読書案内「暴雪圏」佐々木譲著 新潮文庫2011年刊
冬型の季節配置が強まる。東北の日本海側と北陸は雪や吹雪。東北の太平洋側と関東甲信は晴れ。各地で真冬の寒さ。北海道では大荒れ。今日夕方にかけて暴風雪ピークになり、観測史上1位の風速にも。2016.03.01付朝日新聞による。
このような天気予報を読むと、佐々木譲の小説「暴雪圏」を思い出します。この読書案内は2014年12月21付ブログで紹介済みですが、その気性の激しさを感じていただくには、とても良い小説だと思いここに転載します。また、数年前に起きた、北海道での猛吹雪で100㍍さきの知人の家の所在が猛吹雪のために確認できず、父と幼い女の子の凍死した痛ましい事故なども思い出します。凍死した幼子には、父のジャンパーがかけてあったと当時のニュースは伝えます。父として娘にしてやれる最後でたった一つの愛情だつたのでしょう。心が痛みます。
それでは、小説「暴雪圏」の案内に入ります。
冒頭から読者を捉えて離さない。
季節外れの風と雪が北海道東部の釧路地方の寒村を襲う。
三月彼岸の頃に襲来する嵐は、『厳寒期とは違い、湿った重い雪が大地に吹き荒れる』。
幹線道路の交通は完全にマヒし、途絶してしまう。
北海道東部・釧路方面志茂別(しもべつ)駐在所の駐在員川久保篤は一本の電話を受ける。
「赤っぽい上着が、雪の下から出ている」。
住民からの通報である。
事故か事件か、雪と風が強くなる中、
吹きだまりの深い雪の中を現場に到着した川久保が目にしたものは、
一部白骨化した女の変死体。事件の始まりだった。
組長の家に強盗に入り、組長夫人を射殺し逃亡する二人の男、
会社の金庫から2000万円を奪い逃走する会社員、
義父の魔手から逃げてきた少女美幸、不倫関係を清算するために家をとびだした明美。
刻々と激しさを増す雪と風、湿った雪が凍りつき、道路は白い闇の中で封鎖される。
それぞれが抱えた心の闇は深く、
一刻も早くこの町をぬけだしたいと思うが、
これを阻止するように猛吹雪がこの町を呑みこんでいき、
吹きだまりに寄せ集められるように、
町外れの小さなペンションに吸い寄せられていく。
錯綜する情報の中、本庁からの応援は来ない、
孤立無援の駐在の警察官・川久保篤は暴雪・暴風の中をどのように事件と向き合い、
警察官としての使命を果たすのか……
暴雪・暴風の描写が臨場感にあふれ一気に小説の世界にとらわれてしまう。
警察官・川久保篤の孤独と責任感に共感し、ノンストップで読ませてしまう。
刑事ではなく、警察官の視点で描かれるところに、一味違う警察小説になっている。
駐在警官・川久保篤シリーズの第二作目にあたり、前作は「制服警官」。
他に「警官の血」(親子三代にわたる警官がテーマ)などもお薦めの作品。
私の好みとしてはいずれの作品も少し内容が暗いところが難点です。
(2014.12.21ブログ転載)