ヴェーバーの社会科学に対する基本的姿勢は、純粋客観主義の否定でした。
社会科学が人間に係るものである以上、また、人間の営みである歴史に存するものである以上、そういった対象・環境の制約を受けることを前提とすべきという立場です。
(p3より引用) しばしば誤解されてきたことですが、ヴェーバーの言う「価値自由」とは、社会科学にたずさわる人間は一切の価値判断にとらわれてはならず、ただひたすら客観的事実を追求すべきだ、といったものではまったくありません。そのような純粋客観主義は、むしろヴェーバーが排撃してやまないものでした。彼が論じたのは、社会科学のいかなる命題も、根本的には何らかの価値判断を前提とせざるを得ないということ、そしてこの点をはっきり自覚している必要があるということでした。純粋に客観的な立場などというものは、およそ歴史や文化をその研究対象のうちに含む社会科学においては存在しない。というのも、社会科学の営み自身が、特定の歴史的状況の内部におかれているからであり、特定の文化的時代環境の要請に対応するものだからである。
この考え方は、同一の対象を扱っても、その価値判断基準が異なれば、そこから導き出される結果が異なるということを容認するものです。
そういう学問の不確実性を正面から受け止めて学究に取り組むことをヴェーバーは求めています。
このあたりの姿勢は、ヴェーバーの講演「職業としての学問」にも現れています。