大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・14『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』

2021-01-27 06:32:50 | 評論

訳日本の神話・14
『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』
 

 日本は八百万(やおよろず)の神さまの国です。

 その八百万の神さまの東の横綱が天照大神で西の横綱が出雲大社であります。
 何度も申しましたが、今の皇室に繋がる大和朝廷の神さまがアマテラスで、出雲大社に象徴される出雲勢力の神さまの大元がスサノオであります。
 出雲勢力がどれだけ強大であったかは、十月を神無月として、十月には日本中の神さまが出雲に集まるということになったこと。で、出雲地方だけは十月のことを神有月(カミアリツキ)と言うことでも分かります。

 スサノオは高天原で大暴れします。

 大暴れの結果、高天原を追放されることになるのですが。これは出雲勢力が大和勢力に敗れたことを反映させるためにできたストーリーだと言われています。
 それはさておき、面白いので観ていきましょう。
 
 スサノオは高天原の田んぼを踏み荒らしてメチャクチャにします。神さまが食事をする御殿にクソを巻き散らかして汚します。アマテラスがスサノオを罵倒するときに「このウンコ!」と言ったのは、わたしの筆が滑ったからですが、まさにその通りのことをやってのけます。
 最初は大目に見ていたアマテラスですが、しだいに収まらないスサノオの乱暴にキレてしまいます。
 機織り姫が織物をしているところに生皮を剥いだ馬を投げ入れ、機織り姫はビックリしてショックのあまり死んでしまいます。
 このくだり、原文では機織りに使う板で陰(ほと=性器)を突いて死んだとされています。こういう描写は神話のいたるところに見られるのですが、それについては、また触れてみたいと思います。

 ここにきて、アマテラスは怒り心頭になって天岩戸に隠れるのですが、ひとまずスサノオがしたことに目を向けます。

 古代においては、天津罪(アマツツミ)という概念がありました。とんでもない罪という意味です。

 宗教儀式や、祭祀の場をメチャクチャにすることは、大変な罪でした。
 スサノオがクソをまき散らしたことや機織りの場に皮を剥いだ馬を放り込んだことが、これに当たります。
 神道は、清浄を第一にする宗教です。

 何事のおはしますをば しらねども かたじけなさに 涙こぼるる

 西行の和歌です。
 なにがお祭りされているかよりも、かたじけないと感動するような清浄さが重要なのです。
 伊勢神宮の本殿は、式年遷宮と言って、20年に一度、すっかり建てなおして引っ越しします。清浄さやあらたかさを大事にするからですね。
 ですので、神事や神社を穢すのは一番の罪とされます。現代人の我々でも、神社の鳥居やお社に落書きされたりしていると、他の落書きと違って「このバチあたりめが(#`Д´#)!」という気持ちになりますよね。その名残だと思うねですが、どうでしょう。

 次いで大きな罪が田畑を荒らす罪です。
 スサノオは田んぼの畔を壊したりしてメチャクチャにしています。
 神話の中には書かれていませんが、ああ、こんなのもあるんだ。というものがあります。

 頻撒(しきまき):人が種籾を撒いた上から別に種籾を撒いて「ここは、オレの田んぼだ!」と主張すること。

 串刺(くしざし):人の田んぼに立札を立てて新たに所有権を主張すること。

 畔放(あはなち):田んぼの畔(板や土で作られた田んぼの囲い)を破壊すること。

 農耕秩序を破壊するような行為が、神社を穢すことと並んで大罪でした。
 下って、鎌倉幕府ができたのも農村地主である武士たちが土地の所有権や、土地にまつわるイザコザを公平に裁いて欲しかったからでであります。日本の原型は、やっぱりお百姓さんの国なんですね。

 次回は天岩戸について考えたいと思います。
  

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妹が憎たらしいのには訳がある・43『優奈 そしてプレコンサートへ』

2021-01-27 06:08:13 | 自己紹介

たらしいのにはがある・43
『優奈 そしてプレコンサートへ』
         

 


 あたしにできるわけありませんよお(#>0<#)!

 優奈は、目と口を倍ほどに開き、まるで悪魔払いをするように。見方によっては、ウルトラマンが及び腰でスペシウム光線を発射するときのように、両手で×印を作って抵抗を試みた。

「絶対、絶対、ぜった~い、で・き・ま・せ・ん!!」

 しかし、加藤先輩と幸子を相手にしては、唾の聖水も、スペシウム光線も無力だった。
「あたしとサッチャンの意見が一致したの。これは、その通達であって、優奈に選択権は、あらへんの」
 加藤先輩は、唾の聖水を拭いながら宣告した。
「今の優奈ちゃんの力では、確かにしんどいけど、優奈ちゃんの前向きな姿勢は、きっとわたし以上の仕上がりになるわよ」
 幸子もニヤニヤしながら、しかし、真剣な目で告げた。
「視聴覚教室の修理も終わって、今日から真っさらなステージ。これも、なにかの因縁ね。連れてきて!」
「覚悟しな、優奈……」
 ギターの田原さんが目配せをすると、ヘビメタ担当のマッチョ六人が優奈を担ぎ上げた。暴れた優奈は、担ぎ上げられた瞬間、スカートがめくれあがり、イチゴパンツが剥きだしになったが、ヘビメタは優奈のスカートごと足を押さえつけ、学校の「下着が見えるようなスカートの穿き方をしてはいけない」という校則をクリアー。
「拉致だ! 誘拐だ!」
 と、優奈は叫んだが、校則には拉致も誘拐も書いてはいない……。

 優奈の代わりには、幸子が戻された。

 自称『幸子ファンクラブ』の会長の祐介は喜んだが、本心では寂しがっている。軽飛行機突入事件で、祐介が優奈のことを体を張って守ったのを知っている。でも、まあ、優奈の大抜擢なので、ケイオン全体としては祝福している。なによりも幸子が全力で応援したことが、この出来事を明るくしていた。

「もっと、口は大きく開けて、目はつぶるんじゃなくて!」
 加藤先輩の指導は厳しい。
「ほら、選抜に決定したときの顔思い出してみい!」
 幸子は、「絶対、絶対、ぜった~い、で・き・ま・せ・ん!!」のシャメを撮っていて、それを本人に見せた。即物教育だ。幸子は、演劇部に行く余裕も無くなってきたので、先輩たちを説得し、演劇部全員をバックダンサーにした。秋のコンクールまではヒマだったので、演劇部も喜んで参加。そのバックダンスの練習がカッコイイというので、演劇部だかケイオンだか分からない新入部員が五人も入った。そうするとプレイヤーが貧弱になるので、俺たちのグループもバックバンドとして入ることになり、真田山高校としては、過去最大の編成になった。そして、ナニワテレビが幸子の降板から本番までをドキュメンタリーにする企画を持ち込んだことが、みんなを勢いづかせた。

「どう、うちの系列のホール確保するから、一度プレコンサートやってみない!?」

 お馴染みキャスターのセリナさんの発案で、大規模なプレコンサートをやることになった。
「大会事務局からクレームつきませんかね」
 顧問の蟹江先生は心配してくれたが、セリナさんはお気楽だった。
「これに刺激されて、他局でも似た企画やりますよ」
 セリナさんの読みは当たった。他局も有力と思われる学校のオッカケを始め、NHKでさえ、特集番組を組むようになった。

 


 《出撃 レイブン少女隊!》 

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! みんなのために

 放課後、校舎の陰 スマホの#ボタン押したらレイブンさ

 世界が見放してしまった 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート

 エンプロイヤー それは世界の平和願う君たちさ 一人一人の愛の力 夢見る力

 手にする武器は 愛する心 籠める弾丸 それは愛と正義と 胸にあふれる勇気と 頬を濡らす涙と汗さ!

 邪悪なデーモン倒すため 巨悪のサタンを倒すため

 わたし達 ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! For The Love!

 ああ ああ レイブン レイブン レイブン 傭兵少女隊……ただ今参上!

 


 極東事変以来、国民の意識が変わった。ことなかれの政府の意向とは裏腹に、極東の情勢は緊迫していた。それを知って、国民の多くは冷静に有事に備える気構えを持ち始めた。十数年前の極東戦争では、戦死傷者数万を出している。そういう事態にならないための備えであった。戦わないためには、戦う決意が必要だ。
 そのために、真田山高校軽音楽部は、演奏作品に《出撃 レイブン少女隊!》を選んだ。先の極東戦争のきっかけになった対馬戦争のとき、危険を顧みずアジアツアーのため乗っていた飛行機もろとも撃ち落とされたオモクロの桃畑律子の持ち歌である。

 プレコンサートは大成功だった。優奈も自信を付けた。スニーカーエイジそのものを盛り上げることにもなった。

 しかし、パラレルワールドを取り巻く事態は、俺たちの知らないところで動き始めていた。そして、俺たちが、それに気づくのには、もう少し時間が必要だった……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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オフステージ・153『だけじゃん言うな』

2021-01-26 09:14:46 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)153

『だけじゃん言うな』 啓介    

 

 

 運命って、あいまいなもんだと思う。

 

 俺の親父は二人姉弟の長男だ。

 親父の父親、つまり祖父さんは寅さん風に言うと職工で、カミさんと子供二人を養っていくのがやっとだった。

 親父は、この爺さんと婆さんの二番目の子どもで、上が女なんで、長男と言うことだ。

 長男だから、貧しいところをオッツカッツで、なんとか大学まで出してもらった。そして、大学を出て働いた職場でお袋と出会って結婚して俺が生まれた。

 実は、親父の姉、つまり伯母さんの上にもう一人いた。

 男の子だ。

 七カ月の早産で生後三十分で死んでしまった。

 もし、この男の子が早産でなくて、ふつうに十月十日(とつきとおか)で生まれていたら、親父は生まれてこなかった。

 爺さんは三人も子どもを育てる余裕は無かったから、親父のあとにできた子供は始末している。つまり婆さんと相談して堕ろしちまった。上の男の子が生まれていたら、親父は三番目なんで、始末されていたってことだ。

 上の男の子が早産になったのは、洗濯物を干そうとして躓いたせいなんだ。だから、婆さんが躓かなければ、普通に生まれていたはずだ。そして、親父は妊娠三カ月くらいで堕されている。

 親父が生まれてこなければ、あたりまえだけど、俺が生まれてくることは無かった。

 ひょっとしたらさ、俺の息子とか孫あたりが総理大臣とか偉い学者とかになって、日本や世界の危機を救うってことがあるかもしれない。いや、救うんだ!

 そのためには、俺の親父が生まれなければならないわけで、ひょっとして、未来から密命を帯びた工作員とかがタイムリープしてきて、洗濯物を干そうとしていた婆さんを転ばせたんじゃないかなあ?

 婆さんは、そそっかしい人だった。呼び鈴が鳴ったりすると、狭い家の中でもドタドタ走って玄関に急ぐ人だった。じっさい、七十三の歳に、これで大腿骨折をやってる。

 俺が千歳にコクらなかったのも、こんな偶然、いや、未来からやってきた工作員のせいかも知れない。

 中庭で千歳に出会って、あと一呼吸したらコクっていた。

 コクらなかったのは視線を感じたからだ。

 本館四階の生徒会倉庫から生徒会長の瀬戸内先輩が見ていたのは気づいていた。瀬戸内先輩は部室移転問題からの腐れ縁だから、そうは気にならない。目にしたからって、口笛拭いてヒューヒューからかうような人じゃねえからな。

 実は、中庭の向こう、渡り廊下の下から「プッ(* ´艸`)」って笑う奴がいた。

 反射的に目をやると、一瞬目が合った一年の女子が、口押さえて逃げ去っていくところだった。

 きっと、奴は未来世界の工作員だ。

 で、千歳のことは、それっきりになってしまった……。

 ドン!

「なに妄想の世界に入ってんのよ!」

 ミリーが、背中をドヤしつけて俺の前に座った。

「な、なんだよ、勝手に妄想とかあり得ねえし」

「ちょっと相談なんだけど、クラブで調理実習とかやってみない?」

「調理実習ぅ?」

「うさんくさそうな顔しないでよ、ちょっとした縁で調理実習することになったのよ」

「うちは演劇部だぞ」

「看板だけじゃん」

「だけじゃん言うな」

「ちょっと、面白いってゆうか、運命なのよ……」

 なんだか、新しい運命が開けてしまう……。

 

 主な登場人物

  •  小山内 啓介      二年生 演劇部部長 
  •  沢村  千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した
  •  ミリー・オーウェン   二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生
  •  松井  須磨      三年生(ただし、六回目の)
  •  瀬戸内 美晴      二年生 生徒会副会長
  •  姫田  姫乃      姫ちゃん先生 啓介とミリーの担任
  •  朝倉  佐和      演劇部顧問 空堀の卒業生で須磨と同級だった新任先生

☆ このセクションの人物 

  • 杉本先生
  • Sさん
  • 蜂須賀小鈴
  • 蜂須賀小七

 

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』

2021-01-26 06:22:00 | 評論

訳日本の神話・13
『イザナギの三神・スサノオ・2』
    

 

 高天原(たかまがはら)というくらいですから、高い空の上にありました。

 そんな空の上に、スサノオはどうやって行ったか?
 むかし、スサノオの話をアニメにした『腕白王子のオロチ退治』というのがありました。たしか東映動画の作品で若き日の宮崎駿監督も参加していたと思います。
 アニメではアメノフチコマという空を飛べる馬に乗って行くことになっていますが、記紀神話では記述がありません。
 まあ。神さまだから行けたということでいいのではないかと思います。

「え、弟のスサノオがやってくるって!? なんなの、それはあああああああヽ(`#Д#´)ノ!?」

 スサノオが高天原にやってくるのを知ったアマテラスは、歓迎するどころか激怒して嫌がります。
 そうして、自分も他の神さまといっしょに完全武装してスサノオに立ち向かいます。
「なんだって、おまえが来るんだよ! おまえ、父ちゃんも持て余してたヤンチャクレなんだろがあ! 入ってくんな! こっち見んなあああ!」
「そりゃねーだろ! オレはワルサなんかしねーよ。ただただカアチャンが恋しくってさ、父ちゃんに言ったら、ネーチャンがカアチャン似だってっから……その、来ただけなんだし」
「ざけんじゃねーよ! あたしはカアチャンの代用品ってか!? おまえ、どんだけマザコンなんだよ!? ここはなリア充しか住んじゃいけないんだよ、さっさと帰れ、このウンコ!!」
「ウンコじゃねーよ! おいら、ただただ寂しいんだ。な、ネーチャン、ワルサしねーから、置いておくれよ……頼むからよ(;゚Д゚)」

 姉弟とは思えない冷めた関係です。アマテラスは、もうスサノオのことを敵認定したような態度です。

 前にも述べましたが、アマテラスは伊勢神宮の御祭神で、皇祖神であります。
 その皇祖神であるアマテラスが非常に警戒するのですから、ここにおけるスサノオは、大和政権に敵対した大きな勢力があったことの記憶が反映されていると見るべきでしょう。
 大和政権が確立するまでは、いろいろな対立や抗争があったんだと理解しておけばいいと思います。

「じゃあさ、神さま生んで、潔白を証明しようじゃんか!」

「え? 神産みだとお!? く、くそ、仕方ないわねえ……」

 スサノオの提言で、姉弟の神さまは、子どもの神さまを生みあうことになります。
 アマテラスが付き合うのは、こういう場合の潔白の証明は双務的に行うものだからです。

 例えば、握手とか敬礼に、この名残があります。

 握手も敬礼も右手で行います。
 右手は武器を持つ手なので、お互いに相手の右手を握ることで武器を持っていないことを確かめ合うのです。
 敬礼も同様に、右手を肩の上に掲げることで、武器を持っていない=害意が無いことを証明しています。
 ですので、世界中にある敬礼の中で、はっきり右手の手の平を見せるイギリス流が敬礼の元祖なのかもしれません。

 礼砲というのがあります。

 外国の港に軍艦が儀礼的に入港する場合や、逆に入港される場合は、20発前後の大砲を撃ちます。
 儀礼がなんで大砲を撃ちあうことになるのかというと、物騒な気がしますが、以下の理由があります。

 昔の大砲は一発発射すると、次の発射までには時間がかかりました。だから、大砲を撃ってしまうことで「撃ったあとは無防備」なので害意はありません。ということの表明になるからです。
 最近の軍艦は、礼砲専門の大砲を積んでいることが多いようです。いまの艦載砲は口径120ミリくらいで、昔ほどデカい音が出ません。かといって、主力武器のトマホークやハープーンなんかのミサイルをぶっ放すわけにのいきませんですからね(^_^;)。

 この項続きます。

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・42『幸子失格』

2021-01-26 06:08:33 | 小説3

たらしいのにはがある・42
『幸子失格』
          


    

 

 我が家には、ささやかなこだわりがある。

 二十一世紀も半ば過ぎだというのに、いまだに紙の新聞をとっているのだ。


 新聞を開いたときに、アナログな情報の山が紙とインクの匂いをさせながら目に飛び込んでくるのは、脳の活性化に役に立つと日本人ノーベル賞受賞者のナントカさんが提唱して以来、右肩下がりだった新聞購読が増えるようになり、今でも世帯の25%は紙の新聞を購読している。

  しかし、この紙の新聞で弁当を包むという前世紀の習慣を維持しているのはウチぐらいのものだろう。
 
 これは意外なことにお袋の習慣なのだ。

 編集という特殊な仕事柄のせいなのかもしれないが、去年、親父とのヨリが戻り、家族の復活をしみじみ感じたのは、この新聞紙に包んだ弁当を学校で開いたときかもしれない。
 お袋は早起きで、朝の支度をしながら新聞を読み、必要なものを赤ペンでチェック、最後にまとめてスマホに取り込んだあと弁当をくるむ。何ヶ月も新聞を溜め込むようなことはしない。やはりニュースは新鮮さが第一というのは、今の人間である。

 その日はテスト終了後の短縮授業。

 学校は昼までなんだけど、部活があるので弁当を持ってきたのだ。
 そこで広げっぱなしにしていた新聞紙の赤ペンに幸子が注目した。
「へえ、先月の極東事変の裏は、甲殻機動隊が……」
「あ、的場って防衛大臣の首が飛んだやつ」
「あれ、軍が大臣に内緒で攻撃準備してたんでしょ。あれ勝ったんで戦争にならずに済んだって。戦争やってたら、スニーカーエイジどころじゃないもんね」
 優奈が食後のお茶を飲みながら言った。
「押さえた記事になってるけど、仕掛けたのは甲殻機動隊だって……」

 ちがう。

 俺は、一カ月前、ねねちゃんにインストールされて、ねねちゃんのママの臨終に立ち会ったことや、そのあとDepartureして防衛省に潜入したことを思い出した。あれは、義体であるねねちゃんの判断だった。ねねちゃんは、あれからも急速にねねちゃんらしさを取り戻している。それに比べて、わが妹の幸子はあいかわらず。義体として他人になりきる技術は完ぺきだ。小野寺潤を始め、骨格の似ているアイドルには完ぺきにコピーできる。もうレパートリーは20を超え、いくつかを合成して、オリジナルな佐伯幸子としてもアルバムを出すようになった。
 ただ、幸子は、あくまで週末&放課後アイドルに徹しており、高校生活に穴を開けるようなことはしなかった。

「さ、お兄ちゃん、練習だよ」
「はいはい」
 幸子は、ケイオンの選抜メンバーに選ばれても、昼や休憩時間の半分以上は、もとの仲間と時間を過ごすようにしている。妹ながら気配りのできた奴だ。もっとも、それはプログラムモードのときだけで、ナチュラルモードのときは、相変わらずのニクソサなのであるが。

 それから一週間、スニーカーエイジのプロディユーサーが学校にやってきた。

 顧問の蟹江先生立ち会いの下で、選抜メンバーはプロデユーサーに会った。
「やあ、プロデューサーの的場です。大事な話なんで、ぼく自身で来ました」
 初対面なんだけど、どこかで会ったような気がした。
「あ……兄貴が、こないだまで国防大臣。でもナイショね。かっこ悪いし、兄貴は兄貴、ぼくはぼくだから」
 そう言うと、的場さんは頭を掻いた。でも、兄貴がドジな国防大臣であったのとは違う緊張感がした。
「なんでしょう、もし編成に関わるようなことならハッキリ言うてください。わたしらも対応せんとあきませんから」
 加藤先輩が促した。的場さんは、メンバーの顔を見渡してから口を開いた。
「申し訳ない、佐伯幸子さんの出場が認められなくなりました」

 一瞬、みんなが凍り付いた。

「理由はなんですか」
「佐伯さんの芸能活動です」
「それは、登録するときに問題ないて、言わはったやないですか!」
 ギターの田原さんが広義した。
「登録時はセミプロだったが、今はヒットチャートの常連だ。立派なプロだよ」
「そんな……」
 みんなの口から同じ言葉が漏れた。
「しかし、それは殺生だっせ」
 いつも口出しをしない、蟹江先生が平家蟹のような顔で言った。
「規約では、出場者は、学校やエージェントが不良行為と認めた場合に出場を取り消すことがある……としか書いてまへんけど」
「あと、もう一点、プロと認定された者は出場できないとあります」
「待ってください。わたしがプロなのは週末だけです。それ以外は普通の高校生です」
「スニーカーエイジの本選は週末に行われる……週末の君はプロなんだ」

 外の蝉の声が、ひときわ大きく耳障りに聞こえてきた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん

 

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かの世界この世界:167『冴子!』

2021-01-25 09:02:23 | 小説5

かの世界この世界:167

『冴子!』語り手:テル(光子)    

 

 

 モニターに映る三つ子ビルは傾きながらも立っている。

 三つ子ビルは、異世界を含むこの世の全てを現わす模式図だ。世界樹に似ている。

 一つのビルが崩れてしまうと、影響を受けて他の二つも倒れてしまう。

 そして、それぞれのビルには無数の部屋があって、その無数の部屋が無事であることで安寧を保てている。

 逆に、ビル全体が無事でなければ、一つの部屋を安寧に保っても意味がない。

 それを理解して、わたしは異世界への旅に出たんだ。

「世界は無事なんですね……」

「うん、光子ががんばってくれたから」

「安心はできないけど、しばらくは大丈夫。あなたの周囲も、かなり改善されたわ」

「光子が卒業するまでは無事でいられると思うよ。まだ、やらなきゃならないことはあるけど、もう寺井光子でなくてもいい」

「そうよ、生徒は他にもいるし、時間はまだまだあるしね」

「じゃ……もう、冴子を殺してしまうことは?」

「おこらないわ」

「むろん、光子が殺されることもないし、追い詰められて屋上から飛び降りることもない」

「そ、そうなんだ……」

 安心と同時に涙が溢れてきた。

「自分で確かめてみるといいわ。時美とお茶の用意しとくから」

「元気になってからでいいよ、駅前までお茶うけのスィーツ買いに行くから」

「湯沸かしも穴が開いちゃったから新しいのを買いに行くの」

「光子が落ち着いたら行くよ」

「あ、じゃ、わたしも、さっそく様子を見に行きます」

「そう、じゃ、時美、いっしょに出ようか」

「うん」

 三人揃って部室を出る。

「もし、先に帰ってきたら、壁から三つ目の床板を踏んで、扉が現れるから」

「は、はい」

 言われて振り向くと『かのよ部』のドアは消えていた。

 最初にここに来た時はずいぶん驚いたけど、いくつも異世界を経めぐって、もうこの程度の事では驚かない。

 念のため、三つ目の床板を踏んでドアが現れることを確認。フフっと二人の先輩が笑う。

 じゃ。

 顔を挙げたら、もう先輩たちの姿は無かった。

 時計を見ると、異世界にジャンプしてから二時間もたっていない。

 小6で読んだ『アクセルワールド』を思い出した。加速世界のゲームの中では数か月の出来事も一瞬なんだ。

 旧校舎から中庭に出ると、花群れの向こうに冴子の姿が見えた。

 さすがに緊張してしまうけど、時美先輩の言葉を思い出す。もう、冴子を殺すことも殺されることもないんだ。

 そうだ、普通にいこう、普通に。

 藤棚の前まで来て、冴子が笑顔になって早足になる。

 その笑顔にほとばしるような安心と嬉しさがこみあげてきた。

「冴子!」

「え?」

 目の前の親友は怪訝な顔をした。

「あ……」

「だれ?」

「あ……人違い」

 瞬間で、わたしのことが分かっていないことを理解して人違いにした。

「おお、よしよしよし」

 冴子は、藤棚の向こうのサツキの群れに隠れている子ネコに駆け寄った。

 そうだ、先週から見かけるようになったノラの子ネコだ。

 どっちかというと動物が苦手な冴子。

 その冴子が子ネコをスリスリしている。

 寂しさと安心が同時にやってきた。

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
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誤訳怪訳日本の神話・12『イザナギの三神・スサノオ・1』

2021-01-25 06:25:13 | 評論

訳日本の神話・12
『イザナギの三神・スサノオ・1』
  


 

 イザナギが、命からがら黄泉の国から戻って産んだのが三人の神さまです。

 産んだと言っても、男神なので、目を洗ったり鼻を洗ったりして出来た神さまたちです。
 困難と穢れに打ち勝って、その末に聖なる神さまが生じるという、まあ、観も蓋も無く言ってしまえば演出ですね。

 三人の神さまの中で、重要なのはアマテラスです。ツクヨミもスサノオもアマテラスを引き立てるための脇役です。

 脇役ではありますが、準主役と言っていいドラマが三番目のスサノオにはあります。

 本当なら、スサノオは日本のポセイドン(ギリシア神話の海の神さま)になるはずでした。父のイザナギは、そう命じたからです。
 しかし、スサノオは見かけは立派なアンチャンであるのですが、とてもマザコンでありました。

「なああ、父ちゃん、なんで俺には母ちゃんがいねーんだよ!?」

 大きなドンガラをして、イザナギを責めては身も世もなく泣いていました。
 スサノオの泣きっぷりは凄まじく、というか、スサノオと言う名前も「凄まじい」という意味が被っているのかもしれません。
 スサノオが泣き叫ぶと、大地震が起こり、海が溢れたり山が崩れたりします。
「もー、かなーねえなー! デカいなりして泣くんじゃねーよ! みんな迷惑するじゃないか!」
「だって、母ちゃんに会いてーもんよ! オーイオイオイ……!!」

 息子ながら持て余したイザナギは、こんなことを言います。

「そーだ、スサノオ、おまえにはアマテラスって母ちゃん似の姉ちゃんがいるからよ。会ってくるといいよ!」
「ほ、ほんとか、父ちゃん!?」
「ああ、父親の俺が見ても惚れ直すぐらいのベッピンだ。若いころのイザナミにソックリだ!」
「オー! あの二本の柱周って、いいことしまくってた頃の話だな!?」
「あ、あれは、神聖な国生みの仕事だったんだよ(;^_^!」
「でも、ヤリまくったっだろ!? 父ちゃんの凸と母ちゃんの凹を合わせまくってよ! このエロ親父!!」
「エ、エロじゃねーよ! 国生みだ!!」
 そう言いながらも、イザナギは鼻血を垂らしてしまいました。
「父ちゃん、やらしいぜ。ほら鼻血拭きなよ」
 スサノオはティッシュを箱ごとイザナギの膝に投げてやりました。
「す、すまん……」
「やっぱさ、母ちゃんに会っておかなきゃおさまんねえ……母ちゃんいねーから、姉ちゃんに会ってくるわ。俺のレーゾンデートルの問題なんだよなあ……じゃ、ちょっち行ってくるわ!」

 そうして、スサノオは高天原を目指して行くのでありました……。

 高天原に駆け上っていく息子を仰ぎ見ながらイザナギは思いました。

――あいつ、根本的なとこで誤魔化してるよな。腐っても母だ。イザナミは千曳の大岩で閉じたとは言え、まだ黄泉の国にいるんだぞ。黄泉の国に行くのが本来のあるべき姿だろうが。勇ましいように見えても、どこか日和ってるよな……『ナラガミ ARAGOTO』じゃ、ちゃんと腐り果てたイザナギに会いに行ってるぞ――

 え、そうだったんだ!?

――お、おい、作者! 勝手に心理描写すんじゃねえ(#゚Д゚#)!――

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・41『Departure(逸脱)・2』

2021-01-25 06:00:46 | 小説3

たらしいのにはがある・41
『Departure(逸脱)・2』
          

 


    


 母が息を引き取りました……モスボールおねがいします。

 それだけ伝えると、管理室からナースがやってくるまでの間に、わたしはママのバトルスーツに着替えて駐車場に向かった。

「わるいけど、アズマ貸して。夕方までには帰ってくる」
「あ、あんたは?」
「甲殻機動隊、第一突撃隊隊長里中リサ。ねねのママよ。ねねの制服とカバン預かっといて」
「え、ええ!?」

 わたしは、呆然とする拓磨を置き去りにして第三名神を目指した。

 二時間後、わたしは防衛省から一キロ離れたパーキングに着いた。

 セキュリティーレベル2のエリアで、政府関係者や、政府と特殊な関係にある者でなければ、パーキングは許されない。幸い、このアズマは、小なりと言えど青木財閥の車である。パーキングのセキュリティーには、青木社長秘書のIDをかましてある。そのまま防衛省の中に入ることもできたけど、のちのち拓磨の迷惑になることは避けたかったので、実在の警務隊員のパスをコピーした。本人は仮死状態で植え込みの中で転がっている。三十分は生命反応も出ない。もっとも三十分を超えると、罪もない警務隊員は、そのまま命を失う。仮死状態にする寸前彼女の彼の顔が浮かんだ。一カ月後に結婚の予定のようだ。二十分もすれば仕事は済む。ごめんね……。

 ここに来るまでの二時間で防衛省のセキュリティーは完全に解読した。庁舎に入る寸前で、バトルスーツをステルスモードにした。エレベーターは重量センサーが付いているので使えない。わたしは、地下三階の動力室に向かった。ここの床や、天井にも重量センサーが付いているので、そのままでは入れない。警備員の頭に、動力室からのノイズのダミーをかました。
「ん……?」
 警備員が不審に思い目視で室内の異常確認をするのに十秒かかる。その間に潜り込む。警備員が床に足を降ろすタイミングに合わせて、床に足を着く。警備員の体重は、わたしの体重を引いた分しか感知しないようにしてある。そして、その間に制御板に爆薬をしかけると、警備員の足に合わせて部屋を出る。花粉症の警備員は、部屋を出る寸前クシャミをしたが、それは織り込み済みだ。瞬間跳躍してごまかす。ただ、体重をもどしたとき、オナラをされたのにはヒヤリとした。幸いセンサーは誤差と読んだが、わたしは、極東戦争から十数年で失われた緊張感が悲しくもあった。

 これからやろうとすることが、かくも容易くできてしまうことを、インストールしたママの記憶が悲しがっている。

 ……防衛省も落ちたもんだ。

 長官室の前まで来ると、意外にセキュリティーは甘い。

「甲殻機動隊、第一突撃隊長入ります」
「入れ」
「失礼します」
「ん……おまえは!?」
「セキュリティーの過信ね、声紋チェックもしないなんて。ここは突撃隊でも総隊長しか入れないのよ。わたしは第一突撃隊長と言っただけ」
「里中、治ったのか?」
「里中リサは、二時間前に死んだわ。助からない放射線障害であることは、的場さんが一番ご存じでしょ。だから二階級特進で少佐にしてくれた」
「おまえは……」
「義体よ……」
「グノーシスか!?」
「どうでもいいわ。あなたが防衛政務官だったとき、どれだけ状況判断を誤ったか。死ななくていい二千人が命を落とした。里中リサのように後遺症で亡くなった人間も合わせれば一万人は超えるでしょうね」
「……!」
「この部屋のセキュリティーにはダミーをかましてある。あなたは、甲殻機動隊の来栖隊長と話してることになってる。ゆうべ東海地方で亜空間にほころびができたから」
「な、なにをさせたいんだ、わたしに!?」
「K国とC国の機密条約を流してもらう。両国ともに、こちらへの攻撃準備に入っているのは、情報として上がってきているはずよ。防衛大臣である的場さん。あなたが一人で握りつぶしている……でしょ。機密条約が子供だましなのは、それこそ子供でも分かるわ。条約と情報の両方を流してもらうわ。そうすれば国民も気づくでしょう、第二次極東戦争の危機だって。そして、的場さんたちがどれだけ日和っていたか。もう、昔のハニートラップで懲りたはずでしょうに、性根が腐ってるのね」

 ドーーーーーーーーーーン!!

 腹に響く衝撃音。

「な、何をした!?」
「動力室を吹き飛ばしたの。予備電力で見た目に大きな障害はないでしょうけど、ここのMPCは、全部ダウン」
「な、なんてことを!」
「K国もC国も同じことをやろうとしていた。互いにフライングだって騒ぎになるでしょうね。ただ、わたしが、それより早くフライングしたから、現場の対応は早いわ。的場さんの首が一つ飛んで、大事にはいたらないんだから、良しとしましょう。ほら、お土産」
「ア、アルバイトニュース!?」
「明日から、額に汗して働くのよ、ボクちゃん」

 そうして、わたしはそのまま防衛省を後にした。

 途中、C国とK国の工作員に出くわした。やつらの頭は情報収集で一杯だったので、ダミーの情報をかますことは簡単だった。両国とも互いのフライングだと思っている。
 ただ、現場は忙しいだろう。明日と思っていた攻撃が今日始まった。敵も同じで、準備はまだ整っていない。あらかじめ国防大臣の意向を無視して準備していた味方の勝利は間違いない。パパたちは少し忙しくなるだろうけど、わたしのDepartureは、これで、おしまい。

 夕方になって警察病院に戻った。オート走行でもどると、待合いから拓磨が慌てて出てきた。
「ねねちゃん、大丈夫……!?」
「とりあえず、制服くれる?」
 下着姿のわたしは、ドアの窓を半分だけ開けて、腕を伸ばした……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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まりあ戦記・053『今度のウズメは三人乗り』

2021-01-24 09:50:50 | ボクの妹

・053

『今度のウズメは三人乗り』   

 

 

 ウズメにそっくり。

 

 でも、比較にならないほど大きい!

 わたしが乗っているウズメが三階建てくらいだとすると、目の前に横たわっているソックリは十階建てぐらいはある。

「なんで、こんなに大きいの?」

 素朴な質問をすると、ナユタがあとを続ける。

「って、ゆーか、なんでマンションの下に、こんなのがあるの?」

「職住近接というやつですか(^_^;)」

 中原さんが締めくくる。さすがは現役っていうか、本物少尉。

「今度のウズメは三人で操作するんです(^▽^)/」

 徳川曹長が、新型ワンボックスカーを納車しにきた自動車販売会社の営業のようなことを言う。

 

 床下からの振動と騒音がひどいので「いったいなんなのよ!?」とみなみ大尉がヒスを起こし、金剛少佐が「しかたない、飯の前に見ておくか」と、みんなをクローゼットに入るように指示して「あ、エレベーターになってるんだ!」と感動したのは、ほんのつかの間で、十秒後には、マンション地下のハンガー(格納庫)に来ているってわけ。

 横たわったウズメは、ほとんど完成しているところもあれば、手首や膝とかは欠損というか、まだ取り付けられていなくて、大きいだけに、進捗状況が部分によってひどく差があるように思える。

「作りながら更新してる様子だな」

 金剛少佐がニヤニヤ、このオッサンのニヤニヤは、みなみ大尉ほどじゃないけど、ちょっとムカつく。

「搭乗するのは背中からです。胸部にコクピットがあります」

「「「う~ん」」」

 三人そろって唸る。

 十階建ての大きさとは言え、それは全長のことで、コクピットの胸部は外径で三メートルあまり。装甲やコクピット内のコンソールや機器の容積を考えると、シート部分は一メートルちょっと。三人が乗り組むには、ちょっと狭くはないかなあ……。

「大丈夫ですよ、搭乗すると睡眠状態になって、三人の思念を融合させてオペレートすることになります。手足を動かしての操作は、どうしてもタイムロスが出るし、体を動かせば疲労するのも早いですからね。そういうところを考えた、次世代機であるわけです」

 エンジニアらしく、徳川曹長はとくとくと解説する。

 少佐とみなみ大尉は、ウズメ以外にも各部のチェックをしたいと言うので、わたしたちは姉妹(?)三人で部屋に戻ることにする。

「こっちから行きましょ」

「中原さん?」

「ここに来るには、他のルートもあるみたい。確認しながら行きましょ。それから、わたしのことは姉さんとか呼んでください、そういう設定ですから」

 さすがは現役軍人、わりきりが早い。

 別ルートでマンションの一階に出て廊下を歩いて本来のエレベーターに向かう。

 途中、数人の住人に出くわす。みんな、旧知の間柄みたいに「こんにちは」とか「あら、金剛さんちのお嬢さん」とか挨拶してくれる。

 ちょっと不思議。

「あれだけの騒音があるのに、みなさん普通なんだ……」

「住人は全員が改アクト地雷のロボットね。いざという時には我々をガードするセキュリティーになんだと思う」

 え、えええ……

 ちょっと、言葉が出てこなかった。

 

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誤訳怪訳日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』

2021-01-24 06:42:29 | 評論

訳日本の神話・11
『イザナギの三神・アマテラス』
  


 三人姉弟の長女であるアマテラス=天照大神(あまてらすおおみかみ)は、伊勢神宮の神さまであります。   

 伊勢神宮というのは、日本の神社の総元締めで、アマテラスは皇室のご先祖であり、事あるごとに天皇や皇室の方々が参拝されています。
 庶民の間でも伊勢神宮と言うのは「一番偉い神さま」であると同時に、もっとも親しみのある神社で、内宮外宮を含め125社の宮社すべてを含めたもので、正式には『神宮』であります。

 銀座に似ていますね。銀座は単に地名であるだけではなく銀座通りにある商業施設と文化の総称で、単に『銀座』と言えば東京の銀座で、それ以外の(銀座にあやかった)銀座は、わたしの街の高安銀座のように、地名が頭に付きます。

 江戸時代、庶民が旅行する場合には名主や町年寄が発行してくれる通行手形が必要でした。時代劇で関所で「へえ、これでござります」と、関所役人に差し出しチェックしてもらうのが通行手形であります。海外旅行において通関でパスポートを提示するのと同じことですね。パスポートが無いと出入国管理法違反ということで身柄を拘束され、最悪の場合スパイ容疑などをかけられ死刑になることもあります。
 このパスポート無しで、外国に行ける場合があります。
 難民などになって外国に亡命する場合です。亡命には程度の差はありますが、厳しい審査があります。ちなみに日本が受け入れている亡命は、年間で二桁にはなりません。
 そのくらいパスポートと言うのは大変なものなのですね。

 それと同じくらいに通行手形と言うものも大変なものでした。

 ところが、例外的に通行手形無しで庶民が旅に出る手段がありました。

 お蔭参り(抜け参りともいう)であります。

 ある日、空から伊勢神宮のお札が降ってきます(もちろん誰かが蒔いたか作ったりかしたもの)、そのお札を持っていれば、その場から伊勢参りにでかけていいのです。
「お蔭でね スルリトね ぬけたとさ(^^♪」
 などと囃しながら伊勢を目指します。お蔭参りする者は道中、沿道の人たちから無料で食事や宿泊の世話がうけられます。
 天下御免のお蔭参りであったわけですね。
 めったにお蔭参りは起こりませんが、幕末に大流行して治安悪化の原因になり、江戸幕府崩壊の原因の一つになりました。

 なにが言いたいかというと、ことほど左様に伊勢神宮はエライ! ということであります。

 ご祭神のアマテラスはとびきり偉い神さまであるということを頭においてほしいのであります。そして、この偉い神さまの末裔が高天原から日向国(宮崎県)は高千穂の峰に降り立ち東に進んで大和朝廷を作ったということになっております。
 これが神武東征神話になっていくわけですが、そこは後ほど展開ということにいたします。

 アマテラスは、二千年の日本の歴史の中でのスーパースターであるというイメージを持っていただければ、理解が早いように思います。

 わたしの理解が正しければ、日本の最高神なのですが、女性であるのがいいですね。生まれた時から成熟した美女です。わたしの最初のアマテラスのイメージは絵本に載っていた姿でした。八百万の神さまを従えて雲の上に仏像のように立っています。表情が硬いので、ちょっと近寄りがたい印象だったのですが、後に『わんぱく王子のオロチ退治』という映画アニメを観て親近感が湧きました。美女なのですが、ちゃんと声を出して喜怒哀楽もあるのです。高天原のあれこれに気を配っていて、なんだか女性社長という雰囲気でもあります。あんなに気を配っていては大変だろうと思っていたら、『いなり、こんこん、恋いろは』に出てくるアマテラスは中小企業の女社長みたいな、ちょっとメタボなオバサンで、いろいろ経営とかの気苦労していたら、こうなるだろうなという姿で、妙に納得しました。

 次回は、三兄妹の末っ子であるスサノオに迫ってみたいと思います。

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』

2021-01-24 06:11:28 | 小説3

たらしいのにはがある・40
『Departure(逸脱)・1』
          


    

 


 病室に入ると圧縮された十数年の時間が解凍され、インストールしているような間が空いた。

 ……………

 そして、ようやく言葉が出た。


「ねね……?」
「……ママ」

「ねねなのね……?」
「うん、ねねだよ……本当にママなんだ!」
「こっちに来て、顔をよく見せて……」
 わたしは(俺の感覚はほとんど眠ってしまって、ねねちゃんそのものになっている)ベッドに近づき、ママが両手で顔を挟み、記憶をなぞるように、そして、それを慈しむように撫でるのに任せた。髪がクシャクシャになることさえ懐かしかった。ママは仕事にいく前に、いつもこんな風だった。
「意外と、胸が大きい」
「もう十六歳だよ」
「もう大人だね……」
 ママは、ベッドに横になったまま、わたしを抱きしめた。
「ちょっと苦しいよ、ママ」
「ごめん。ねねのことは……もう死んだと思っていた」
「わたしも、ママは死んだと思っていた」
「パパは、ねねのこと何も話してくれないもんだから」
「わたしにも話してくれなかった……さっき、この病院に行くように言われて、ひょっとしたらって気はしてたんだけど。パパの話って、いつも裏があって、ガックリしてばかり、こうやってママを見るまで……見るまでは……」

 あとは、言葉にはならなかった。

「昨日までは滅菌のICUにいたのよ。それが、今朝になって普通の病室。最終現状回復までしてくれた」
「最終……」
「最終原状回復。LLD……もう手の施しようのない末期患者に、治療を中断するかわりに、健康だった時の状態で終末を迎えさせてくれる。そういう処置。ママの場合、状態がひどいんで、立って歩くことはできないけど、こうやって、昔の姿を取り戻すことができた。甲殻機動隊の鬼中尉も、最後は女扱いしてくれたみたいね」
「ママは、もう少佐だよ」
「そんなお情けの特進なんか意味無いわ。わたしは、いつも現場にいたときのままの中尉よ」
「うん、なんかママらしい」
「カーテンを開けてくれる。せめてガラス越しでも、お日さまを浴びたいの」
「はい」

 わたしは部屋中のカーテンを開けた。

 ママは一瞬眩しそうな顔をしたけど、すぐに嬉しそうな顔になった。本当はいけないんだけど、窓を少し開けて外の空気を入れた。

「ありがとう……懐かしいわね、この雑菌だらけの空気」
「雑菌だなんて失礼よ。常在菌と言ってあげなきゃ」
「ハハ、そうだよね。ごめんね常在菌諸君。ねね、フェリペに入ったんだね」
「あ、フェリペって、ママ嫌いだったんだよね」
「ママ、一カ月で退学になったからね。でも、懐かしい、その制服。ねね、よく似合ってるよ」
 開けた窓から、初夏の風が流れ込んできた。それを敏感に感じ取って、ママは深呼吸をした。つぶった目から涙が一筋流れた。
「ママ……」
「ねねも義体なんだね……」
 ギクリとした。太一さんの心が邪魔をして、うまく表情をつくれない……どうしよう。
「お日さまに晒すと、義体の目は反射率が生体とは異なるの……ここに来て……」
 ママは、ベッドの側にわたしを呼んで、首筋に手を当てた。やばい、全てを読まれる……。
「かわいそうに、人質にとられたのね。パパは、それでも屈しなかった……で、ねねほとんど……」

 そう、パパの戦闘指揮に手を焼いたK国の秘密部隊が、わたしを人質に取った。情報は、ハニートラップにかかった政府の要人から筒抜けだった。

 パパは、わたしの脳の断片から、わたしの記憶や個性を情報として保存し、向こうの世界が提供してくれた義体に移し替えた。わたしをグノーシスのプラットホームにすることを条件に。
「義体だって卑下することはないのよ。ねねの感受性や個性は、ちゃんと生きて成長しているもの。あなたは、わたしのねねよ」
「ママ……」
 涙で滲むママが続けた。
「ほんとうは、ねねのこと生むはずじゃなかった」
「え……」
「こんな仕事していると、家庭や子どもは足かせになるだけ。でも、政府が勧めたの、極東世界の安定を印象づけるためにも、最前線の兵士も家庭を持つべきだって。で、バディーだったパパと結婚して、ねねが生まれたの。政府のプロパガンダに乗せられただけだけど、後悔はしていない。こうやってここに、ねねがいるんだもん」
「ママ……」
「でも、辛い思いばかりさせて、ごめんね。ママは、ねねのこと大好き……だ…………」

「ママ……………」
「……………………」

 ママがフリーズした。

 LLDの特徴だ。死の直前まで、元気な姿でいられるけど、その死は前触れもなく、あっと言う間にやってくる。フリーズしたら一秒で命の灯が消える。
 わたしは、その一秒で、ママの情報をコピーし、あとはずっとママを抱きしめていた。十数年ぶりで会ったのに、あまりにあっけないお別れだったから。

 パパに、すぐに来て欲しいとDMを送った。東海地方の亜空間のほころびが大きくなって、その手当のために行けないという返事が返ってきた。

 わたしは、Departureすることを決意した……。
 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) ねねの母 高機動車のハナちゃん
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魔法少女マヂカ・193『霧子の横・5・こいつは神か運営か』

2021-01-23 08:53:00 | 小説

魔法少女マヂカ・193

『霧子の横・5・こいつは神か運営か』語り手:マヂカ  

 

 

 

 今次の震災を境に世の中は大きく変わっていくんだ。

 
 新畑は、遠くを見るような目をして切り出した。

「僕は、大正と言う時代の修繕をやっているんだ、君たちの時代の言い回しだとメンテナンスとかアップグレードとかいう仕事だよ」

「新畑さんは、神なのか?」

 長年魔法少女をやっていると、ときどき神のような者に出くわす。

 しかしメンテナンスとかアップグレードとか言い出したのは、こいつが初めてだ。

 ニ十一世紀に生きる者には受け入れやすい言葉で入って来る。ちょっと要注意なのだが、取りあえずは調子を合わせておこう。

 曖昧なアルカイックスマイルを浮かべてやると、ちょっと照れたように頭を掻いたぞ。

「……運営というのがしっくりくるかなあ」

「ゲームか投稿サイトみたいだね」

「かもしれない。時々バグが出るしね。僕は、そのバグのようなものを発見し修正することが仕事なんだ。言わばデバックだね」

「いよいよゲームだな」

「霧子くんは華族のお嬢様だが、物事を公正に見る力がある。見るだけじゃなく、公正でないと分かったら修正しようとする勇気と力が」

「デバックの才能か?」

「ああ、その類の力だよ。だから、礼法室の上に望楼を作って、あちこち見て回れるようにしたんだ。霧子君は、勘がいいしバグを正す意欲も高い。将来は優秀なスクリプターになれるだろう」

「ゲームなら、柱になる仕事だな」

「だが、鋭すぎるところがあって、ここのところは控えていた」

「屋敷に閉じこもっていたことか」

「そうだ、礼法室の望楼も閉めていたからね。それが、今次の震災だ。あちこちでバグが頻出する。僕の手には余る。まして、女学生の霧子くんにはね……」

「そうか……霧子を助けてやれということだな」

「さすが魔法少女、理解が早い」

「待ってくれ、合点(がてん)したわけじゃない。新畑さん、あんたは何をする?」

「バグは日本の中だけには留まらない、僕は、世界中のバグを始末する」

「ほう……いよいよ大文字のGODだな」

 踏み込んで茶化したんだが、臆することなく身を乗り出してきた。

「いかにも。しかし、この混沌のままでいいと言う者も居てね。そいつらは、僕たち運営を矮小化しようとしている。僕は、寸でのところで探偵小説の中に閉じ込められるところだった」

「新畑さん、あんたの目、ちょっと危ないぞ」

「あ……ごめん。だからこそ、魔法少女。ちょいとね、君たちの手を借りたいんだ」

「ちょいと? 気楽な物言いをするんだな」

「Take it easyというやつさ。急いては事を仕損じる……いや、急いては事を子孫に及ぼす」

「なんだと?」

「ハハ、単なる語呂合わせさ。おや、どうやら決まったようだ」

 窓から、道路の向かいを見ると、霧子が『赤い鳥』をキープしながら、他の雑誌の品定めをしているところだ。

 手を振ってやると、ちょっと鼻にしわを寄せて手を振り返してきた。

 よしっと口の形で言うと、五冊ほどの雑誌を書店の主人にまとめてもらい、意気揚々と道路をまたいだ。

 
 ゴトリ


 冷やしコーヒーの氷が溶けて、大きな音を立てる。

 令和の時代と違って、氷はカチワリのを使っていて、氷山のひな形のような姿をしている。

 それがでんぐり返ったので音が大きい。

 で……顔をあげると、もう新畑の姿は無かった。

「あらあ?」

 階段を上がってきた霧子が、つまらなさそうに声をあげる。

「忙しい人なんだから……」

 つまらなさそうに口をとがらせると「お願いします」と、霧子は帳場(レジ)に雑誌を預け、二人で学習院に戻る。

 帰り道は震災が起こる数日前になっているようで、阿鼻叫喚を目にすることも無かった。

 

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男

 

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・10『イザナギの三神・ツクヨミ』

2021-01-23 06:00:58 | 評論

訳日本の神話・10
『イザナギの三神・ツクヨミ』
  

 ギリシア神話における月の神はアルテミスです。

 ゼウスの娘で、アポロンの双子の妹ということになっています。
 ギリシア神話に出てくる女神は、たいがい豊満なガッチリ美女。ミロのヴィーナスを思い浮かべればイメージできると思います。
 その豊満グラマラスな美女群の中で、アルテミス一人だけが、華奢でペチャパイの女の子なのであります。
 狩の神さまでもあるアルテミスは、ノースリーブのミニワンピで背中に矢筒を背負っています。サンダル履きで、髪はベリーショート、 とうぜん性格も、ティーンの女の子そのもの。敏捷な気分屋で、ツンデレの元祖。ジブリの『もののけ姫』に似ていると言えばイメージしていただけるでしょうか。
 こんなエピソードがあります。
 ある日、池で水浴びをしているところをリア充の若者に見られてしまいます。若者は「なんて、キュートで可愛いんだ!」と惚れてくれるのですが、反応はトンガっています。

「この覗きのリア充めええええええええええ!!!」

 一瞬で、若者を石に変えてしまいます。

 なかなか魅力的で、ゲームやカードなどに頻繁に出てきますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。


 これに引き換え、イザナギの三人姉弟の真ん中である月讀命(つくよみのみこと)は、実に影の薄い存在であります。
 どれだけ薄いかと言いますと、父のイザナギから「夜の国を治めなさい」と言われた後、それっきり現れてこないのです。
 日本書紀で、ほんの一度だけ保食神(うけもちかみ)という穀物の神さまを殺したという記述があるだけで、古事記には出てきません。
 日本書紀よりも古い古事記に出てこないのですから、元々は無かったと考えてもいいのかもしれません。

 では、なぜツクヨミは出てくるのか?

 3という数字がキーワードかと思います。
 イザナギのマジックフライトでも述べましたが、三段階や3という数字は安定するということで、後付けされたのではないかと思います。
 もう一つは、中国から伝わった陰陽思想……思想というと大げさなのですが、記紀神話が成立した8世紀初頭では、陰陽で表現することがクールだと思われていたのではないでしょうか?
 日本人と言うのは、こういう点にとても柔軟、フレキシブルです。カッコいいと思えばなんでもありなのです。

 イザナギの三神について語りたかったのですが、とりあえずツクヨミでありました。
 

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妹が憎たらしいのには訳がある・39『里中ミッション・4』

2021-01-23 05:54:06 | 小説3

たらしいのにはがある・39
『里中ミッション・4』
          

 

   

 

 里中副長は複雑な表情で俺の顔を覗き込んだ……。

「もう一度、ねねにインストールされてやってくれないか」
「え、また青木のやつが?」
「彼は、もうねねの崇拝者だよ。こんどは、ちょっと厄介だ……」

 というわけで、ボクは再びねねちゃんのPCに入り込んで里中ミッションを遂行することになった。
 土曜日だったけど、大阪フェリペは私学なので通わなくてはならない。
 家にはハナちゃんの修理に手間取っていると伝えてフェリペの校門をくぐる。

 やっぱり女子校というのは慣れない。

 まず制服。前は緊張していて、スカートの中で内股が擦れ合う違和感しか感じなかったが、フェリペの制服は、ジャンパースカートの上から、一つボタンの上着を着るだけである。体を動かすたびに、自分の……今はねねちゃんの体の香りが、服の中を伝って香ってくる。この年齢の女の子のそれは独特だ。幸子で慣れてはいるんだけども、のべつ幕無しであるのにはまいった。

 チサちゃんが、完全にクラスに馴染んでいるのは嬉しかった。

 チサちゃんは、向こうの世界の幸子なんだけど、向こうの世界は極東戦争の真っ最中であったり、グノーシスの中でも意見が分かれていたり、状況が不安定だったりするので、こちらに来ている。
 記憶は俺の従姉妹ということになっている。CPではなく、生身の頭脳に書き込まれているのが痛ましかった。でも、見た限り、高校生活を楽しんでいるようなので安心。

 こんなこともある。

「ねねちゃん、座布団持ってる?」
「え?」
「あ、急な来客になった子がいて」

 二時間目が、終わって、チサちゃんが耳打ちしてきた。一瞬訳が分からないが、プログラムされたねねちゃんは素直に反応する。
「はい、どうぞ」
 むき出しで、それを渡す自分に驚いた。チサちゃんはマジックのように受け取ると、見えないようにして背後のヨッチャンという子に渡した。
「サンキュー」
 ヨッチャンがチラッと視線を送って、行ってしまった。俺は、ドギマギしながら曖昧な笑顔を返した。
「ねねちゃん、偉いね」
「え、どうして?」
「こういうのって、変にポーカーフェイスでやったりするじゃない。それをサリゲニ『ドンマイ』顔してあげるんだもん。そういうの自然には、なかなかできないものよ」
 俺は、ただ戸惑っただけなんだけど、プログラムされたねねちゃんの感情表現といっしょになると微妙な表情になるようだった。

 放課後、駅まで行くと拓磨が待っていた。

 一瞬「あ」と思ったけど、朝自分でメールしたことを思い出した。
「駅の向こうに回してあるから」
 そう言うと、拓磨は地下道を通って駅の裏に行き、わたしは少し遅れて後に付いていった。

「お母さん、大事にな……」

 自走モードの運転席から、拓磨が遠慮気味に声を掛けてきた。自走モードだから、ドライバーの気持ちや気遣いがモロに伝わってくる。拓磨は、心から心配してくれて、控えめに励ましてくれている。さすがに青木財閥の御曹司、病院の名前を伝えただけで、事情は飲み込んでくれたようだ。

 警察病院S病棟……表面は放射線治療病棟。内実は極東戦争で重傷を負った……有り体に言えば、回復不能者のホスピスだ。

 この情報は、今度ねねちゃんのPCにダイブして初めて分かったこと。
 ねねちゃんのお母さんは優秀な甲殻機動隊のオフィサーだった。対馬戦争の初期、カビの生えたような武器使用三原則に縛られて、打撃力の強い武器の先制使用ができなかった。敵は、違法な超小型戦術核砲弾を装填してきたとアナライザーが警告していた。

「みんな、逃げて!」

「でも、中尉は!?」
「わたしは、敵を引きつける」
 お母さんは、そう言うとデコイを三発打ち上げた。
「あんなデコイが有効だなんて考えてるのは、政府のエライサンだけですよ」
「だからよ。敵もデコイの真下にあなた達がいるとは思わない。認識票を置いてさっさと行きなさい!」
「それじゃ、中尉一人がターゲットになってしまう」
「大丈夫、着弾する前に逃げる。まだ、かわいい娘がいるの、付録の亭主もね。大丈夫、正気よ」
「中尉……」
「早く!」
「はっ!」
 部下は無事に逃げた。お母さんも、居所を二度変えたあと、居場所を特定される認識票や、武器を全部捨てて逃げた……それで間に合うはずだった。敵は国際条約に違反した弾頭を使っていた。そして、お母さんは、大量の放射線を浴びてしまった。

 わたしは、今までここに来ることは禁じられていた。情報さえインストールされていなかった。鍛え上げたお母さんの感覚では、わたしが義体であることなんか直ぐに見破ってしまうからだ。

 でも、お母さんには、もう時間は無かった。だからお父さんは太一さんをインストールした状態で、わたしを寄こしたんだ。太一さんといっしょなら、オリジナルのねねが表現できるから……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 高機動車のハナちゃん

 

 

 

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銀河太平記・026『飯の用意をしろ』

2021-01-22 09:09:28 | 小説4

・026

『飯の用意をしろ』 ダッシュ   

 

 

 怪我人が出なかったのはすみれ先生のおかげだろう。

 

 見てくれはゴリラみたいな筋肉バカだが、ここ一番の緊急事態で的確な判断と操船ができるのはさすがだ。

「みんな、けがは無いか!?」

 安否確認も、俺たち生徒を先にして、元帥と森ノ宮親王を後にした。

 副官のヨイチは、とっさに体ごと雑のうを元帥と親王殿下の背中にあてがって、主人と貴人の安全を計っていた。

「無事なようでなによりだ……」

 全員の無事が確認できると、親王殿下が安堵の声をあげられる。

 華奢な体つきなのに、穏やかな声には、不思議に人を安心させる響きがある。

「姉崎先生、フライトレコーダーは無事ですか?」

 元帥が声をあげると、すみれ先生はインタフェイスの画面を数回タッチした。

「精度はよくありませんが、残っています。ご覧になりますか?」

「頼みます」

 24インチほどの画面に全員の視線が注がれる。

「貨物艇なので、正確な攻撃地点までは分かりませんが、学園艦の爆発の瞬間の姿でおおよその見当はつくでしょう」

 フライトレコーダーのフレームレートは80と出ている。大昔のVR画面くらいだろうか……すみれ先生が調整すると、少しブレた感じで学園艦の断末魔が映し出された。

 学園艦はくの字に折れて、余ったエネルギーは鈍角に折れた船体のあちこちの破孔から飛び出している。

 不謹慎だけど、去年の卒業ボウル(パーティー)の時に天井から吊ってあったミラーボールを思い出した。

「船体の折れから推測すると、北アメリカのどこかだな」

「北アメリカ……」

 俺たちがいるからだろう、大人たちは、それ以上の推測を控えているが、俺たちにも見当がついた。

 アメリカの西海岸には漢明国の勢力が入り込んで、合衆国でも把握できない軍事施設があるという噂だ。

「もういいでしょ」

「了解」

 親王殿下が言って、元帥が頷きすみれ先生が小さく了解しながらジョイスティックを倒した。

 13号艇は小柄な割には大きな弧を描いて進路を変え始める。

「おまえらは、飯の用意をしろ」

 すみれ先生は宿泊学習の指導をするような気楽な声で命じた。

 分かってる、13号艇が大きく回頭するときに、キャノピーいっぱいに学園艦の残骸が見えてしまう。それを直接目にしないように気を配ったんだ。

 でも、一部の残骸は、まだ火を噴いていて、それがレプリケーターのアクリルの反射している。レプリケーターは食品合成機だから、こんな貨物艇でも清潔が保たれていて、アクリルは磨き抜かれたガラスのようだ。

「ウ」

 未来が抑えた悲鳴を上げた。

 俺と同じものを見たんだ。

 残骸に混じって浮遊している同級生たちの切れ端を。

 13号艇は、北米大陸を避けるように地球の裏側に回ってから、進路を月に向け始めた。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官

 ※ 事項

  • 扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

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