この本で紹介されている数々のマキアヴェッリの言葉は、現代のビジネス書に見られるアドバイスに通じるところがあります。
たとえば、「成功体験が、時代の変化への対応を鈍らせる」という点については、以下の一節があります。
(p121より引用) 時代の流れを察知し、それに合うよう脱皮できる能力をもつ人間は、きわめてまれな存在であるのも事実だ。
その理由は、次の二つにあると思う。
第一は、人は、生来の性格に逆らうようなことは、なかなかできないものである、という理由。
第二は、それまでずっとあるやり方で上手くいってきた人に、それとはちがうやり方がこれからは適策だと納得させるのは、至難の業であるという理由。
こうして、時代はどんどん移り変っていくのに、人間のやり方は以前と同じ、という結果になるのである。〔政略論〕
また、「優柔不断」については、こんな感じです。
(p172より引用) 弱体な国家は、常に優柔不断である。
そして決断に手間どることは、これまた常に有害である。・・・
決断力に欠ける人々が、いかにまじめに協議しようとも、そこから出てくる結論は、常にあいまいで、それゆえ常に役立たないものである。
また、優柔不断さに劣らず、長時間の討議の末の遅すぎる結論も、同じく有害であることに変りない。〔政略論〕
どこかの会社でも見られる「会議風景」を思い出させます。
さらに、よく言われる「リスクの前兆を捉えた先取りアクション」については、むしろ、以下のような現実的対応を薦めています。
(p99より引用) 危険というものは、それがいまだ芽であるうちに正確に実体を把握することは、言うはやさしいが、行うとなると大変にむずかしいということである。
それゆえはじめのうちは、あわてて対策に走るよりもじっくりと時間かせぎをするほうをすすめたい。
なぜなら、時間かせぎをしているうちに、もしかしたら自然に消滅するかもしれないし、でなければ少なくとも、危険の増大をずっと後に引きのばすことは、可能かもしれないからである。〔政略論〕
しかし、そういった選択肢をとる場合の「大事な条件」もきちんと指摘しています。
リーダーたるものの役割です。漫然として見過ごすのではありません。すわという時すぐに動くための気構えは欠かせません。
(p99より引用) いずれの場合でも、君主ははっきりと眼を見開いている必要がある。
情勢分析を誤ってはならないし、対策の選択を誤ることも許されないし、対策実施のときも誤ってはならないのだ。〔政略論〕
最後に、これもビジネス書に付き物の「チャレンジのすすめ」です。
(p231より引用) きみには、次のことしか言えない。
ボッカッチョが『デカメロン』の中で言っているように、
「やった後で後悔するほうが、やらないことで後悔するよりもずっとましだ」
という一句だ。〔手紙〕
マキアヴェッリ語録 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:1988-07 |