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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:047『シリンダー融合体との激戦!』

2023-03-24 07:09:32 | 時かける少女

RE・

47『シリンダー融合体との激戦!』テル  

 

 

 連携して戦うのは初めてだ。

 
 にもかかわらず、四人はベテランのパーティーのように展開した。

 弓を得物とするケイトは後方から矢を射かける。

 タングリスは戦車兵なのだが、いつのまにか五メートルはあろうかという鞭を構えて融合体の右翼にまわっている。

 ブリはヘリコプターのようにツィンテールを旋回させて左翼でホバリング。

 わたしは、ソードを右手にダガーを左手に構えて二刀流。

 

 合図があったわけではない。

 

 四人とも、無意識に全員の態勢が整うのを待っていた。

 そして、ほんのコンマ二秒で占位し終えると、一斉に融合体に跳びかかって行った。

 トリャー! 

 ブリュンヒルデは一声を放つとツィンテールを高速回転させながら融合体の周囲を飛んで蹴散らしていく。

 セイ! セイ! 

 掛け声も勇ましく、一振りで数十個のシリンダーを叩き潰すタングリス。

 …………! …………! …………! 

 意外に無言で攻め立てているのはケイトだ。

 矢筒には数本の矢が入っているだけなのだが、それはいくら撃っても減りはしない。ただ、ツィンテールや鞭に比べて速度が遅い。一矢放つのに一秒ちょっとかかっている。幾千幾万あるか分からないシリンダーと対峙するには心もとない。

 トーー! ヤーー!

 古典的な掛け声で迫るのはわたしだ。

 恥ずかしながら、一度の剣戟で倒せるのは数体のシリンダーに過ぎない。うかうか融合体の傍にいては圧倒的な数のシリンダーに食いつかれ、雪ダルマならぬシリンダルマになって圧殺されてしまう。せいぜい三度の攻撃で離脱せざるを得ない。

 トヤーー!! セヤーー!!

 力を強めながら再度、再々度攻撃を加える!

 攻撃に気を取られているうちに、背中や足、頭にシリンダーは食らいついてくる。

 シリンダー一つ一つの威力はしれているが、度重なるとバカにならない、一分とたたないうちにHPゲージは半分を割るほどになってしまう。

 ブリュンヒルデとタングリスは、ツィンテールと鞭の違いはあるが、高速で旋回するので旋回半径に入ったシリンダーの大方を蹴散らしている。

 しかし、ほんの僅かが、旋回の間隙から突き進んで、あるものは打ちかかり、あるものは食らいつく。そして、次第に二人とも動きを鈍らせていくではないか!

 ウオーーー!

 渾身の吶喊でシリンダルマになりかけた二人に接近、二撃、三撃加えて離脱。

 すまん!

 瞬間の感謝を口にし、再び攻撃に向かう二人!

 アナライズすると、融合体のHPバーは七十パーセントのところで増減を繰り返している。

 周囲を窺うと、融合体は我々との戦闘をこなしながらも、強力な引力で個体のシリンダー達を取り込んでいる。

 かたや、我々はHP残量は四十パーセントほど。

 我々のHPは確実に減っていくが、融合体は増減が拮抗して、ブレながらも七十パーセントを維持している。

 このままではじり貧だ!

 ブチ!

 そう思った時、タングリスの鞭が手元の所で千切れて明後日の方角に飛んでしまった!

 残り一本の鞭で戦闘を継続するも、シリンダーの威力が勝っていて、十秒もたたないうちに融合体に取り込まれそうになる。

 
 トギャーーーー!!!

 グォーーーーー!!!

 
 期せずして、ブリュンヒルデと共に救援に向かう。

 ビシバシ! バリバリ! 

 叩きのめし引き剥がししてグリを救助し一気に数百メートル離脱する。

 
「だめだ、HPが……」

 
 タングリスのHPは二目盛り残すのみだ。それも、点滅を繰り返し、放置していれば数秒で消えてしまうだろう。

「に、逃げてください……」

「しっかりしろ!」

 最後の一目盛りが消えた……その刹那、タングリスのHPバーがエメラルドグリーンに底光りして、次の瞬間にはゲージに満杯のグリーンに復活した!

「こ、これは?」

 目を転ずると、中空に両手を広げて十字の姿勢になったケイトがグリーンに光ながら浮遊している。

 ケアルフラーーーーッシュ!

 ケイトにはヒーラーの素養があったのだった!

 ステータスが上がった。

 

☆ ステータス

 HP:1000 MP:800 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・20 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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鳴かぬなら 信長転生記 114『いざ出陣!』

2023-03-23 11:11:54 | ノベル2

ら 信長転生記

114『いざ出陣!信長 

 

 

 敵部隊を発見しました! 

 

 五組の偵察隊の内三組が敵を発見した。

「三組とも発見だと! どれが本当なんだ(;'∀')!?」

 矢継ぎ早に三隊の報告を聞いて桃太郎は焦った。当然部下たちにも動揺が走る。

「落ち着け、三隊とも正しい報告をしておる」

「どうしてだ、偵察隊は一里(4キロ)の間隔をあけて出してある、三組とも敵部隊を発見するのはおかしいじゃないか!?」

「同じなんだ。二番から四番の偵察隊が発見している、それぞれ、同じ軍勢の頭と腹と尻尾を発見したんだ。敵の行軍は、少なく見積もって三里、常識的に考えれば四里ほどになるだろう」

「四里……16キロの行軍か!?」

「敵の行軍は何列だった?」

 二列!   三列です!   四列でした!

「バラバラじゃないか! 役に立たん偵察隊だ!」

 気の短そうな猿が顔を赤くする。

「行軍は道幅によって変化する。中をとって三列と考えればいいだろう」

「三列だとすると……一人1メートル……一里で4000……それが三列で……四里で36000人」

 冷静な犬が即座に計算し、雉と猿と三人で顔を見交わす。

 さすがは桃太郎の幕僚、いきなり声を上げては、動揺をきたすと声を呑む。

「36000だとぉ!」

 そう叫んで桃太郎は馬の鞍に立って自軍の数を、よせばいいのに数える。

「何度数えても3000人しかいないんだぞ!」

 ええ~~~~~~~(;'∀')!!

 一瞬で動揺が走る。

 

「狼狽えるな!」

 

 いかん、つい自分の軍勢を率いている気になって一喝してしまう。

 

 シーーーーーーーン

 

 く……静まるのはいいが、その目は止めろ、まるでわたしが大将のようではないか(-_-;)。

「頼むよ鶴姫ぇ(^_^;)」

 桃太郎、だらしなすぎ!

 ここはいちばんカマシて、全軍の気を一つにしなければ!

「聞け! この森で足を停めたのも故あってのこと、見よ、そこな桃の木を!」

 桃かどうかは分からんが、桃色じみた五弁の花をワッサカ咲かせている。これをネタにするしかない。

「御大将桃太郎を賞賛する奇瑞の徴! これより、全軍で必勝の祈念をする! 御大将を中心に扇の形に開け!」

 

 おお!!

 

 戦はノリと勢いだ。敵の位置は掴めた。大将桃太郎のテンションをマックスにあげて、一気に敵の中央を突くにしくはない。

「な、なんて言って祈願したらいい?」

「焦るな、祝詞はあげてやる。お前は、しっかり拝跪して『いざ、出陣!』と叫べばいい」

「わ、分かった鶴ちゃん(#'∀'#)」

 

「かけまくも、畏き桃の木大神に畏まりて申さく……我ら桃太郎軍団三千余名は、この桃の森に旗を上げ、仇なす鬼どもを平らげんと欲し……」

 

 我ながらすらすらと祝詞の願文が浮かんでくる。

 大山祇神社の鶴姫の成りをしているからか? 

 いや、これはデジャヴ……桶狭間の出陣において、熱田神宮で願文を捧げた時に似ている。

 カチャカチャ

 腰の草薙の剣が鳴った。そうか、草薙の剣はあっちゃんの本性。

 奮い立っているようにも、笑っているようにも感じられる。

 こういう場合は良い方に受け止めて置けばいい。

「よし! 桃の木大神は我らを嘉したもうたぞ! 御大将、檄をとばされませ!」

「お、おう!…………」

「なんか言え!」

「も、桃栗三年柿八年! 梅は酸い酸い十三年 梨はゆるゆる十五年 柚子の大馬鹿十八年 蜜柑の間抜けは二十年!」

 なんか、無駄に格言を並べてる。

「ここに気は満ちた! いざいざ出陣じゃあ!!!」

「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」

 

 ゴロゴロゴロ、ピッシャーーン!!

 

 折から、俄かに雷鳴轟き、稲妻が走った!

 もう完全に桶狭間のノリだ。

 ノリと勢いは十分、敵の大将は桶狭間!

 三千の軍勢は、馬蹄を轟かせ篠突く雨の中を桶狭間的なものに向かって突き進んだ!

 しかし、これは素戔嗚の化身たる桃太郎退治のはず?

 まあいい、乗りかかった戦、設定は桶狭間そのもの。

 

 ならば勝つしかない!

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神

 

 

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RE・かの世界この世界:046『荒ぶるブリュンヒルデ!』

2023-03-23 06:34:17 | 時かける少女

RE・

46『荒ぶるブリュンヒルデ!』テル  

 

 

 待てっ!!

 タングリスがイグニッションを押そうとした時、凛として制止の声があがった。

 え?

 それがブリの声だと脳みそが理解するのに数秒を要した。いつもの気まぐれで小学生気分が抜けない中坊のようなブリではなかった。凛とした声に瞬時戸惑ったが、身を乗り出したブリの表情は幼いながらも天晴れヴァルキリアの姫騎士のそれであった( ゚Д゚)!

 驚く間もなくブリは続ける。

「禍々しいものがやってくるぞ!」

 そう続けてペリスコープに食らいつくブリ。

 タングリスもキューポラの八つあるペリスコープを舐めるように確認した。

「「あれは……!?」」

 発見の声は主従同時だ。

「おまえたちも見ろ」

 促されて、わたしもケイトとペリスコープに食らいついた。

 

 なんだ、あれは……(°д°)?

 

 それは、数千個の泡が緩く集合してボンヤリと人型になったものだ。

 蚊柱の一匹一匹が蚊ではなく泡粒なのだと言ったら分かるだろうか……それが身の丈五十メートルほどになってやってくるのだ。

「確認だ!」

 ブリがキューポラから飛び出し、わたしたちも続いた。

「伏せろ!」

「イテ!」

 ボンヤリ出てきたケイトがブリに押さえつけられる。

 寝ていた時はケイトと似た者同士に見えたが、文字通り覚醒すると、その差は歴然だ。

「……シリンダーが融合しかかっているんだ」

 数秒観察してブリが結論を出した。

 
 泡粒に見えたのはシリンダーだった。


 一つ一つのシリンダーは融合の中心から逃れようとしているのだが、引力が強すぎて逃れられないロケットのように放物線を描いて引き戻され、少し力の強い個体は人工衛星のように融合体の周囲を回っている。引力に逆らって逃げおおせている者は、ほんの僅かだ。

「結合体以上のものになりかかっている」

 ムヘンの南半分、ブリと囚人地区を出ようとして散々悩まされたのがシリンダーの結合体だ。

 数百のシリンダーが縦に結合して無数に繋がったダンゴのようになって、次々に襲い掛かって来た。

 シリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリ

 シリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリ

 シリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリ

 ムヘンの流刑地ではブリの結界で身を隠し、タングリスとタングニョ-ストが操縦する超重戦車ラーテに助けられた。あの時の結合体の三乗倍も禍々しい。

「逃げます!」

 タングリスが促した。

「いや、成敗する!」

 ブリは、スックと砲塔の上に立ち上がり、拳を天に突き上げた!

「姫! ブリュンヒルデ姫!」

 禁じられたはずの真名で制止するタングニョースト!

「完全に融合してしまっては手に負えなくなるぞ、今なら倒せる!」

 ブリのツインテールが光を帯びて生き物のように融合体目がけて伸びていく!
 
 ブリュンブリュン! ブリュンブリュン!

 これまでの戦闘でツインテールの威力は知っているつもりだったが、いま目にしているものは次元が違った。

『中二病でも恋がしたい!』の凸守早苗を思い出したが、その勇姿と威力は遥かにその上をいく!

 って……なんのことだ? いきなり別人格が湧き出たような気がしたが、直ぐに小早川照姫の意識に戻った。

 荒々しくうねるツインテールは、もはや独立したモンスターだ!

 ブリは、そのモンスターを操る荒ぶる神だ!

 
 グギギギ…………ブリュン!! 

 
 ツインテールが撓ったかと思うと、パチンコのゴムのようになってブリを空中に打ち出した!

 いや、ブリが突出してツインテールを従えているのだ!

 シリシリ シリン!

 融合体は、それに気づいて、体ごとこちらを志向し始めた。

「我々も続こう!」

「うん!」

「おお!」

 
 わたしたち三人も続いてジャンプした!

 

☆ ステータス

  • HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト
  • 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル
  • 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  • テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  • ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
  • ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  • グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

  • 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  • 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  • 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

2023-03-22 15:58:59 | 小説4

・152

『ブンカ―へ救急出動』メグミ 

 

 

 島のロボットの9割が戦死した。

 

 並列化を解いて、相互の連絡は手旗信号を使ったり発光信号に変えてみたり、全てアナログ。

 デジタルでなくとも電気やパルスを使った通信であれば、漢明軍はいかようにもアクセスし、数秒で発信元を突き止めて攻撃を加えてくる。

 ピピ ピ ピピピ ピピ ピピピ  ピピ ピ ピピピ ピピ ピピピ

 発光信号が二度繰り返され、こちらは――ピ――と一度だけの了解信号を送る。

 ○○地区で重傷のロボットが出た。その救援要請に――了解――の信号を送ったところ。

 平時なら救援と回復に関するスキルを送ってやれば、インストールしたロボットが99%わたしと同じスキルで修理、回復をする。しかし、今は島でA級スキルを持っているエンジニアはわたしとお岩さんだけだ。

 ついこないだまでは、わたし程度のエンジニアは百人近く居た。

 しかし、大半が本土からやってきた者たちで、漢明の侵略が始まった前後に本土に戻ってしまった。生まれて初めての戦争にビビってしまった者もいるけど、本土の役所や企業に紐づけされていて帰還命令に従わざるを得なかった者も多い。

 島の北側をお岩さん。南側をわたしが分担しているけど、先週からは臨機応変。

 今から駆けつけるのも北にあるボランティア受け入れのためのブンカ―だ。

 

「ニッパチ、この往診が終わったら本土に渡って」

「………………はい」

 

 数秒迷って、やっと助手のニッパチが頷く。

「ニッパチの胸には、西之島一万人のロボットのデータが入ってるのよ。しっかり守って、この戦いが終わったら本土で復元してやって」

「はい、分かってます!」

「うん。じゃ、行くわよ」

「ラジャー('◇')ゞ」

 おどけて返事を返してくれる。

 相棒のイッパチにも同じ改修を施して本土に行かせたが、イッパチの乗ったパルス機は八丈島沖で消息を絶っている。

 ニッパチを無事に逃がしてやらなければ、一万人のロボットたちは二度と復元できなくなる。

 島の慰霊碑は、落盤事故の分で沢山だからね。

「メグミさん、元気出してください」

「あ、大丈夫だよ」

「これ、どうぞ」

「え?」

 ニッパチが胸の谷間から出したのは、ちょっといびつになったサーターアンダギー。

「レプリケーター(自動食品生成機)のじゃないです。沖縄から来た最後の一個」

「え、まだあったの?」

「預金に来たお客さんがくれたんです。ニッパチはロボットじゃないから有機物は摂取できないですから」

「あ、そうか……」

 ニッパチは、作業機械に手を加えてロボット化したもので、二十三世紀の規格ではロボットに分類されない。

 人の形をした作業機械。有機物からエネルギーを採取できないことや高度な並列化ができないなど僅かな違いがあるだけで、立派に西之島銀行カンパニー本店の店長を務めている。島では、もともとロボットと人間を区別する意識も希薄で、そんな違いを意識する者は少ない。だからこそ、親しみからお菓子などをもらうこともあり、ニッパチも、いちいち「食べられませんから」などと無粋な返事はしないんだ。

 

 ブンカ―まではニッパチの背中に掴まって行く。

 ニッパチが居なければ、島内の移動は三倍以上の時間がかかるだろう。

 だが、いつまでもニッパチを救急車代わりに使う訳にもいかない。はてさて……あ( ゚Д゚)。

「どうしたんですか、メグミさん?」

「考え事をしているうちにサーターアンダギー食べてしまった(-_-;)」

「ほんとですか?」

「うん、包み紙しかないし……ああ、損した!」

「はい、これ」

「え?」

 ニッパチの手には、まだ食べかけのサーターアンダギーが載っていた。

「らしくありませんねえ、考え事してて落としたんですよ」

「あ、ごめん(^_^;)」

「早く食べてください、ブンカ―は、あの岩の向こうですから」

「うん、ムシャムシャ……やっぱり、本場のサーターアンダギーはちがうわあ……」

 

 ブンカ―の防護扉を開けて階段を降りる。

 

「負傷者はどこ!? ラボのメグミが来たわよ!」

「メグミさん、こっちこっち!」

 ラッタルの下から声、B鉱区の主任ロボットが手を振っている。

「飛びます!」

 軽くジャンプをしたかと思うと、ニッパチはわたしをオンブしたまま20メートル下のドッグまで飛び降りた。

 まずは、瀕死のロボットの治療……三体の負傷ロボットを確認した向こう、ブンカ―の入り口から入って来る水陸両用のパルス車が目に入った。

 ルーフから上半身を覗かせているのは越萌カンパニーのCEO。いや、纏っているオーラは、見慣れた越萌マリではなく、歴戦の武人のそれであった。

 

 このオーラは……?

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  •  

 

 

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RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

2023-03-22 06:33:49 | 時かける少女

RE・

45『シリンダー』テル  

 

 

 異世界から持ち込まれた愛玩動物なんです

 
「シリンダーは愛玩動物なんですか?」

 ハッチの縁に腰を預け、戦い慣れた下士官の余裕でグリは語る。

 シュタインドルフまでの道のりはムヘン川の南岸を一本道なので、操縦をオートにしてキューポラから上半身を晒している。

 ブリとケイトは最初っからエンジンルームの上にドンゴロスを敷いて寝っ転がっている。

 四人乗りに改造されているとはいえ、定員三人の二号戦車の中で長時間大人しくしているのは厳しい。

 じっさい、ムヘンブルグの北門で出会った前線帰りの二号戦車は同じように砲塔やエンジンルームの上に乗員を載せていた。

 車内にいるとストレスのエンジン音だが、外に出てみると心地よい振動になるので、ブリとケイトは眠ってしまっている。

「トール元帥の平定が落ち着いたころに入植者が見つけて飼い始めたのが最初だと言われています。おそらく始りの荒野に迷い込んだ異世界の動物です。見かけが、なんというか、とても和みます」

 たしかに、シリンダーはお尻にソックリで、無害であるという条件付きだが、割れ目の奥にある口でブヒブヒ声をたてられては、たいていの人間が笑ってしまうだろう。

「二千年紀に入ってペットとして飼われだしたんですが、野生化したものが牙をむくようになったと言われています」

「最初から凶暴なわけじゃないんだ……」

「発見されたころは、人懐こい小動物だったんです。でなければペットにはならなかったでしょう」

「人に飼われて、ふたたび野生化することで凶暴になるんだ……なんだか教訓的ですね」

 
 ピピピピピ! ピピピピピ!

 
 車内からアラームが響いた。

「敵性アラームです、車内に戻って!」

「おい、起きろ!」

 エンジンルーム上の二人を叩き起こす。

 熟睡していた二人を収容するのは大変だったが、なんとか車内に潜る。

「シリンダーの群れです……」

 ドップラーの波形を見て、グリが判断する。

「だったら、やっつけようよ!」

「そーだそーだ!」

 お昼寝組は威勢がいい。

「数が多すぎます、身を潜めます」

 グィーーン

 二号は真地旋回すると川辺の葦の中に突き進む。

 小柄な二号は、スッポリと収まって、直上から見られない限り発見ははれないだろう。

 
 シリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリシリ

 
 体を表すような鳴き声が、二号の装甲を通しても聞こえてくる。

 一つ一つは人を食ったようなおかしくも可愛い鳴き声なのだけど、幾百幾千と集まると害意は無いとはいえ、かなりの圧だ。

 鳴き声が消えても、念のため十分ほどはエンジンを始動させずに身を潜めた。

 

☆ ステータス

  • HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト
  • 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル
  • 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  • テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  • ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
  • ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  • グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

  • 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  • 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  • 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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くノ一その一今のうち・46『心の中』

2023-03-21 11:59:31 | 小説3

くノ一その一今のうち

46『心の中』 

 

 

 その二日後の夜、甲斐善光寺に忍んだ。誰にも言っていない。

 

 まあやに言えば心配をかけるし適当な嘘もつかなきゃならない。課長代理に言えば大事になる。

 金堂には破風から入った。

 ホタ

 音がするような着地はしないが、表現すると、こんな感じ。

 草原の国に忍んだことを思い出す。あの時も寺院の破風から侵入した。まだ何カ月もたっていないけど何年も前の事だったような気がする。次は破風からの侵入は避けよう。忍者のワンパターンは身を亡ぼす。

 いっそ真っ暗ならいいんだけど、うっすらと常夜灯が点いている。

 誰かに見られているような錯覚。

 分かっている、天井に描かれた八方睨みの竜だ。

 戒壇巡りと並ぶ善光寺の名物。最初に来た時に三村紘一に化けていた課長代理が教えてくれた。

 真下で手を叩けば「天人の警蹕のように響く」と課長代理は難しく例えるけど、観光客のおじさんが手を叩いて、リアル女子高生でもあるわたしは、渋谷の交差点あたりで黄色信号で飛び出して「フライングはいけません!」と警察官のマイクで注意されたぐらいにビックリした。

 昔の人は、AIも監視カメラも無いのに天井に龍の絵を描くだけでセキュリティーにしたんだ。忍びなら、手を叩かなくても増幅された気配で侵入者に気が付く。

 須弥壇の隙間を縫うようにして戒壇巡りに侵入。

 これで三度目になるので手探りをしなくても歩けるんだけど、右側の壁に手をついて時計回りに歩く。

 パンフレットの説明には出入り口のある左側に手をついてと書いてある。右側には出入り口がないので、いつまでも出口にたどり着けない。

 戒壇巡りの通路は草書で書いた『心』の字の形をしている。「そうだよ、大事なのは気持ち、心だよ……」とまあやに言った言葉で閃いたんだ。

 大事なものは心の内にある、信玄の心の内に。

 つまり、信玄が尊崇してやまなかった善光寺戒壇巡りの心の内に。

 手の高さを変えて六周した。

 闇の中で混乱して、稀に右側に手をつく者がいるんだ。検索すると、右側に手をついて三周した人も居た。

 だから、普通に手をつく高さに有るはずはない。

 六周目、通路と壁の境目をなぞっていて違和感。微妙に隙間があるような気がした。

 気がしたがスイッチや鍵めいたものは見当たらない。

 

 クンカクンカ……ニオイを嗅いでみる。

 

 もし正解なら、開いた時に中の空気が流れ出し、僅かでも残っているはずだ……が、その残滓はなかった。

 勘違いか?

 数分悩む……夜明けまでにはホテルに戻らなければならない。

 ひょっとして…………二割の閃き、八割はダメもとの精神。壁のその部分に指で『心』となぞってみる。

 コト

 石がため息ついたらこんな感じという音がして、一尺四方ほどに壁が後退して出入り口が現れた!

 微かに空気が流れ込んでいく……そうか、微妙に陰圧が掛かっていて、中の空気を吐き出さないようにできているんだ。

 前後に気を飛ばす。後にも先にも人の気配はない。

 覚悟を決めて中に踏み込んだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

2023-03-21 07:08:29 | 時かける少女

RE・

44『ムヘン略記』テル  

 

 

 

 ムヘンの地は菱餅のような形をしている。

 

 菱餅の中央に城塞都市ムヘンブルグがあり、その北を東西に荒川ほどのムヘン川が流れている。

 昔は化外の地ムヘンと呼ばれ、主神オーディンの力も及ばぬ蛮族と化け物の地と嫌われ、神族でさえ足を踏み入れることは稀であった。

 しかし、オーディン紀元千年紀のころに、ムヘンの南端、菱餅の下のほうが『始りの荒野』と繋がっていることが発見された。

 始まりの荒野は、他の異世界と繋がっていて、そこから様々な異世界の神々や人間やクリーチャーが現れてはオーディンの知ろしめす大地や国々を脅かしていることがジークフリートの冒険で知られた。

 ジークフリートの非業の死のあと、ムヘンの地の平定を任されたのがトール元帥だ。

 トール元帥は、城塞都市ムヘンブルグを築き、ムヘンと始りの荒野の平定に掛かった。

 一時はムヘン全域と始りの荒野の半分を平定し、オーディンの平和と呼ばれる百年が訪れ、ムヘンは豊富な古戦場を資源として半ば神々の観光地になった。

 ムヘンブルグは、その観光地の中心として整備・拡大が進められ、二千年紀には、ほぼ現在のムヘンブルグが形成された。

 

 二千年紀に入ると、蛮族や異世界からの流入と侵略が顕著になり、ムヘンブルグは侵略阻止の最前線になった。

 

 一時はムヘンの放棄まで考えられたが、トール元帥の活躍によって小康状態を得て今に至る。

 オーディンの聖府は、ムヘンの南半分を流刑地に指定し、囚人たちに辺境の防衛にあたらせ、流刑と辺境防衛を実現させ、経費の節減と防衛の問題を解決しようとした。

 囚人たちは防衛に功績があれば刑期を減免されたが、その多くは放免を前に命を落とした。

 囚人たちは「ムヘンだけは勘弁してくれ」と哀願するようになり、王国全体の犯罪発生率は半分以下になったと言われる。

 
 シュタインドルフに着くまでの道中は、菱餅の真ん中を西端に向かって進むので北端のノルデンハーフェンに達する距離の倍はある。しばらくは平穏だとグリ(タングリス)が言うので、単調なムヘン大河南岸の道中『ムヘン略記』を読んでいるわけだ。

 略記とは言え見知らぬ異世界の歴史書だ、五分も読めば眠気を誘うかと思ったが、存外に面白い。出てくる地名や古戦場、人の営みや神々の履歴が生き生きと頭に浮かぶのだ。なんだかパソコンの中に古いファイルを見つけ、開いてみたら自分が書いたRPGのプロットであったような懐かしさ――そうだ、こんな物語に時めいていた――と古い教科書の落書きを見ているような。でも、あまりに古い思い出なので先の展開が読めないもどかしさと楽しさがあった。

 わたしはこんなものを書いていたのか? わたしが? まさかな、いまは勇者などと名乗るもおこがましい駆け出しの冒険者だ、肩の力を抜いていこう。緊張しっぱなしでは、この先の旅には耐えられないだろう。今は穏やかだが『ムヘン略記』にある通り、トール元帥でも一筋縄ではいかなかった流刑地なのだからな。

 しかし、その流刑地ムヘンに流されるんだから、ブリも生半可な奴じゃない。略記は面白く読めたが、それでもブリのことは記されていないし、ブリが元帥に詰め寄っていた元帥とオーディンの確執については一文字も記されてはいない……。

 

 略記を閉じ、キューポラから半ば乗り出した体を後ろに巡らす。

 

 二号戦車のエンジンルームの上にドンゴロスを二重に敷き詰め、ケイトといっしょに眠っている姿は、どう見ても小柄な女子中学生だ。

 こいつ、いったい何をしでかして最悪の地に流刑になったんだ?

 だいいち、並の身分ではない。

 今は「ュンヒルデ」を封印して、ただの「ブリ」と名乗っているが、仮にも主神オーディンの娘だ。

「その秘密は、いずれお話します」

 キューポラから半身を出して前方を警戒しているタングリスが穏やかに言う。

 タングリスは相棒のタングニョ-ストと共に元帥の副官を務めながらブリの監督兼世話係であるようだ。キリリとしたツンデレ系美少女の軍人なのだが、まだデレたところを見たことが無い。ひょっとしたら、ブリや元帥以上の秘密……もし、これが自分の作品なら……ん? まただ。なんで、この旅を作品などと思うんだ? 時々、そういうことを思うんだが、思ったとたんに頭に霞がかかる。

「聞きたいような聞きたくないような……ま、グリが必要だと思ったら話してくれ」

「では、まずはシリンダーの来歴についてお話ししましょう」

 そう言えば『ムヘン略記』を映していたタブレットの右下に「間もなくシリンダー警戒地区」というアラームが点灯し始めている。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •    

 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

2023-03-20 10:13:16 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

013『よど号と須之内写真館』   

 

 

 寿川の柵の工事は予想に反して三日もかかって、三月も末日の31日。

 

 リアルの橋は工事中でも渡れるけど、わたしのは1970年に渡るための戻り橋。ガチガチに工事用フェンスで囲われては渡れません。

 今日もダメだったら、令和の世界で白黒の証明写真を撮り直しかと落ち込んでいたら、なんとか昨日の夕方には終わった。

 Mの標べも無事に再発見して戻り橋を渡る。

 自動でない改札やガックン電車にも慣れて、昭和の宮之森駅が見えてくる。

 あれ?

 軽く驚く。

 令和では八分咲きだった桜が、まだチラホラの二分咲きでしかない。

 乗った駅はすでに昭和の奥宮駅だったんだけど、写真のこととか気になって桜には気付かなかった。

 令和とは桜の種類が違うとか?

 スマホを出して調べてみる。

 わたしのスマホは魔法少女用のスマホでタイムリープしても使えるというスグレモノ。それに、昭和の人には手鏡にしか見えないから短時間なら怪しまれることも無い。

 で、分かった。令和と昭和では開花時期が違うんだ。原因は温暖化らしい。

 三月のこの時期は三寒四温。数回通っただけではピンとこないよ。

 あいかわらず、軍艦マーチマックスのパチンコ屋の前を通過。

 あれ?

 チラリと見えた店内は微妙にお客さんが少ない。

 商店街に入ると電機屋さんの前に人垣ができている。近寄って見ると、みんなで展示品のテレビを見ている。

 ……なんで? 

 1970は、もうカラーテレビとかも出ていて、そう珍しくも無いのに。

 うわあ、ちっこい。

 隙間から見えたテレビはカラーだけども図体は大きいだけで画面は20インチあるかどうか。画質もメチャクチャ悪くて色が滲んでるし。

 カキーーン  ウワアアア!

 三代並んでる端っこのテレビから打球の音と歓声。

 あ、そうか高校野球。春だからセンバツとかいうやつ?

 わたしでも分かるホームランで甲子園は沸き返っている。

 平和で目出度い春の風物詩……の割には、人垣は静かだ……っていうか、みんなは横の二台のテレビにくぎ付け。

 二台のテレビは、なんだか、どこかの空港を映していて古いデザインの日本航空のジェット機が映ってる。

「ああ、飛び立った!」

 ひとりのオッサンが声を出し、みんな一歩前に進んで画面に食いついている。

 飛び立ったって、ふつう飛ぶもんでしょ飛行機って。

『たった今、よど号は、管制塔の許可も指示も受けないまま飛び立って行ってしまいました!』

 え?

『乗客の人質23人は開放されましたが、乗員6人を乗せたまま9人の犯人はよど号を発進させました!』

 ええ、これってハイジャックじゃん(☉∆☉)!

『犯人は拳銃や刀などで武装しており、福岡県警も滑走路に故障と称した自衛隊機を並べるなどして、離陸を阻もうとしましたが……』

 なんちゅう間抜け! 飛行機に拳銃とか刀持ち込めるなんて、信じられないんですけど!

 今どき、銃とか刃物とかじゃなくても、液体のものでも持ち込めないよ。

 なんか、昭和ってユルユル過ぎるし……。

 

 おっと、写真写真。

 

 写真屋さんに入ると、先日とは違って愛想の言い女の人が相手をしてくれる。店主のおじさんは、奥まったところでテレビを見ている。やっぱテレビでよど号観てる様子。

「時司巡さんですね……はい、どうぞ」

 ちゃんとホルダーから出して確認させてくれる。

「わあ、すごい!」

 白黒の小さな写真だけど、すごく丁寧に撮られてる。

 光の加減とか、とてもグッドで、ネットとかでよく出てる『昔の美人の写真』とかであるじゃん、あんなシットリ系の美人に写ってる。

「なんか、証明写真に使うのがもったいないですねぇ(^▽^)」

「学校で使うのは三枚だから、一枚は手元に残ると思うわよ」

「え、あ、そうなんですか!?」

「それにネガは一年間は保存してるから、必要があれば一枚100円で焼き増ししますよ」

「え、あ、そうなんだ、ありがとうございます!」

「こちらこそ、これからもご贔屓に(^▽^)」

 感じのいいおねえさん。

 ニッコリ笑顔を交わして店を出る。

「そうか、須之内写真館って云うんだ」

 あらためて看板を見る。下見を含めて三回目、撮影の後は引換券とかも貰ってるのにろくに店の名前も見ていなかった。まあ、証明写真用のボックスとかはプリクラと同じだから、いちいち確認はしないけどね。

 こういうのをアナログの良さっていうんだろうね。

 電機屋さんの前は、さっきほどの人だかりは無い。

 スマホで『よど号』で検索。

 このあと、韓国の金浦空港……そうか、飛んでる間は変化が無いか。

 

 駅に着くと電車は出たばかりなので、ベンチに腰掛け、証明写真を一枚出してスマホで撮り直す。

 よしよし。

 アプリを操作して、色を付けてみる。

「おお!」

 アプリがいい! いや、写真屋さんの腕だろう、自撮りのカラー写真よりもうんといい。

 デジタルの補正が入ってるわけじゃないから、真正リアルの時司巡なんだよ!

 わたしって、美少女系のカテゴリーに入れても良くなくない?

 声には出さず己惚れて、ちょっと幸せな、明日からは四月の昼下がりでした。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田博子
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館
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RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

2023-03-20 06:14:39 | 時かける少女

RE・

43『え、マジか!?』テル  

 

 

 ああ、なんでも使ってくれ

 
 グリ(タングリス)が鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開ける軍曹。

「なんだこりゃ、お菓子屋でもやるつもりなのか?」

「…………(゚ロ゚;)Σ(゚ロ゚#)」

 焦るブリとケイトを尻目にタングリスは方頬に笑みを浮かべて、こう言った。

「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」

 戦争でいろんなものを見てきたのだろう、軍曹はしみじみとした横顔で続ける。

「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちだな」

「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」

「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」

「せっかくだ、キャンディーなら一袋進呈するよ」

「いや、孤児の取り分をいただくわけにはいかないだろう」

「乗員用のがある。ブリ伍長、ポケットのを軍曹に渡せ」

「え? あ、イエスマム('◇')ゞ」

 一瞬あっけにとられたが、素直に軍曹にくれてやる。

「じゃ、行ってくれ。停めてすまなかったな」

 軍曹たちはキャンディーを口に放り込み、我々は前進を再開した。

 

 ムヘンブルグの北には荒川ほどの川が流れていて流刑の島ムヘンを南北に分けている。川を渡って、そのまま北進すればノルデンハーフェンに至って船旅になる。

 砲塔の中に貼ってある地図を見て予想がついていた。ブァルハラへの道は、まだ振りだしを一コマ進んだだけだ。

 

 城塞の北方も必ずしも平穏ではないが、街道を走っている分には安全だろう。

 あれ?

 ところが、橋の手前で我々の二号は左に曲がったではないか。

「グリ、どこへ行くんだ?」

「軍曹にも言ったじゃないか、我々はシュタインドルフのヴァイゼンハオスに寄っていくんだ」

「え、マジか( ゚Д゚)!?」

 ブリが目を剥く。

 シュタインドルフは九十度方角が違う。道中の安全も保障されてはいない。

「方便とは言え、口にしたことです。向かわねばなりません」

「ぐぬぬ(>д<)」

 ュンヒルデを抜かれたブリは、けっこう面白い。

 
 そして、ハッチから垣間見える旅の空は行く末を暗示するかのように曇り始めてきた……。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •    

 

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せやさかい・395『湘南からの写真』

2023-03-19 16:10:16 | ノベル

・395

『湘南からの写真』さくら   

 

 

 朝に本堂であげるお線香の順番。

 ご本尊の阿弥陀さま ⇒ 聖徳太子ご尊像 ⇒ 歴代住職絵像

 いつもやったら、この三つなんですけど、昨日から一つ増えた。

 

 釋恋女(しゃくれんにょ)さんのお骨。

 

 釋が付くのは浄土真宗の法名です。他の宗派で言うところの戒名。

 法名は、お葬式で導師を務めた坊さんが付けます。

 釋恋女と付けたのはテイ兄ちゃん。

「恋の字使うのは、ちょっと艶めきすぎてへんかあ」

 おっちゃんは反対したんやけど、テイ兄ちゃんは押し切った。

「昴が『恋』の一字は入れてくれて言うしなあ、俺も『恋』は外されへんと思うんや」

 そない言うて仮位牌にけっこう上手な字で書いたんが六日前。

 そうなんです、この釋恋女さんは、俗名今井瑞穂。

 つまり、うちと留美ちゃんが毎朝自転車を預けてるスナック『はんぜい』の奥さん。

 奥さん言うても、うちらとあんまり変わらへん18歳。

 

 正月にお礼を兼ねて挨拶に行った(377『テイ兄ちゃんの偵察に付き合う』)。

 マスターの昴さんは、テイ兄ちゃんの大学の同期で歳は同じ30歳。

 結婚の知らせを受けた時、彼女いない歴=年齢の従兄の頬っぺたは引きつっとった!

 しかし、阿弥陀さんの啓示を受けたのか、ちょっと冷静になって友だちに聞きまくって事情を知って、その上に――自分の目で確かめる!――の信念で、うちを連れて偵察に及んだという次第。

 とにかくデレデレの新婚夫婦で、あれだけムカついとったテイ兄ちゃんが、わりと穏やかな顔でデレデレ新婚夫婦に付き合ってたんは不思議やった。

 学校が始まって、留美ちゃんとチラ見したお店の中では、十八とは思われんほどにテキパキ働いてた瑞穂さん。

 二人は、新婚生活が一年も続かへんことを承知で結婚したんや。

 昴さん、瑞穂さんのどっちが言い出したのかは分からへんけど、ほんまやったら何十年もあるはずやった二人の時間を四カ月で駆け抜けたんや。

 

「さくら、昴が写真送ってきよった」

 

 テイ兄ちゃんがタブレット持ってキッチンにやってきた。

 留美ちゃんと二人晩ご飯の下ごしらえしてた手を休めてリビングに行く。

「あ、やっぱり湘南の浜辺だ(^▽^)」

「ほんまや、よかったねえ、ええ天気で」

「ちゃんと瑞穂ちゃん抱っこしてからに……」

 湘南の浜辺、江ノ島をバックに砂浜に座ってる昴さんの膝の上に袱紗の袋に収まった小さな骨壺。

「二人で湘南の海辺を歩くのが夢や言うとったさかいなあ」

「このために分骨したんですか?」

「それもあるけどな、瑞穂ちゃんの家は山梨の甲府や。ご両親やら向こうの親類の事考えたら分骨するのが自然やろ」

「動画やったらよかったのに……」

「そうだね、この昴さんと瑞穂さん、波の音が似合うと思う」

「せやな……せやけど、これは昴の照れや、動画やったら、ちょっともたへんと思う」

「そうかもしれへんねえ」

「あいつも、三十のオッサンやねんで」

 他に、江ノ島のでの写真、江ノ電の踏切、鎌倉高校前のプラットホーム……なんや、アニメの聖地巡りみたいで微笑ましい。

 最後の一枚は小田急江ノ島の駅前。

―― これから瑞穂の実家に向かう ――

 短いコメントが入っていて、マスターの気持ちが伝わってきた。

 

 夕刊をとりに山門に向かう。

 境内から見上げる空は三日ぶりの晴天、せやけど湘南の空の方がもうちょっと青いような気がした。

 山門横のポストに夕刊は入ってへん。

 そうか、今日は日曜日やった(^_^;)。

 

 ニャ~~

 

 足元でダミアの一声「アホやなあ」いう感じに聞こえた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

2023-03-19 06:36:08 | 時かける少女

RE・

42『ゲペックカステン』テル  

 

 

  北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。

 
 城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。

 道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。

「なるほど、これなら目立たないな」

 そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。

「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」

「でも、こんな子供みたいなの連れていたんじゃ、いくら警備隊のコスを着ていてもダメだろう」

「珍しくはありません、ほら、前からやって来る部隊……」

 タングリスが示したペリスコープを覗くと、警備任務から帰還してくる二号の車列が見える。数えて五両の二号は乗員たちが車外に出て、砲塔に腰掛けたり、道具入れの上に腰掛けたりしてくつろいでいる。

 そのくつろいでいる兵士の半分は女性であったり少年少女であったりする。

「ここからは言葉を改めます。軍服を着ている手前、こちらが上官ですので」

「あ、ああ、もっともなことだね。やることがあったら、遠慮せずに命じてくれ」

「では、さっそく。外に出て手を振ってやれ」

 さっそく口調が変わって、ちょっとたじろぐ(^_^;)。

「「え、いいのか!?」」

 ブリとケイトは気にも留めずに声が弾む。タングリスがハッタリをかまして「人目についてはいけません」と言っていたので、北門を出るまでは二号の狭い車内で辛抱していた。その開放感の方が大きいようだ。

 タングリスの意地悪にはには訳がある。

 リュック二つ分のおやつを諦めきれないブリが、タングニョーストに取り上げられたお菓子を魔法で取り戻してゲペックカステンの中に潜ませているのだ。

 二号の履帯ガードの上には左右共に大きなゲペックカステンという道具入れが付いている。ゲペックカステンは飾りではなく、戦車のメンテに必要な器具や野営の道具などが入っていて、余計なものを入る余裕はない。

 そこに無理やりお菓子を詰め込んだもので、一部の道具は下ろしてしまった。それで、タングリスは意地悪を言ったのだ。

「プハー! やっぱ、外の空気はおいしいぞ!」

 砲塔に腰かけて伸びをするブリに、すれ違う二号の乗員たちが手を振る。

「任務ごくろうさま!」

「あんたら、これからか、ごくろうさん!」

 元気よくエールの交換。だれも、ブリがブリュンヒルデ姫だとは気づかない。やっぱ、トール元帥がュンヒルデを取ってしまった効果は大きいようだ。

 
 しばらく行くと、一両の二号戦車が路肩に停まっていた。

 
「すまん、ちょっとツールを貸してくれんか」

 腕まくりして油まみれになった車長の軍曹が声をかけてきた。

「ここにきてエンコかい?」

「ああ、だましだまし来たんだが、北門の目前でこれだ」

「レッカーを呼べばあ」

 ブリが、なにごとかを予感してアドバイス。

「それは最後の手段だ、レッカー呼んだら、報告とか始末書が大変だからな」

「……(#・∀・#)」

 
 ブリは汗が出てきた。メンテツールはあらかた下ろしてしまっている。

 ケペックカステンを開けてしまえば大量のおやつがバレてしまう!

 
 ヤ、ヤバイ……ブリの心の声が聞こえてくるようだった。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •    

 

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鳴かぬなら 信長転生記 113『なんでこうなるんだ?』

2023-03-18 14:19:27 | ノベル2

ら 信長転生記

113『なんでこうなるんだ?信長 

 

 

 ヒヒーーーン!!

 

 なに奴!?

 

 俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。

 カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。

 はてさて、どうやっていなしてやろうか。

 すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。

 

「や! やややや! 大三島の鶴姫ではないか!」

 

 え? あ!?

 そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。

 鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。

 それに、うかつに飛び出したが、こいつの後ろには三千の軍勢。やっつけるのは、ちょっと厄介。

 それに、間近で見ると天照が言うほどの悪党ではない。

 探ってからでも遅くはあるまい。

「鶴姫と呼ばれて覚えはないが、この迂闊な軍勢、放ってはおけん」

「え、あ…………迂闊かなあ?」

 桃太郎が首を後ろに回すと、三千の家来共も『え、そうなのか?』と互いに顔を見交わす。

「ああ、隘路(隠れた狭い道)を選んで密かに進軍しているつもりだろうが、おびただしい砂煙を上げて正体バレバレだぞ。それに、大将が先頭に居てどうする。今のわたしのように襲い掛かられては、軍勢の後ろが気づく前に討ち取られてしまうぞ。大将たる者は中軍でどっしり構えているものだ」

「ダメなのか? 先頭の方がカッコよくね? いや、カッコよさって、すごく士気に影響するもんだしね。オレって小柄だからさ、先頭で旗振ってなきゃ目立たないっしょ(^_^;)」

「いや、そうじゃなくてだな……」

「うん?」

「だから」

「いや、鶴ちゃんの、そういうとこいいなあ( ´艸`)。越智安成が惚れたのよく分かるわあ……いや、ごめん。人の彼女をそんな目で見ちゃいけないよね、メ!」

 パチン

 ワハハハハハハ

 桃太郎が自分のオデコを叩くと、三千の軍勢がいっせいに笑う。こいつ、意外と人たらしか?

「いや、こうなったら実践あるのみ。わたしが軍師を務めてやるから、下知に従え」

「望むところだ!」

 おお!!

「じゃあ、鶴ちゃん先頭を走ってよ、僕は中軍とかにいるからさ。声かけてくれたら、いつでも先頭に並んで、いっしょに戦うからさ」

「いや、それはいい。まずは、あの森の中に入って姿を消すぞ」

「ええ、そうなの? ま、いいや、みんなあの森の中に進んでえ!」

「音を立てるな! 砂煙をあげるな!」

 

 五分ほどで軍勢を森に隠し、馬の口には枚(バイ)を噛ませ、具足の草摺は紐で縛らせた。

 

「偵察隊を出す、臆病な兵を十人呼んでくれ」

「臆病なやつ? 勇敢なやつじゃなくて?」

「ああ、勇敢な奴は深入りしすぎる。発見されて、かえってこちらの居所を知られてしまう。程よい距離から、おおよその敵の場所、規模と配置が分かればいい。二人一組として五組放ち、共通の兆候が見えれば、それが敵の姿だ」

「分かった。じゃあ、雉、適当なの十人選んで偵察に行かせて」

「ケーーーン」

「それから部隊編成だ。おまえの部隊はバラバラ過ぎる」

「ええ、そう? 行軍練習はけっこうやったんだよ。ここまで走って来て、軍列は伸びてないし脱落者もいないし」

「いや、そういうことではなくてな。軍というのは装備ごとにまとめなきゃダメだ。先頭は鉄砲、二番が弓隊、三番が槍隊、そして騎兵と歩兵だ。鉄砲と弓は一撃を加えたら後ろに回し、状況の変化に応じて必要なところに手当てする。その采配を振るうのが大将の役割だ」

「そうなのか! なんか、話聞いてるだけで強くなったような気がするよ(^▽^)」

「じゃあ、さっさとやってくれ。並べ変えたら、組頭以上を集めて徹底しろ」

「よし、猿と犬で全部隊に下知しろ」

「ウキキ」「ワンワン」

 森の中で、静かに確実に編成替えが行われる。やればできる部隊だ。

 

 しかし、なんでこうなるんだ?

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神

 

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RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

2023-03-18 07:56:49 | 時かける少女

RE・

41『二号戦車』テル  

 

 

 冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。

 
 ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンあるかどうかの軽戦車だ。

 呆気に取られて、気づくのに数秒を要したけど、それは二号F型だ。

 ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。

 大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。

 
 カチャ

 
 キューポラのハッチを開けて出てきたのは別行動をとっていたタングニョーストだ。

「二号でいくのか?」

「ああ、操縦はタングリスがやってくれ」

「やっぱり、ここを出ると顔が指すんだな」

「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、街道にはいろんな者がいるからな」

「二号では心もとなくはないか?」

「二号は偵察や警備用にたくさん使われているからな」

「そうか、そうだな。紛れるのには良いか……」

 タングニョ-ストとタングリスの会話で、ムヘンそのものを出るまでは気が抜けないことが分かる。

「いいんじゃないか。二号は三人乗りだが、ブリとケイトは小柄だから、なんとかなるだろ」

 助け舟を出すと、二人とも穏やかに頷く。

「国境警備仕様の四人乗りです、ムヘンポートまでだから、ご辛抱を」

 わたしに向かって敬礼すると、戦車の鍵をグリに渡し、回れ右……したところへ、買い出しの二人が帰って来た。

「おう、タングニョースト、見送りに来てくれたのか!」

「ちっこい戦車! キュークツそう!」

 リュックいっぱいの戦利品を揺すりあげて胸を張るブリとケイト。

 どう見ても、これから遠足に出かける小学生のノリだ。

「あいにくですが、乗るのはわたしたちです」

「え……冗談だよな?」

「冗談なのは、二人のリュックだ。おやつは三百円までって言っただろうが」

「三百円以内だ! みんなタダでいいって言うんだけど、ちゃんと三百円は渡してきたぞ。ケイトの分は建て替えてっから、あとでくれ」

「それは、後ほどの補給でわたしが持って参りましょう、安心してお預けください」

「「それってオアズケだあ!!」」

「文句言うな」

 しぶしぶリュックを差し出す二人。ポケットに忍ばせた分は大目に見てやる。

「あ……っと、そのツインテール、狭い車内では危険ですね」

「あ、そっか。なら、解いて短くしてもいいぞ」

「解くのは事を成し遂げてからです。わたしが、なんとかしましょう」

 タングニョ-ストは、あっという間にブリのツインテールを五センチほどのお下げにまとめてしまった。

 
 プータレる二人をタングリスと二人で摘まみ上げるようにして二号の中に放り込む。

 
 ブルン……ブルルルルルル

 
 ブリが手際よくイグニッションを入れ、二号は本営の外を半周して城塞の北門を目指した。

 ガタンゴトン

 北門の段差を超える時、ゲペックカステン(物入れ)の蓋が一瞬開き、タングリスに渡したはずのお菓子が入っているのが目に入った。

「シーー(;¬b¬)」

 やれやれ……どうやらブリの魔法で取り戻したようだ。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •    

 

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銀河太平記・151『西之島への迎え』

2023-03-17 12:45:22 | 小説4

・151

『西之島への迎え』越萌マイ 

 

 

 貴様が来てくれたのか!?

 

 無人のはずのオートパルス車のドアが開いたことにも驚いたが、そこから出てきたドライバーに驚いた。

「元帥閣下の一大事、駆けつけるのは自分の職分であります」

 さすがに軍人丸出しの敬礼は控えて、それでも国防軍礼式通りの気を付けで応えてくれる。

「貴様の事だ、抜かりは無いだろうが、仔細は車の中にしよう」

 脊髄反射で、こちらも越萌マリの口調が陸軍元帥に戻ってしまう。

「はい、ではご乗車ください」

「うむ」

 

 パルス車は、他の観光用や個人のパルス車、それに伝統的なヨットたちが出入りするのに紛れて江ノ島ヨットハーバーを出発した。

 

「まだ現役なのか?」

「心意気です」

 車に乗ってハンベをオンにすると、表示された運転手のIDは現役の陸軍准尉になっていた。

「政府の西之島への対応に抗議して、予備役が現役宣言をするのが流行っています。記念館の管理人としては自然なことです」

「そうか……」

 わたしが越萌マイとして動くときに元帥としての児玉隆三は死んだことにしてある。

 元々、満州戦争でのPI(パーフェクトインストール)自体が無謀なことでJQに移植されたソウルは長持ちしないだろうと言われていた。死亡を装うのには都合が良かった。

 俺が棲んでいた朝霞駐屯地の宿舎は児玉記念館に改修され、運転席でハンドルを握っているヨイチが管理人を務めている。

「懐かしいです、興隆鎮から部隊ぐるみ出撃して決戦場に向かった時のことを思い出します」

「そうだな、敵の旅団長は当時少将の劉宏だった。奴の指揮も見事、辛うじて勝てたが部隊は壊滅、俺も戦死してしまった」

「しかし、捨て身のPIが成功しました。最後の勝負は閣下の勝ちであります」

「今回、劉宏は大統領の立場だ、軽々とは動けない」

 ピコピコ ピコピコ

 車の搭載ハンベが緊急ニュースを流し始めた。

『漢明国政府の緊急発表です。劉宏大統領は議会において、西之島に出撃している漢明軍部隊の全てを反乱軍であると宣言し、議会も賛成多数で大統領宣言を承認しました、反乱軍が所属している地方政府は反発し漢明国からの独立も辞さない構えで……』

「どういうことでしょう?」

「続きがあるようだ……」

『なお、西之島の氷室睦仁氏から発せられた綸旨と称する救援要請に呼応して、西之島にはボランティアの人たちが西之島に向かっております。政府は凶器準備集合罪にあたる可能性もあると自粛を呼びかけておりますが、海外から、これに応える人たちも多く、政府は苦慮している模様であります……』

「俺も、その一人だがな」

「劉宏大統領はどうするつもりなんでしょう、このままでは島の漢明軍はジリ貧になります。反乱軍認定されては補給が停まり、増援も途絶えてしまうでしょう。なにより、急速に士気が低下して、総崩れになる可能性が高くなります」

「そうだな、そして、世界は自軍を反乱軍扱いしてでも平和を目指そうとする劉宏大統領を賞賛するだろう」

『これを受けて、岩田総理は各方面との協議を密にして対応を探っていると言われ……』

「この期に及んで……」

 さすがに、後の言葉は呑み込んだ。

 さて、西之島に着いたらどう動くか……劉宏大統領の決定には、まだまだ裏があるはずだ……

 そろそろ江ノ島のクルージングコースから離れる……思った瞬間、パルス車は前を進むクルーズ船のウェーキ(航跡の波)に紛れて潜航した。

 二十余年の歳月を経ても、ヨイチとは阿吽の呼吸だ。

 ガチャリ

 一応、両手両足に仕込んだ各種ウェポンの点検をしておく。

 

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  •  

 

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RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

2023-03-17 07:06:15 | 時かける少女

RE・

40『噴水の縁に腰掛ける』  

 

 

 あれだけ寄って来た子どもたちが見向きもしない。

 無辺街道で出くわしてから、ずっと『ブリ』と呼んでいるが、それは、ただの短縮形、あるいは愛称だ。

 正しくはブリュンヒルデで、厳密にはブリュンヒルデ姫。呼びかける時は『殿下』あるいは『ユアハイネス』を付けなければならない。

 囚われの身であることを考慮しても、最低『様』は付けなければならないだろう。

 トール元帥が『ュンヒルデ』を取ったのは、ヴァルハラに着くまでの心得くらいに思っていたのだが、本営を出てからのムヘンブルグの人たちは一向に関心を示さない。

「たいした力なのだなあ、トール元帥は」

「これなら、ブァルハラに着くまで誰にも気づかれないかもね。元帥はおっかなかったけど、ちゃんとブリのこと思ってくれてるんだね( ´∀` )」

 ケイトは、早くも目的を果たしたかのように気楽になっている。

「ムヘンブルグの先は分からない」

 タングリスは、おだやかに言うが、ずっとポーカーフェイスだ。

 で、肝心のブリは、なにやらキョロキョロ。揺れているツインテールがまでが触覚かレーダーアンテナになって探っているように見えてくる。

「ちょっと買い物をしてくるぞ」

「買い物?」

「勇者の旅立ちには必要なものがあるのだ」

「あまり荷物にならないように願います」

「分かっておるわ」

 タングリスの忠告をテキトーに聞いてバザールの方へ駆けていくブリ。まるで、これから遠足にいく小学生のようだ。

「テル、わたしも行きたい!」

「いいけど、お金持ってないだろが」

「勇者の旅立ちへの喜捨は功徳があるとされています。弓はもって行ってください、ケイトが勇者である証ですから」

「うん、分かった! おーい、ブリ! わたしも行くぞーーー!」

「二人とも、おやつは300円までなあーー」

 

 半ば冗談のような注意をして、わたしとタングリスは、バザール手前の広場で待つことにした。

 

 広場は、心持ち周囲よりも小高くなっていて、バザールやら居住区が小間物屋さんの陳列棚のように見える。

 折しも、秋の日差しが傾き、穏やかなオレンジ色に陳列棚を染め始めている。

「しっかり味わってください。こんな、世界の平和が約束されたような穏やかさは、当分は味わえませんからね」

「ああ、そうさせてもらうよ……」

 思えば、始まりの草原に立って以来、ブリのテントでまどろんだ以外は、緊張の連続だった。

 二人で噴水の縁に腰掛けると、噴水の水音とバザールのさんざめきにうつらうつらしてくる。

 
 キャラキャラキャラ……

 
 居住区に隣接する警備隊屯所の方角から、石畳をこすりながら近づいてくる音につかの間の微睡みが霧消してしまった。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
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