないんですか、AKBのユニットですよ」
「ああ、そうなんだ」
 サンタは分からないまま、相槌をうった。
「赤ずきんちゃんは、伴奏にピアノもバラライカもやってくれるんですよ」

 サンタは、赤ずきんが歌声喫茶を単なるファッションとしてとらえていることに一抹の寂しさを感じないでもなかった。おかしなものである。若いころは歌声喫茶に行くやつなんかバカにしていたが、赤ずきんのような若い子が、なんの屈託もなく入っているのに、嫉妬に似たような感情をもった。

 夕方になると、三々五々、お客が集まり始めた。みんな白髪が目立つジイサン、バアサンだったが、中には赤ずきんと変わらない年頃の子もいた。コーヒーなどのドリンクはセルフサービスで180円である。これではバイトなど雇えるはずはない。
「喜びの唄」「白い恋人たち」「山のロザリア」「カチューシャ」「仕事の唄」と、往年の名曲をみんなで歌った。
 そして、赤ずきんが、明るく「インターナショナル」を唄っているときに、赤鼻のトナカイが入ってきた。

 夜風にあたって赤い鼻をいっそう赤くし、一杯のコーヒーを両の手で暖ともいえぬ温もりを愛おしんでいた。よく見ると、今まで選挙ビラを撒いていたのであろう。手はカサカサになり、半分ほどの指には絆創膏が巻かれていた。

――歌い終わるまで待ってやろう――

 サンタは、歌声の温もりの中に、身を隠すようにして看板になるのを待った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・119『トランスフォーマー/ロストエイジ』

2016-12-10 06:18:04 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・119
『トランスフォーマー/ロストエイジ』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


アクションは、そらぁ見事なもんで、思いっきり食い足りなかったシリーズ第一作とは天地の開きです。

 殊に、戦闘でもつれ合うと、どちらがオートボットでどちらがディセプティコンか判然としない場面が有りましたが、前作くらいからデザインを判りやすく分けてあるので、そういう錯誤もありません。
 頭空っぽにして、いらん事は考えず、ただただお楽しみ下さいませ。お薦めいたします。

 で、ここからは私の私的小理屈であります。本作から、シャイア・ラブーフが外れて、マーク・ウォールバーグが人間の主役です。なんでシャイアが外れたのか、一切説明っちゅか情報はありませんが、作品のイメージを変えるってのは言い訳で、この所のシャイアの御乱行が祟ったんじゃないですかねぇ。
 このシリーズ、シャイアの恋人役が、暴言吐いて降ろされたり、なぁんかキャストにケチがつきますなぁ。間違いなく次回作が有りますから、今回キャストの皆様、くれぐれもご注意されたしであります。
リメイクではなく、リブートで、人間キャスト総入れ替え。しかし、前作から3年後設定なので、ドラマ構成が難しい所ながら、その点は上手く作ってあります。マーク演じるオヤジは果敢に戦闘にくわわりますが、シャイアのように単に無謀ではなく、動機も武器もちゃんと用意……し・か・し~~、ロボと人間の圧倒的なエネルギー差からして、あんなシーンに飛び込んだら瞬殺でミンチやなぁってのは今回も感じました。飛んできた小石一個が当たっただけでお陀仏でありますわ。まぁ、これを言い出すと映画にならんので禁句ですがね。
 それと、ストーリーそのものに唐突で乱暴な所が散見、これはマークと娘のエピソードに時間を割いたので編集上の都合でしょう。なんせ2時間45分ですからこれ以上長くは出来なかったでしょうからね。最後に、こらど~~でもよろしおまんねんけど。本作、中国にえらい気イ使ってます。ラストの戦場が香港で、「香港は政府(北京)が守る」っちゅう政府高官が登場、「ジェット機で攻撃する!」
とぶち上げる。どこの基地から上がったのか知りませんが、待てど暮らせど飛んできませんけどね。
 エレベーターに乗り合わせただけの兄ちゃんがえらい強かったり……。
 大作映画の場合、国内版以外にインターナショナルバージョンを用意しますが、本作にはもう一つ、中国バージョンがあります。 さぞかし、解放軍が活躍するんでしょうなぁ。人海戦術だとか言って、人民の海でディセプティコンを飲み込んだりして……アハハハ ハリウッドは政治に敏感で、政府が中国に秋波を送っているとなると、恥も外聞もなく摺りよります。ずっと敵対していた筈が、経済的に有効となると、政治的に何ら変化も無いのに百年前から友好国みたいな雰囲気です。

 これの一発目は、ディズニーが「ムーラン」なんてなアニメを作った辺りです。

 まあ、ええんですけどね、なんかしらけます。とは言え……です、中国の映画鑑賞人口は日本を抜いて、アメリカに次いで世界二位に成
ると言われています。本作は米中同時公開され、アメリカで1億7千万$売り上げに対して2億2千万$の売り上げ、こらぁゴマの一つもすらんとあきませんわなぁ。
 と、まぁ、ど~~でもええ小ネタでございました。おっと、忘れておりました。今日は久し振りに3Dを見ました。結論から言って、まぁまぁの出来で頭痛もしなかったのですが、映画の始めの方ではこれ見よがしに浮き上がる画面が気色悪いし、若干のブレも感じる、一番奥の背景が書き割りのように見えてしまう。ただ、見ている内に気にならなくなる……のではありますが、どうやらカラクリがありそうです。所々で3Dメガネを外して見るのですが、外すと当然ダブった映像が見える訳ですが、そのダブり具合が段々緩く成っているように見えます。映像の飛び出し加減で製作費に差が付くもんでも無いと思います。 ちゅう事は、やはり極端に飛び出す映像は不自然だという判断が製作側にもあって、見慣れると自然に見えるんだと観客に錯覚させる工夫(ワザワザ)がされてるんですね、なんのこっちゃら。
 てな訳で、やっぱり3Dはまだまだの技術です!と結論いたします。こんなもんで別料金盗るんやないわい〓〓〓 映画は2Dで充分であります。これ結論!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする